祭りの本番
一年ぶりの商店街祭り。
春木たちは、かつての“行列”と正面から向き合う。
朝から提灯が吊られ、通りは久々に賑わっていた。
屋台の煙、子どもの笑い声、太鼓の音。
だが春木は緊張していた。
「予約、今日だけで三百件です」
アミナの声が震える。
「大丈夫。仕組みは支えてくれる。俺たちは流れを見守ろう」
川嶋の喫茶店も大忙しだ。
「アミナ、音が鳴ったら、順番に呼んで!」
「はい!」
ピー、ピロン、ピロン――。
通り中に柔らかな音が響き、客が流れるように動く。
坂本が笑う。
「行列が動いてる! でも誰も並んでない!」
午後、急な雨が降り出した。
それでも、誰も慌てない。
端末の光が小さな灯のように並び、屋台の中で笑い声が絶えなかった。
祭りが終わるころ、川嶋がコーヒーを差し出す。
「よくやったわね。……ほら、冷める前に」
春木は受け取り、静かに息をついた。
「やっと、“待たない町”が始まった気がします」
【作者より】
一年越しの祭り。
かつて“混雑”だった時間が、“笑顔”に変わりました。
▶「町の時間」につづく




