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アデスの魔王  作者: 運命美終
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第一話 魔王復活

 二千年前、突如として現れた五体の魔物。世界を襲い瞬く間に八つの国と二つの種族を滅ぼす。

 当時の人々が手を組み、やっとの思いでアデスと言う地に封印した。が、現在になり封印が破られ魔物は再度地上に降り立った。

 アデスにほど近い国、王都クライヒヨームには各国から首脳などが集まり日夜会議が開かれていた。

「魔王と四厄災の封印が破られたと言うのは現実味を帯びてきたな……」

「先日、私どもの兵を現地へ調査させに行かせましたが、結果はこの報告書どおりです」

 おのおのが息をのむ。報告書には惨状が事細かに書かれており、封印が解かれた事を裏付けるものであった。

「至急、勇者をここに。それと、この国に滞在している冒険者もだ」

 数時間後、城の一室には総勢二十四名の冒険者が集まる。

 中では王都クライヒヨームの神官長テレーザが立っており、冒険者が席に座ると同時に今回の任務の説明をしはじめた。

「諸君! 我々は今、滅亡の危機に瀕している! 二千年前に我々の祖先が封印した魔王が現世に復活したとの報告が入った!」

 一人を除いて騒つく冒険者たち。無理もなかった。魔王とは子供の頃に聞いた昔話の類で自分たちが対峙するとは思っていなかったからだ。

「俺たちは魔王の話なんて聞いていないぞ!」

「私はただ、報酬が高いから来たわけで死にに来たわけじゃないわ!」

 それぞれが勝手に騒ぐ。段々と熱が上がって収拾がつかなくなりそうになった時、長身の男が声を上げる。

「静かにしろ! いいか、魔王が復活したとなればこの国は確実に狙われる。どれだけ喚いて騒ごうが無駄なんだ」

 男の言葉に皆、口ごもりながらも黙る。

「ゲラル殿、手間をとらせた。ゲラル殿が言った通りだ、この国は遅かれ早かれ狙われるのだ。そこでだ、残っていた君たちはできるだけでいい、国民を連れて避難してほしいのだ。既に、西の諸国には連絡を入れてある。命の保証はできない。が、皆にしかできないことだ」

 テレーザは帽子を脱ぎ捨てて土下座する。何度も顔面を地面に擦り付けて懇願する様子に冒険者は一人、また一人と依頼を受けた。

「皆のもの協力に感謝する! あとで、教会の方から荷車などを用意される、できる限り迅速に避難を始めてくれ。話は以上だ、作業に取り掛かってくれ!」

 冒険者たちが部屋を出て、テレーザとゲラル、その他数人の神官が残った。

 テレーザの顔は先ほどと打って変わって深刻な顔に変貌する。

「ゲラル殿……いえ、初代勇者様。お久しぶりでございます。もう一度来てもらい、なんと言っていいやら」

「当然だ、これが天から与えられた使命だからな。それに、早く俺も仲間の元に行きたいんだ。長く生きすぎた……だから、今回で全てを終わらせるぞ」

「勇者様の装備は教会の方で管理しております。一年に二度、調整していたのですぐに使えると思います」

 テレーザはそう言うと、入り口近くの神官に目配せし装備を搬入させた。

 ゲラルがそれを装着すると、光が何処からともなく降り注いだ。それが、勇者の証であった。

「久しぶりに着たが、手入れがしっかり行き届いていて以前よりも着心地がいい。さて、テレーザたちも早く逃げろ。戦いの巻き添えになるぞ」

「ありがとうございます。勇者様、どうかご武運を」

 王都では、魔王復活の知らせを受けて混乱に陥っていた。人々が我先にと逃げるなか、流れに逆らって城に向かう者が一人。

 透き通る様な白い肌、艶やかな長い茶髪をなびかせながら歩く。

 ときおり、歌を口ずさみながらゆっくりと城へ向かう。何人かの人間に逃げる様に促されたが、会釈をして気にせず歩く。

 やがて、城に着いた彼女は地面に手を当てて魔法陣を展開した。

「さてと、私の仕事を終わらせようかな。それに、ヤツの気配もあるし……ふふっ、最初に来て正解! 魔王様の良い手土産まであるなんて」

 突如として、城を白い光が包み込む。その後、轟音が響き、衝撃波が発生。瞬く間に、城下町が崩れる。

 華やかな城下町は阿鼻叫喚の地獄に変わった。

「雷鳴のプエラ……やはり、お前だったか。探す手間が省けた。この惨状の代償は高いぞ」

「こっちも手間が省けたよ。ゲラル……ふふっ、魔王様の手土産になってもらおうかなっ!」

 プエラから放たれた一閃の光が、ゲラルの頬を薄く裂く。ゲラルは血を拭い剣を抜くそれが戦いの合図となった。

「それ、避けちゃうんだ。きもっ、どんな反射神経してんのさ」

「お前の服に傷を付けるくらいの反射神経だ」

 プエラが一瞬だけ目を逸らす。そのわずかな隙に二撃目の斬撃が飛ぶ。彼女がかわし、よろけた所を三撃目が襲う。

「危ないじゃん、ふらついた所を狙うなんて卑怯だよっ! さっさと消し炭になってよ!」

 空気が鳴り鋭い稲妻がゲラルの心臓を狙う。二発目、三発目と間髪を入れずに放たれる魔法に、ゲラルは少しだけ表情を強張らせる。

「厄介な魔法だ。だからこそ、ここで殺しておかなければいけないな……」

「ゲラル、貴方は私に近づけないよ。私と貴方じゃ相性が悪すぎるもの」

「相性が悪い? 何を見て言った? 近接しかできない能無しだと思ったのか?」

「近接しかできない能無しで……しょ……?」

 プエラは違和感に気付く。先ほどから何発も撃っている魔法が、ゲラルに辿り着く前に消滅している事に。気付いた時には遅かった。閃光の一撃が彼女の胴体を切り裂いた……はずだった。

「すまないが、彼女を失うには早すぎる。君の戦力は以前とは比べ物にならないことはわかった。私たちは、しばらく戦力を蓄えることにするよ。では、また会う日まで」

 突然現れた男は、プエラを小脇に抱えると一瞬で姿を消した。

 後に残ったのは消滅した城と、甚大な被害を受けた町だけであった。

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