表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/21

004 影絵

 白剣を振るって影絵の怪異を消し飛ばす少女がいた。

 小柄で華奢で。明らかに幼い造形。半人半獣の白毛は白獅子の風情。

 剣術というよりは舞いのような動作で白剣を扱い、怪異を切り刻む。


「――――!」


 白く踊る髪。振り向きざまに背後の怪異を両断した。

 四足獣の影絵が平原に転がり散る。


「じゅうさん! あと七匹で終わりだよねっ?」

『その通りだ。獅子架! 早く帰ってお茶にしようぜっ』

「おうおうー」


 確認しながら少女はさらなる怪異を迎え撃つ。白剣から燐子の刃を飛ばし、標的を切り裂いた。

 周囲に広がる平原には獅子架と怪異しか存在しない。

 中天をすぎた陽光が落ちるなか、別のポイントで相方は戦っている。その位置情報やバイタルデータを視界情報から拾い、なにも問題が起きていないことを随時把握。分散している怪異を撃破しながら、通信を利用して言葉を交わす。


『残り三だな。そっちに追い込んだから、あとは任せた』

「あいあいー」


 平原の大地すれすれを機械翼で飛びながら、獅子架は移動した。

 標的を補足。

 右手の白剣を握る手に力がこもる。

 突き出すような一撃。――閃光が槍のように貫き飛んだ。

 散り舞う影絵を横目に、獅子架は左手に広がった森に目を向ける。

 青の瞳に映るのは、森と平原の境目。そこに散る二体の怪異。

 獅子架は機械翼を操り、低空ながら立体機動で怪異に迫っていく。

 軌跡を後追いする怪異の射撃は当然かすりもしない。力量の差は明らかだった。


「これで――」


 一閃。


「――終わり!」


 返す刀でもう一度。

 瞬時に二体を斬り伏せて、勝利を宣言する少女。

 平原に吹く風は影の怪異を散らし、獅子架の白服も揺らす。


「さってとー」


 森の方角に黒い影がひとつ。それが敵ではないことを獅子架は知っている。

 そのまま合流した影人形の青年から声をかけられた。


「お疲れさん」

「影飢もねー。んふふー」

「うわ、気持ち悪いくらいご機嫌だな」

「だってこれでケーキ三昧だし? だし?」

「はいはい……」


 疲れた様子を見せた青年を気にとめず、獅子架は街へと引き返す。

 今日の仕事は終わりで、待っているのは大好きな食べ物。

 疲れを気にする暇もない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ