ワシ鼻マキヒゲ副店長
本日二話更新 これは二話目
「この部屋を使っていいわよ」
「お、なかなかいい部屋じゃないっすか」
案内されたのは、赤い絨毯の引かれたワンルーム。
左右の壁にベッドが置いてあって、中央にテーブルとそれを囲むソファー。
「一応、誰にも見つからない場所ってことで外の道路から見えないこの部屋にしたわ。……呪いの解除も此処でいいのかしら?」
「オッケーっすよ。早速始めますか?」
確かに窓から外を見てみると、コンクリートの通路を挟んで高い塀が見えた。
「いえ、何の呪いを解いてもらうか考える時間が欲しいから明日からにしてほしいわね」
そんな話をしていたら、通路の向こう側から速足で歩いてくるオッサンがいた。
「……げっ」
それを視認したOL女は、嫌悪感を滲ませながら舌を出す。
お、仲が悪い感じかい?
「……店長、戻ったのなら報告ぐらいしてほしいのですがね……」
男は神経質そうな声でOL女に嫌味を言ってくる。
鷲鼻にモノクルを掛けた男は、巻き髭を撫でながら蔑むような目でOL女を見ていた。
「……副店長……今から報告に行こうと思っていた所よ……」
副店長と呼ばれた男は、ふむ、と芝居掛かった仕草でアタッシュケースをジロリと見てくる。
「それで? 取り引きの方は上手く行ったのですかね?」
「……えぇ、バッチリよ」
さも呪いの事など無かったようにOL女はニヤリと笑う。
おぉう……この女よく言うわ……バリバリ呪いに塗れた宝石買い取らされておいてさ。幼女ちゃんがいなかったら呪いの宝石を持ち帰った癖に。
「……上手くいったのですか?」
OL女の返答が意外だったのか鷲鼻副店長は不思議そうな顔をした。
「……なぜ不思議そうな顔をするのかしら?」
「…………いえ、まだ若くて経験の浅い店長が、美味しい話に騙されたのではないかと心配していただけですよ……問題なかったらよかったです」
「……ええ、よかったわ」
「……ところで――」
鷲鼻副店長は今度はジロリと後ろに居た私達を見てくる。
どーもどーも副店長さん。素敵な髭ですね。
「そちらの子供達はどうしたのですかな?」
「……親戚の子供を少しの間、預かる事になったのよ」
「ウィッス。よろしく頼んますわぁ」
ニッコリ笑って丁寧な挨拶をしてやる。
口うるさそうなオッサンだけど、無垢で純粋な私の挨拶に父性本能を擽られるがいい。
「……店舗部分にはくれぐれも寄り付かせないで貰いたいですな」
「分かってるわ。それにしばらくの間だけよ……それよりも私がいない間、何か問題はなかったかしら?」
「また泥棒が入りましたね」
「またっ!? 嘘でしょ! どれくらい盗まれたのよ!」
「あまり多くは盗まれてはいませんね。あとで被害詳細を纏めた書類を見せましょう」
泥棒ねぇ。確かに泥棒に入られたとか言ってたな。二回も入られるとか狙われてんじゃないの?
頭を押さえながら疲れた顔をOL女は見せる。
「侵入者用の装置はどうしたの?」
「反応しませんでした。恐らく解析されてジャミングされたのでしょうね」
「最悪……」
「ともかく警察に被害届も出さないと行けません。遊んでないで早く執務室まで来てください」
そう吐き捨てるなり、副店長は来た時と同じように早歩きで去っていった。
「クソジジイが! 言いたい放題いいやがって!」
「へいへ〜い落ち着いて……それより早く行った方がいいんじゃない?」
鬼のような顔で叫ぶOL女を宥めると、分かってるわよと言いながら去っていった。
さて拠点もできた事だし、ようやく落ち着いたね。
「さて幼女ちゃん……これからの事なんだけど」
「……どうするの?」
「まぁ、あの姉ちゃんが豚貴族の情報を持ってくるの待ちだねぇ。それまでは資金集めかなぁ。飛行船に乗って来たんだから、帰りも飛行船に乗る訳でしょ。それには金が必要なんだよねぇ」
まぁ最悪密航するけど。
「ちゅーことで、幼女ちゃんの能力頼りだからしっかり働いてね。私も他に金策を考えてみるから」
「……うぃ」
――――――――――――――――――――――
はい、夜になりました。
二つあるベッドの一つには幼女ちゃんがグースカ寝ておりますわ。久々の柔らかいベッドで朝まで安眠コース。
対して私は……というと――――
「にゅ〜んっ……」
はいどーも、ベットの下からこんばんは。
スキマをベッドの下に作ったよ。まぁベッドで寝ても良かったんだけどね。初めての場所だったから念の為にスキマに隠れてたんだよ。
「最近スキマで寝る事が多かったから、外で寝るのが落ち着かなくなったんだよ……」
いやぁ、変な癖ついちゃったね。
徐々に戻してかないと、ただでさえ引きこもり気味な性格だから歯止めが利かなくなっちゃうよ。
「まぁそんな訳で……恒例の散策に出かけようかね」
今日の目的はお店部分。流石に困ってもないのに売り物に手は出すことはしないけど、単純に興味がある。
外から見たら博物館みたいになってたから見ごたえもあるんじゃないかな?
「……オバケ姉ちゃん……どうしたの?」
「ん? おっと、起こしちゃったッスね」
部屋を出ようとしたら、幼女ちゃんがモゾモゾ起きだした。
「いやぁ……夜のお散歩よ。幼女ちゃんも来る?」
幼女ちゃんは眠気眼をシボシボとさせて首を横にふる。
「……ん〜ん、いい……寝てる」
「うぃ〜、なんかお土産あったら持ってくるよ」
私は事切れたかのようにパタリとベッドに倒れる幼女ちゃんを後目に、部屋を抜け出した。
「さぁ〜て……なんか面白いもんでもあるかなぁ〜」




