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005 幽霊屋敷

「影飢ぃーえいきぃー。どこぉー……。どこ行ったのよう……」


 獅子架は泣きそうになりながら夜の屋敷をさまよっていた。

 幽霊退治に訪れたまでは良かったが、途中で相方の影人形とはぐれてしまう。迂闊だった。冷静に戦う影人形の青年とは対照的に、獅子架は少し冷静じゃなかった。


「うぅ。ひぐぅ……」


 涙目の少女は恐る恐る扉を開けて部屋を観察する。

 ――少しどころではなく、凄く冷静じゃなかった。

 ゆえに、スプラッタな肉々しい腐敗風男(幽霊)に襲われたとき、一心不乱に走り出してしまった。走り出すというか逃げ出してしまった。結果、相方とはぐれた。


「ああぁあ……」


 なぜどうして。そんな後悔はすべて手遅れで。

 迷路と化した屋敷は普通の構造を持っていない。迷うのは簡単だった。ここは異界。普通の屋敷に見えて、幽霊の巣窟である異質な空間だ。獅子架の持っているマッピングアプリも機能しない。影飢の位置情報やバイタルデータもノイズで把握できない。

 獅子架のなかで暗い不安だけが積もり重なっていく。


「…………――」


 ぐちゃぐちゃに配置された家具類で死角が多い室内を歩む。もう絶対だめだと思いながらも進む。途中、それは来た。

 ゆらりとぬらりと動く影。白剣で照らす明かりの前に、蛙風の血管男が現れた。


「ああああああああああああああああああ」


 叫んだ。

 迫るのは浮き出る赤と青の血管男。

 獅子架は全力で迎撃する。白光をもって粉々に打ち倒す。


「はぁ……、はぁ……」


 敵は弱い。それは解っていた。

 だけれど、それは少女にとって気休めにもならない。


「もうやらぁ……」


 今度は背後でガタリと物音。身をすくませた獅子架は振り返り、なにもないことを確認する。だが広がるのは死角の山だ。暗いし家具だらけだし見えない部分が多すぎて。そのどこに幽霊が潜んでいるかも判らない。

 いないわけがないという事実は、逆に確定してやってくる恐怖ということで心構えはできる。だけれどそれは、いつ落ち始めるかわからないジェットコースターに乗っているのに等しくて。


「……っ。うぁぅ……っ」


 結局、相方と出会えるまでの四十三分間。獅子架は二十四の幽霊を倒し、四十六度の絶叫を繰り返すことになった。

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