昨日の敵は今日の友の巻
〜懐かしの登場人物〜
猪狩剛、42歳没。
身長183cm、体重65kg。
猪狩弘の兄。
元暴走族団員。口が悪い。でも根は優しい。
猪狩弘達"半切れ者三人組(弘、零細、菜々風)"の先輩的存在。三人からは崇拝されている。
頭は良い方。どちらかと言うと頭がキレる。
彼女あり。そこそこカッコいい。自覚なし。
趣味は古い単行本集め(主に空き家から入手)。
───風吹山麓
「…………手を組む?」
予想外れの提案に零細は戸惑った。間髪入れずに佐野は続ける。
「そう、たまにはいいでしょ?」
「…………?」
───佐野惟兎。零細とは旧知の仲である。
「今さら何の用だ! って顔してるなぁ……心外」
零細の心を読むかのように、佐野がそう唱えた。
「…………」
二人が実に会うのは3年以来のこと。零細はどこか、佐野を拒む素振りを示している。
「いいから……僕の話を聞いてよ」
零細が一言も発さずとも、佐野が勝手に話を進める。佐野に痺れを切らしたのか、とうとう零細の表情が険しくなり始めた。
「……俺は会いたくなかった。二度と」
「…………」
「僕はそんなことないけどね……辺りか?」
「…………!」
佐野の沈黙を破り、続けて零細が問い詰める。
「無駄な余談はいい。早く用を伝えろ。そして直ぐに 消えてくれ」
普段の彼とは思えない声の雰囲気に、佐野は思わずたじろいだ。
「分かったよ。じゃあ本題だね」
長い静寂がしばらく続いた後、佐野が表情一つ変えずに切り出した。
「まず最初に言うけど、仲間になれ……そんなことは言わないよ。僕は」
「…………」
「相談しようと思って。猪狩くんの事を」
零細とは少し変わる、普段は聞かない佐野の声に、今度は零細に寒気が襲った。
「誰が……お前らに?」
「あ、違うよ義隆くん! 僕が言いたいのは……」
佐野が何かを言いかけたその時だ。
…………ヒュッ!
「…………遅かったね」
零細が瞬きをする間に、二人の上から誰かが現れた。彼の付き人だろうか、黒いマスクを身に纏っている。
「貴方が速いだけ。猪狩様、これ以上は!」
(コイツら…………まだ知らないのか)
「え〜? いいとこだったのに!」
「ですから……」
零細にはその女の声に聞き覚えがある。二人がまだ小さい頃から佐野の横にピタリと付いていた女……零細は彼女の声を聞いて、即座にピンと来た。
しばらく佐野と口論した後、彼女は佐野の手を引き、零細の元から一瞬にして離れて行った。
「じゃ、また今度」
結局、本題に一度も入ることなく彼は去っていった。零細は必死に思考を巡らせる。
(…………何故このタイミングだ? この事件に関して知らない事は無いだろうし…………?)
───しばらく考え込んだ末、零細は答えに辿り着いた。しかしそれは、彼にとって余りにも信じられない結論であった。
「……さて、集合場は」
彼はそう言うとトンネルに身を回した。爆破されたトンネルに悠々と消えて行く。
───新風吹山トンネル内
猪狩と省吾は着々とトンネルを進み、本部の目と鼻の先まで来ていた。
「……そういえば省吾さん。どこいってたんですか?」
戸愚呂が旧トンネルを爆発させ、省吾はそこへ何をしにいったのか。猪狩は疑問に思っていた。
「え、ええ……か、彼を手伝っていたんです」
「手伝って……助けに行ったのでは?」
「い、いえ。私は実戦向けではないので……以前説明した力で、彼の援護を」
(……あぁ、確か緊急時にだけ発動するアレ…………?)
しばらく東雲の武勇伝を聞いたが、彼の説明は猪狩の頭に一つも入って来なかった。
「そ……そうでした。猪狩さんはPW4を知らないんでしたね」
必死に整理する猪狩の頭の中に、再び東雲の声が飛び込んでくる。
「…………PW4?」
東雲が手短に説明する。先程とは違い、今度はしっかりと猪狩の頭に頭に入ってきた。
───尾上の通り跡形もなく消えるため、故に『証拠隠滅』などに使われる事も可能である。
PW4は些細なことで流通し始めた。近頃、「行方不明」の事件が後を経たない。
───省吾の妹も犠牲者の一人である。
零細と戸愚呂の認識では、PW4の存在は18班員は誰も知らない。しかしそれは、独自でPW4を調査する省吾を除けば、の話である。
(要するに、敵にも味方にもなり得る力……)
いつかのRPGを思い出す。攻略不能な鉄壁の前に突如として現れたソレは、まるで狂気のアイテムであった。
「わ、私口が軽いんですね……本当は話てはダメなんです。皆には内緒に……」
「……了解」
───淡々と東雲と会話を交えていた猪狩だが、その内心は不安で埋め尽くされていた。
(……何ココ? 俺死ぬの?)
脳裏によぎるRPGのシナリオ。展開の推測を得意とする猪狩は、置かれた状況を『最悪』と捉えていた。
しばらく会話が止む。1km程歩き、二人は一面ガラス張りの大広間へと出た。
「…………!」
「……猪狩さん、着きました。 私達の本部です!」
辺りを見回すも、自分の顔だけが映る。猪狩は戸惑い酔いながら、先へ向かう省吾について行く。
……パリッ!
ガラスの一角を省吾が蹴り破る。ピッ!と音を立て、人一人分の扉が現れる。
東雲が扉を引く。扉の先は白光に包まれ、明るい空間が続いている。
───所要時間約50分。猪狩弘連行作戦、完了。
連行作戦編、終了てす。因みに所要時間55分位です。
ー経緯ー
出発→尾上急襲→一同離散→戸愚呂vs尾上→トンネル爆発→猪狩vs飛麿→尾上、飛麿死亡(前記とほぼ同刻)→冬香と雁野、藤港到着→佐野惟兎登場→猪狩、省吾到着
場面転換多すぎましたね〜!
次からは遂に本部編です。
それではまた次回お会いしましょう♪
第二章はもう少し続きます。




