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INNOCENT STEAL -After HEAVEN-  作者: 豹牙
三章 対想の地下
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22 揺れ動く疑心

「この街の抹消を阻止するつもりですか!」


 入り口から帰ろうとした時、右側から憎らしい女の声が聞こえた。

まさか、ここにいるはずがない。

この場所にあいつがいるはずがない。


「一ヶ月以内に、この場所に来る。クロエ館長の予想は的中しましたね。この国に来てから毎日ここに来た甲斐がありました」


 横目で右側を見る。

目を疑う程の信じられない光景だった。


「シェイム」


 そこには制服姿のシェイムが真剣な表情で立っていた。


「やっぱりアンタはクロエの犬だったんだな」


 これでシェイムがクレアラッツに来た辻褄が会う。

彼女はクロエの犬だった。

考えるまでもない、とても簡単なことだった。


「違います! 私は館長に言われてここに来たわけじゃないんです!」


 シェイムは必死に否定する。

彼女の正体を確信した今、それは惨めでしかなかった。


「じゃあ何でこの街の場所を知ってるんだ。クロエの下僕だからだろ」

「それは」

「アンタは嘘をつくのが下手なんだな。クロエという金魚の糞だから仕方ないか」


 ここでシェイムを罵っても仕方ないことなのだが、今日一日あったこと全てにセヴィスは腹を立てていた。

それを全てシェイムにぶつけているようなものだった。


「それとも、アンタがクロエを」

「それは違います!」


 シェイムは嗄れた声で叫んで、自分の方に歩いてきた。


「何しに来た。偵察か? 俺を殺しに来たのか?」


 シェイムに警戒しながらセヴィスは言った。

シェイムの瞬発力は自分を凌ぐと聞いている。

少しでも隙を作ると危険だ。


「私は、館長の秘密を暴く為に」

「だからその下手な嘘は」

「私は嘘なんか」

「じゃあ早く本当のことを」

「私の目的には、セヴィスさんの協力が必要不可欠なんです!」


 言葉の遮り合いは、シェイムの大声で終わった。


「何で俺がアンタの目的に加担しないといけないんだ」

 と、セヴィスは言う。


その右腕にはワイヤーの切れた青いナイフが握られている。


「勿論ただでとは言いません。私もセヴィスさんに協力するつもりです。それでいいですか」

「生憎、俺は美術館の連中とは違ってクロエとアンタを敵だと思ってる」

「じゃあ言います。館長がこの街を滅ぼすのは、明日です」


 シェイムは至って普通の表情で言った。


「明日って」

「私たちが極秘任務を遂行する日です」


 つまり、クロエは自分たちがいない間にこの街を滅ぼすつもりなのだ。

セヴィスはシェイムの言葉を信じようか迷っているうちに、自然とナイフをしまっていた。


「クロエ館長は気づいていました。私以外に館長の秘密を暴こうとしている、館長にとっての敵は二人。セヴィスさんと、モルディオ先輩です」

「モルディオ?」


 モルディオといえば、自分を勝手にライバル視し、ウィンズに心酔している自称優等生だ。

学力と戦闘能力の総合成績は学園一位の、一応生徒会長。

偉そうで嫌味ばかり言っているにも関わらず、トーナメント前に気絶したあのモルディオだ。


「はい。モルディオ先輩は、私やセヴィスさんよりも先に気づいていました」


 ウィンズなら納得した。

だが、モルディオだとどうも納得できない。


「そして、館長が極秘任務で殺そうとしているのは、私の友達です」

「友達って悪魔か?」

「人間です。これでもまだ、私を疑いますか」


 本当のことを言うと、セヴィスはシェイムを疑っている。

しかし、それよりも強くクロエとナインを疑っている。

そのせいか、少しずつシェイムを信じようという気になっていた。


 だが、信じたくないという気持ちもある。

シェイムが人間的に嫌いだからだ。

それに、まだ気になることがある。


「この場所はどうやって知った」

 と、セヴィスは尋ねる。


「美術館や学園では、私たちの会話は全て筒抜けます。本来は防犯用の盗聴器を、館長は悪用しています。そして、館長は私を仲間だと思っています」


 シェイムは見当外れなことを言い出した。


「俺は今そんなことを聞いてるんじゃない」

「ここなら館長に聞こえないので、全部話します。館長は私を利用するためにこの街に呼びました」


 今シェイムの言っていることは、真実なのだろうか。

先程から違うことばかり言われたせいで、頭の中が混乱しそうだった。


「友達を人質にされて、私は断ることができませんでした」

「人質にされてるのに、俺に話していいのか?」

「館長は無線で友達を捕らえている悪魔と連絡を取っています。私がその無線を偽物とすり替えました。監禁場所だけあって、それ以外に連絡手段がないと館長が言っていました」


 クロエは案外鈍い、とセヴィスは思った。

同時に、何か裏があるのではないかと疑った。


「私は自分の力を悪用されるのは嫌だったので、館長の悪事を暴くと決めました。館長の味方のふりをするのは大変でしたが、おかげでたくさんのことを知ることができました」


 本当に彼女のことを信じていいのだろうか。

シェイムの話を聞きながら、セヴィスは迷っていた。


「館長は極秘任務で、お二人に悪魔を全員殺せと命令しましたよね。それは、私に足止めさせる為です。館長は言っていました。セヴィスさんはルキアビッツ抹消作戦に気づくと」

「アンタはそれを俺に話していいのか? もしそうならクロエも甘いな」

「いいえ、館長は工夫していました。一年生の戦闘訓練を利用して、私がセヴィスさんに接触しないようにしていたんです。ただ、追い出されたのは予想外だったらしくて、館長は館長室を離れました。当然その間は、館長は盗聴器を聞くことができません。だから私はその隙をついて、図書室に行きました。防犯カメラで居場所は分かっていたので」


 この話が本当なら、ハミルとの喧嘩は利用されたということだ。

歯がゆいような、これでよかったのか、よく分からない気分になった。

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