懊悩
「……それじゃ、今日も行ってくるわ。いつも言ってるけど、ちゃんと暖かくしとくんだぞ」
「……うん、分かった。……あの、エリス……ううん、何でもない」
「……そうか。それじゃ」
それから、一ヶ月ほど経た宵の頃。
例のごとく、この時間に出ていくエリスを玄関にて見送る私。あれ以来――あの衝撃の光景を目にして以来、何ともぎこちなくなっているのは自分でも分かって。
ここ一ヶ月というもの、懊悩のあまりいてもたってもいられなくなり、申し訳ないとは思いつつも何度かエリスの跡をつけ……その度に、時々同じ、だいたいは違う女性の家へと入っていく光景を目にしていて。
「…………はぁ」
その後、ほどなく毛布へ顔を埋める。そこには、やっぱり優しく暖かなエリスの匂い。なのに、今はズキリと胸の痛み音がして。
……恋人? ……いや、だとしたら多くない? もちろん、エリスは大変モテるだろうしそういう意味では不思議ではないんだけど……でも、それはあくまで《《そういう意味》》での話。そんなに長いとは言えないまでも、ひとつ屋根の下で暮らしてきた仲――それなりに、彼の人柄は知ってるつもり。そして、人柄に照らし合わせてもやはり不可解。何より、仮にそうだとしたら私にそのことを言わないのはやはり彼の人柄からして有り得な――
「――――っ!!」
刹那、脳裏にビリっと走る。いや、まさかそんな……だけど――
さっと、辺りを見渡す。もうすっかり馴染みの部屋の中を。……ずっと、違和感はあった。気にしないようにはしてたけど、それでも――
――だけど、これなら説明がつく。正直、まだ信じられない……と言うか、信じたくない。どうか、違っててほしい。馬鹿な勘違いであってほしい。だけど、それでも…………ならば、私のすべきことは――




