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Ⅱ・紅茶 → 儀式 → 花降り鳥

 わたしは給湯室へ行くと、リクさんがスリランカに住むご友人から送ってもらったらしい高級なセイロン茶の缶を取り出し、苺の実と葉、蔓が繊細に描かれたカップを温めた。


 ハウスメイドとして雇われた当初、リクさんに教わった順序に忠実に則って、紅茶を入れる。

 まるで粛々と古典芝居を演じるように。

 わたしは自分の為にこんなにも手間暇かけた茶は飲まない。飲む誰かが居るから淹れるのだ。


 温度計片手にお湯を沸かしている間、大理石の調理台に手をつき、はあ、と溜息を吐く。

 不安、安堵ではない。

 ただ身体に溜まったものを定期的に放出する、そういう溜息だ。

 そこには特別な感情は一切含まれていない。

 これはわたしにとって儀式、或いはもう癖となっているのかもしれなかった。


 しかし疲れていることには間違いない。 

 そして、その主な理由は、どう考えても、先週見てしまったある「悪夢」しか考えられない。

 

 わたしは温度計を鍋の中に突っ込みながら今度の新作について考えていた。

 担当の及川さんがそろそろ長編を書いてみては、と言っていたので、今、恐ろしく長い話を構想中なのである。


 花降り鳥について書こうと思いついたのは、カップとティーコゼーで覆ったティーポット、苺を模ったティースプーン、カカオ75%のチョコレートを数粒、銀色のカートに乗せて、東屋を目指し中庭の煉瓦道を歩いていたところだった。



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