OL女と白髪幼女のお話し合い
「ん〜……やっぱり、領域畑を作るならココだよねぇ」
先日、ヤンキー神から畑を作れと言われて、農業を始める事にしました。どーも私です。
ということでどこに領域畑を作るかって話なんだけどさぁ。
「人の感情を収穫するんなら、人間が多く集まる場所が効率的だよね!」
んで身近で人が集まりやすいなら、宝石店の店内でしょう。能力でカメラも設置しているし、状況を把握するのも容易い。
「これでお店にやってきたお客さんから感情を収穫しようって訳よ」
てことで、今晩は宝石店に忍び込んでおります。
ふへへ、OL女には悪いけど、勝手にお宅の店舗に畑作らせていただきますねぇ……。
「ぬん! 『領域畑』展開!」
私を中心に、目に見えない領域が広がっていく。
「ん、ん〜……なるほどなるほど……こんな感じねぇ……」
感覚で分かるけど、私の超越者としての力じゃ、あんまり広い範囲に領域を広げられないね。
店舗全域をカバーするのは無理くさい。
それに私からあんまり遠くなると、維持ができないねコレ。
「ま、しばらくはカメラで店内を監視、そして領域畑の様子見といこうかね」
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「入るわよ……」
軽いノックの後に、OL女はドアノブに手をかけて、部屋に入る。前にノック無しに部屋に入ったら、中にいた少女二人組が飛び上がって、ベッドまで飛び退いた事があったからだ。
よほど警戒心が強いのか……はたまた、それ程厄介な相手に付け狙われているのかは分からない。
だが、どちらにせよ自分はあまり信用されていないらしい。
「……一人かしら?」
部屋の中には、ソファーに座っていた白髪の少女が手に本をひろげながら、コチラに視線を向けていた。
「……ひとり」
言葉少なめに返した白髪に、OL女は頭を抱える。
じゃあもう一人は何処にいるんだよ……と。明らかに訳アリな幼女二人が、ここ以外の何処にいくというのか。
しかも一人を置いて。
「……胡散臭い方は?」
胡散臭い方……もう一人の髪の長い少女のほうだ。
呪いを解く力を持っているのが、この白髪の方。
しかし、この白髪の少女はあまり自分から話しかけるタイプではない。いや、この位の年齢なら見知らぬ大人に対する対応としては正しいのかも知れない。
胡散臭い方の少女は交渉担当のようで、会話をするのは、もっぱらこっちだ。……しかし、とても胡散臭くて不気味。
なので白髪幼女と面と向かって会話をする事はあまりなかった。
改めて考えてみると、あれだけの呪いを一瞬で解いてしまう異能力は異常だ。
真顔でコチラを見てくる白髪幼女は、何を考えているのか分からない。
いや胡散臭い少女も、アレはアレでなにを考えているのかは分からないのだが……。
「……たぶん……寝てるとおもう」
ベッドを見てみるが、そこは、もぬけの殻だ。自分は何を見せられているのだろうか?
「出直す?」
あまり会話をしない白髪幼女と二人では時間を持て余しそうだと思い、そう提案する。
「……問題ない。呪いは解くから、ソレ渡して……」
それを聞いて、手早く呪いの品をテーブルに並べていく。
すると白髪幼女の瞳が赤く輝き始める。
その光景にゴクリと喉を鳴らした。
「……おわった」
十秒ほどして白髪幼女がそう呟く。
今までと違って一瞬で終わらなかったのは、おそらく先日の能力を弱く見せろという言葉を実践してのことだろう。
OL女はため息を吐いて、呪いのすっかりなくなった品をケースに仕舞い込んだ。
どちらにせよ早すぎるんだよ……と思いながら。
ふと白髪幼女から視線を感じる。
その視線は、OL女の身につけていた青い宝石のついたネックレスだ。
「……そのネックレス………………ん〜……別にいいか。何でもない」
欲しかったのだろうかと首を捻る。悪いが、このネックレスをあげる事はできない。
すると白髪幼女の視線は別の方へと移る。
「……そっちは? 解こうか?」
部屋から出て行こうと、閉めようとしていたアタッシュケースを指差して、白髪幼女が声を掛けてきた。
「……ちなみに……呪いが見えるのも異常だからね」
確かにアタッシュケースの中には、まだ幾つかの呪いの品が残っていた。しかし、あまり一度に呪いを解くことにOL女は忌避感を持っていた。
正直、自分で自制しないと、コチラが有利すぎて後が怖くなるのだ。
「明日でいいわ」
少ない給料でコキ使うには、能力が有用すぎる。
「……パイプ端末が欲しい。それを解くから、わたし用に用意して欲しい」
なるほど……どうやらこの白髪幼女は交渉をしているようだ。胡散臭い少女に引っ付いて、異能を使うだけの存在ではないらしいと評価を改める。
白髪の方は白髪の方で、独自に考えはあるらしい。
「分かったわ。もう一人の分はいいの?」
「……オバケ姉ちゃんのパイプ端末は……いらない」
実は仲が悪かったりするのだろうか?
「キミたちどんな関係なの?」
あまり深入りするべきではないとは思うが、気になるものは気になる。胡散臭い方に聞くより、白髪幼女に聞いた方がマトモな答えが返ってきそうだ。
「…………さぁ」
はぐらかしているという訳でもなく、本当に分からないようだ。
でも友達と即答しないのは、この年齢の子供にしては珍しいとも思う。
「ふ〜ん……まぁ、いいわ。親切心で教えてあげるけど、呪いを解くスピードはまだ遅くしたほうがいいわよ。化け物と呼ばれたくなかったらね」
そう、ほんの親切心だ。自分は能力の異常さを知っているから問題ないが、あの解呪の力は見る人が見れば化け物と恐れられてもおかしくない。
白髪幼女は少し考えて、口を開いた。
「……………………それは違う」
しかし返ってきたのは否定の言葉。
ボソリと呟いた言葉に、何故かゾクリと怖気を覚えた。
「……本当の化け物は…………オバケ姉ちゃん」
よく分からない返答だったが、おそらく白髪の少女にとっては譲れない部分なのだと感じた。




