崖の孤城の巻
葉桜drops
───5分前
「…………は!?」
居住権獲得が必要、そう知った猪狩は深く悲しんだ。
「上に報告があるんですよ……あなたが本物なのか、その報告が……」
各班の事務所の前を通りすぎる。『18班』と書かれた一室を前に、二人が立ち止まった。
「俺がその……上に証明しに行けと?」
「あ、勿論一人で……何て言わないですよ?」
「じゃあ、誰が……」
猪狩が願う人物は唯一人、勿論零細である。東雲が扉を開け、二人は部屋の中へと入った。
「あ……それはほら」
ガチャ、と言う音が鳴り、再び入口の扉が開く。
「お! 君が噂の猪狩くんか〜!」
声の方を振り返る前に、猪狩は背中を強く叩かれた。トンネルでの戦いを忘れた猪狩は、自身の背中が痛むのを初めて認知した。
「うわっ!? 誰だ?」
「あれ〜? お姉さんを知らないのかな〜?」
顔に見覚えはない。何やらここの有名人の様だ。
(女……肌は若い……茶髪……化粧はどうした……? 38か)
「あ、猪狩さん。こちら葉桜楓さん。お隣17班の班員で……」
「どうも! 葉桜楓、39歳です。よろしく」
「(ハズした)……どうも、猪狩です。初めまして」
第一班班員のムードメーカー的存在。藤峰と気が合うらしく、とても親しげな関係を築いている。
「へぇ……まぁまぁ広いんですね」
彼女の反応で辺りを見回す。内装は普通で、会社のオフィス式。よく刑事ドラマなどに出てくる、広めの事務所である。
「あ、奥にベランダありますよ!」
(……ベランダ?)
事務所は一階。あるのはベランダではなく"庭"のはず、猪狩はそう思った。
葉桜と共にガラス扉を開ける。何と本当にベランダである。
「わ……凄い谷」
「その通り! 班員棟があるのは本部の中心。周りは全部『崖』で覆われてるの!」
「へぇ……」
下を覗けば、暗く大きい穴が果てなく続いている。猪狩の中の『一階』と言う感覚が、徐々に薄れていく。
(てか何の用なんだ……? この人)
「ほ、ほら……崖の周りは壁に覆われているんです。こ、ここもその大きな壁の一部なんです……」
「崖のすぐ向こうにあるのがいわゆる……"町"ですか?」
「そうそう! この棟とあっちに行くには.橋を渡らなきゃ行けないの。ほらあれ!」
崖から伸びている唯一の橋。半壊状態のその橋には、何人か人が立っている。
「ね? ここ夢みたいな世界でしょ? ようこそ本部へ!」
「……それで省吾さん。俺は誰と一緒に証明しに行くんですか?」
「それは……」
───ガチャ!
同時に部屋へと誰かが入って来た。
「ただいま〜! みんな生きてるよ〜!?」
「あ、冬香ちゃん! いらっしゃい!」
(いらっしゃい……? 『お邪魔してます』だろうが……)
「あ、楓ちゃんいたんだ〜!」
「お前……何故ここに?」
「えっ!? 何でって……何でだろう?」
猪狩に向かって葉桜が問う。
「……いや俺に聞かないで」
「じゃあ……行こうか。証人喚問」
そう言って証人と名乗り出たのは零細……
ではなく、班長の満であった。
桜が咲かないからお花見ができません。
なんか咲く前で散っていくんです。
儚くて切ないわけなんです……。
ヒントがすぎましたね笑
それではまた次回お会いしましょう♪




