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『姫騎士』だけど性別♂です!  作者: 神月大和
第二章 ラスティアの街で

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本日2回目の投稿です!

 パーティー結成を終えたクリスは街の大路をゆく。

 頭の後ろで赤いリボンに結ばれた金髪がゆらゆらと揺れ、見目麗しく凛々しい女騎士の姿には道行く人々はハタと眼を奪われる。


 パーティー結成記念としてカーラは酒宴を開きたがったが、クリスはまだ宿も決めていないと言って頑なに固辞をした。それならあたしの部屋に来ればいい、オレの部屋にくればいい、と二人は言ってくれたが、わざわざ自分から虎穴に入るつもりはない。ましてやハクラの家と言えばハクビも棲む屋敷らしく  住むではない、まさしく棲むである――、虎児を得るどころか、この場合は狐児かも知れないが、喪うものしかありはしなかった。


 だからこそクリスは食事に留め、宿を探すために昼下りの街を歩いていた。

 ギルドでも聞き込みをし、そうして見つけた宿屋が、【ねこねこ亭】という、落ち着いた雰囲気の宿屋だった。


「いらっしゃいませ~、わぁ、綺麗なお姉さん……」


 扉を潜れば可愛らしい声。十歳程度であろうか、あどけない顔でポカンと猫目を丸くしていたのは、赤みがかったショートカットに同色の猫耳と猫尻尾が良く似合う、猫人族の少女であった。赤銅色の猫目をくりくりと回し、簡素なワンピースに包まれた躰は年相応。

 昨日今日と年頃の少女達の災禍に見舞われていたクリスはたいそう安堵した。


 ――この子なら大丈夫そうだな。


 それに、孤児院に暮らしていた際も、年下の少女達はクリスを玩具にすることも虐めることもなく、ただただ慕ってくれていた。だからこそクリスも彼女達を可愛がり、そしていたく手慣れていた。


「ふふ、ありがとうございます」


 麗しい顔で微笑めば、猫耳の生えた頭をよしよしと優しく撫でた。

 少女はぐるぐると咽喉を鳴らし、ぴよよよよ、と猫の尻尾が立ちはじめる。


「あ……」ますます可愛く思ってひとしきり撫で終えたクリスが手を離すと、彼女は寂しそうな声を上げた。申し訳なく思ったクリスはまた撫でた。クリスもまだ彼女に癒されていた。――尤も、必要以上に懐かれ、そのことで女難の相を持つクリスには新たな災難(騒動)が降りかかることにはなるのだが……。


「あら、良かったわね、リビー。でもそれくらいにしておいて、お姉ちゃんをこっちに案内してくれないかしら?」

「あっ、ママ、うん、お姉ちゃん、こっち」


 微笑ましく思うクリスが手を引かれれば、カウンターに案内された。

 そこにはリビーによく似た、二十代後半だろうか、赤みがかった髪を三つ編みにし、柔和な微笑みを浮かべる女性がいた。リビー同様に赤みがかった毛色の猫耳と猫尻尾が生えている。平民ながらも清潔感漂うブラウスとスカートに身を包み、クリスに対して丁寧な挨拶を述べてくれる。


「ようこそ宿屋【ねこねこ亭】へ。でも、本当に綺麗な人……その服装と言い、貴族様ではないですよね?」


 少しばかりの怖れを滲ませて――それはたいそう恐ろしいことなのだ。


「いいえ、ボクは平民ですよ、レディ」クリスはやんわりと言う。「この服装は、ボクの〈エルピス〉の力を高めるためにしているのであって、身分はなんとも。今日冒険者登録を済ませたばかりの、駆け出しです」

「そうなのですね……」


 肩を竦めたクリスに彼女は怪訝な顔をしたが――何せ見るからに質の良い衣装、貴族でなくとも裕福な少女には違いない――が、そこは宿屋の女将だ、それ以上は踏み込まない。

 それに空気を和ませてくれる者もいた。


「そうなんだ、お姉ちゃんは冒険者なんだ、すごーい」


 眼を輝かせるリビーの頭を、クリスは「あはは」と笑いつつ撫でる。ぐるぐると少女の咽喉が鳴り、母親である女将も口元をほころばせる。


 ――この子がこんなにも懐くなんて、悪い人ではなさそうね。


「私はケイトリン。リビーの母親で、この宿の女将をしています。主人はちょうど夕食の仕込みですね。お泊りでしたら受付けられますが、食堂のご利用ならば、もう少しお待ちいただければご用意できます」


 和やかに微笑むケイトリンに、是非ともクリスに泊まってもらいたそうなリビー。


 ――うん、この宿は良さそうだね。


 クリスはこの宿に宿泊することを決めたのであった。

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