W.CとA.Fの巻
勇気の、讃歌
猪狩はまだ、佐野を知らない。
────日付は変わり、2023年6月16日
「羽外山戸一郎。38年間ずっと君を探し続けたんだよ、佐野君……」
「佐野って誰だよ!? 俺は猪狩だ!」
恐怖のせいで気が気で無い。扉を思い切り叩く。
「いいや、君は佐野。佐野惟兎だ。猪狩君……」
(……何を言っている?)
「何言ってるんだ……か」
一ノ瀬同様、心が読める様だ。それは猪狩の不安を更に煽った。
「まさか一お前、一ノ瀬と同じ!」
「その通り。我々はX-phy。君を迎えに来たんだ。佐野惟兎君……」
「だから、佐野って誰だよ……!?」
「君は猪狩弘じゃ無い。ソレであってはいけない」
一層襖を強く叩く。障子一つ破れない。
「何で一ノ瀬を……? 一ノ瀬は仲間じゃ無かったのか!?」
猪狩はそう叫び放つ。俄然襖は破けない。
「一ノ瀬は溺れた。彼の方の正体が知られる事は決して無い」
羽外山は多喜の首根を掴んで持ち上げた。
「おばあさんはまだ、生きている」
羽外山は多喜の傷に手を当てた。すると彼女の体から、瞬く間に銃弾が落ち、傷跡も塞がり始めた。
「あれ、私は……? 剛……? 弘……?」
男ば多喜を静かに離す。多喜には見えていないのか、彼女は自然に階段を降りていった。
「あれ……?確かに弾が……!?」
「死んでいなければ、傷跡を治すこと位我々には出来る。そう、君もな」
そう言うと男は、自然と姿を消し始めた。
「待て、まだ聞きたい────」
(……これも何かの能力なのか?)
気がつくと、羽外山は消えていた。
(何だったんだアイツ……?)
彼が消えると共に、猪狩は耳鳴りが聞こえた。それと同時に、彼はその場で失神した。
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ピピピピ……ピピピピ……ピッ!
「うるせぇ! こん畜生! この…目覚ましぃ!」
(……?)
時計の音に目を覚ます。経験のある出来事にふと疑問を感じ、時計を見る。午前7時。
───2025年6月14日
「戻って……るのか……?」
以前とは違い、記憶はが定かである。一ノ瀬が死に、彼の呪縛が解けたようだ。
「…………今朝のニュースです───」
テレビにに気がつく。見覚えのある、名前も知らない天気予報士がそこに居る。
「6月11日、朝7時。今日も元気に……」
リモコンを持ちテレビを消す。
(……11日? 体重計に乗る前……)
ふと思い出し、体重を測る。
───ピッ! 63kg
「……やっぱり、あのタイムスリップが原因なのか……………?」
突然何かに気づいた様で携帯を手に取った。
(確かおばぁの余命……)
2022年時点で余命が確か、三年。急いで病院へ連絡してみる。
「はい、こちら、神无露総合病院案内所です」
多喜の安否を尋ねる。暫くして連絡が返って来た。
「猪狩多喜さんなら、既に、こちらの病院には……」
「いえ、元々入院しておらず……」
「…………」
沈黙の後、猪狩は電話を切った。
(行方…………不明?)
スマホを置き、猪狩は仕事の支度を始めた。今日は確か社員総会の日。
7時25分、毎度お馴染みの朝支度が始まった。コーヒーは沸かすのが面倒くさいので、口の中で粉とお湯を混ぜて飲む。彼独特の習慣である。
ガチャン!
玄関を閉めて、猪狩は下の駐車場へ走る。
(確かここで一ノ瀬と……)
記憶は鮮明に戻っている。彼と戦ったことも、勿論鮮明に覚えている。
突如、誰かが、背後から猪狩のことを呼び止めた。
「猪狩……? 猪狩なのか……?」
背後を振り向く。そこにあるのは懐かしい顔。
───ただ一つ違っているのは、胸に"A.F"と書かれたバッジがある事だ。
「お前まさか…… 零細か…………!?」
寒さにお気をつけて!
修学旅行、学年末考査でしばらく空きます。
その旨宜しく!
では皆さん、また次回お会いいたしましょう!




