失敗の朝
一枚の張り紙が、通りの空気を変えた。
信頼を取り戻すための、三日の猶予。
翌朝。
喫茶の入り口に、赤い紙が貼られていた。
「外からの予約で、常連が座れない」
川嶋の顔が曇る。
「やっぱりね、こうなると思ったのよ」
春木はすぐに理事会へ向かった。
「観光客が席を取る。常連が離れたらどうする」
怒りの声が飛ぶ。
春木は真っすぐ頭を下げた。
「対策をします。
通りの会員カードを持つ方の分を一定数確保します。
外部の予約は“受け取り限定”に変更します」
「そんな器用な真似、できるのか?」
「できます。仕組みよりも“気持ち”を守るためです」
静寂。
やがて河原が短く言った。
「三日だ。三日で結果を見せろ」
帰り道。
坂本が声をかける。
「お前、疲れてんぞ」
「大丈夫です。今、試されてるんです」
「町を変えるってのは、神経使う仕事だな」
「ええ。でも、“人を待たせない”ためには、時間がかかるんです」
雨の匂いが風に混じった。
春木は空を仰ぎ、目を細めた。
【作者より】
順調に見えた通りに、思わぬ波風。
それでも春木は立ち止まりません。
▶ 「もう一歩だけ(アミナ)」につづく




