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第1話:変身の夜
深夜、静まり返った自室。
何もないはずの空間で、突然、身体が震えた。
変身――。
何故、俺が…。どうして、俺が――。
いつの間に、こんな身体に…!
腕を上げると、指先が異様に長く、爪は鋭く光っていた。
皮膚の感触も、以前の自分とは違う――ひんやり、ざらつく。
いやっ、違う。俺が変わったんじゃない。
――されてしまったんだ。
耳に微かな低い唸り。背後に気配。
振り返ろうとするが、身体が勝手に反応する。
恐怖と高揚が入り混じる中、初めての敵――影が姿を現した。
「……来るのか?」
赤く光る瞳、ねじれた関節、牙のように光る口。
それは人間でも怪物でもない、未知の存在だった。
俺の身体は、異形の手足を自在に操り、爪先が空気を切る。
衝撃波が影を弾き、部屋中に轟音が響く。
だが、影はさらに形を変え、迫ってくる。
全身に漲る力――恐怖が力に変わる瞬間。
「――行くぞ!」
爪が閃光を放ち、影に直撃する。
赤い瞳が揺れ、影は一瞬、後退した。
しかし、安堵はできない。
あの異形は、まだ完全には消えていない――
そして、俺の戦いも、まだ始まったばかりだった。