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オオバケ!   作者: 羽兎
第三章〜急襲〜
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悪魔の研究の巻

深い、闇

────12年前……藤港某所、午前2時。


 光の届かないレンガ作りの地下。蛍光灯が強く照らす一室の机は、大量の丸薬と何かしらの器材で溢れかえっている。


「おい紫姫! お前ここの配合ミスったろ……」


 その薄暗い部屋には、3人……志喜屋、鷹星、鷲上が居座っている。


「……間違えたも何も、この薬は活性剤」


彼らが本部から受けた指令、『PW4計画』。本部から研究員として専属され、早1年と2ヶ月。研究開発は遂に、最終段階へと突入していた。


「……誰か、飲んでみる?」


 『試薬』と書かれた箱を指差しながら、志喜屋が言った。


「誰が飲もうか? 死ぬよ、あれ……」


 そう言いながら鷹星は箱を開け、部屋の奥隅へと向かった。


その先にあるのは、鉄格子で囲まれた『牢屋』。


「うぅ……もうやめてくれぇ……」


 中から聞こえて来るのは、何かに怯える男の声。その狭い檻の中には、痩せ果てた男、女、そして子供。10人程が収容されている。

 その肌に纏うのは、泥で塗れた布切れ……ただ一枚。牢屋の隅の方には、積み上げられた死体の山が鎮座している。


「はい、口を開けてね〜。あー……」


 鷹星の左手にある丸薬を目にし、男の口をこじ開けた。男は静かに首を振り、鷹星の手を払いのけた。


「よくできたね〜。お疲れ様」


 鷹星は男の喉元まで薬を運ばせると、笑みを浮かべながらその場を離れた。


───その、数秒後。


「……父……さん? やめて……!」


 一人の女が、子供を抱えながら悲鳴を上げた。

目の先にいるのは、鷹星が先程話した男。目の焦点が合わず、豹変している。


「……何? またなの……? 今度はあなたなの……!?」


 彼女が何かを言いかける前に、男の体が棘状に変化する。突如女は声を失った。


………直後、部屋中に鋭い音が鳴り渡る。暫くして、鉄格子の下から血が滲み出した。中からは赤子の泣く声が聞こえてきた……しかし、次第にそれも収まった。


「……これで15人目ね。"覚醒者"」


 檻の方に目を当てず、気にもしない様に志喜屋がそう唱える。


「犠牲者はその倍だけどね〜」


 『覚醒』から数分後、鷹星が確認しに行った檻の中では、巨体と化した男が丸く気絶していた。


「今回も……失敗作、か」


「えぇ……10分も持たない。そんなところ」


───自身に秘められる真影のチカラを、最大限に引き延ばす……当然エネルギーは燃え尽きる。シアンの予言まで後12年。


───来るべきその日までに、この問題を解決せねばならない。


 その実験台は、WCに真影の情報を与えた『ユダ』とその家族。


……後に『悪魔の研究』と称されるこの実験は、3人の心を大きく傷つける要因となるものであった。



───実験開始から400日。

 最終調整は困難を極めていた。しかしながら順調に事は進み、応用活性剤の完成で真の完成…………そのはずだった。


 

───実験開始から415日目。試薬は盗まれた。




『試薬品』……後に、この失敗作がPW4の前身になる事など、この時は誰も考えもしなかった。




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