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商人との交渉


「……はぁ、三十二個。全部の宝石から呪いが無くなってるわ……アナタ達いったい何したの?」

「……企業秘密」

「グフフ、それより姉ちゃんよぉ。約束……覚えてるっすよねぇ……」


 揉み手で言ってやると、凄え嫌そうな顔された。

 全ての宝石を見分したOL女は、疲れた顔をして私達を見てくる。

 ははぁ、呪いを解くなんて子供に出来ねぇと思ってたろ? 化け物封じ込めてた『封印』を解除する、幼女ちゃんの手腕を舐めちゃいかん。


「……何すればいいわけ?」

「んふふふ、まぁさっきも言った通りッスね。しばらく面倒みてくれりゃあ良いんすよ」


 その都度、こっちの要件を伝えるからさ。出来ない事は断ってもいいよ。


「……情報ほしい。あと私達のことは喋らない」

「お、幼女ちゃんナイス。見てもらった通り、この幼女ちゃんは呪いを解くことが出来るんだけどね……そのせいで困ったこともあるわけッスよ」

「……ふんす」


 横でメシを口に詰めてる幼女ちゃんを、ジャーンと紹介してやると、幼女ちゃんはドヤ顔で胸を張る。

 

「でしょうね……ハッキリ言って金の卵を産む鳥だもの。狙われない訳がないわ」

「話が早いっスねぇ。んで私達の事を秘密にして欲しいンスよ。もちろん見返りはありますよぉ……あるんでしょ? ……まだまだ呪いの品がさぁ?」


 ニィイイと笑って告げてやると、OL女はビクッと震えたが、腕を組んで考え始めた。

 

 ふむふむ、私達を抱え込んだ時のメリットとデメリットを天秤に掛けてるな。


「……アナタ達、誰から狙われてるの?」

「まぁまぁ、そんな事いいじゃないッスかぁ。そんなに長い間お世話になる訳じゃないッスよ。それに見つからなければ良いんすよ」

「……」


 まぁ貴族って事は何となく気づいてんじゃない?

 ……明言はしてやらないけどな。


「わかったわ……。確かにキミ達の能力は惜しい。少しの間だけ面倒を見る事を約束する……でも何かあったら手を切るからね」


 よ〜し、寄生先ゲット! わざわざ手を切るなんて言葉にするのは馬鹿正直だと思うがね。


「いやぁ……どうもどうも。仲良くやりましょうや。早速で悪いんすけど、太った貴族の情報ってありません?」

「ちょっ、ヤメテよ! モロに貴族関係匂わすの! 決心が鈍るじゃない!」


 ははは、そら貴族関係よ。

 冗談はともかく、幼女ちゃんをママさんと豚貴族のもとに送り届ける為には聞かにゃならんからね。キリキリ吐いて貰おうか。


「太った貴族ねぇ……あまり貴族と関わりがないから詳しくはないけど……他に情報はないの? 太った貴族なんて一杯いるわよ」

「そうッスねぇ……あ、ちょっと前に不正で訴えられてますね」


「ヤバイタイプの貴族!」

「あと、口癖は『ぐはは! ワシは悪党だ! 何でもやるぞ!』ですね」


「ごめん! やっぱり関わるの止めてもいいかしら! 下手に関わると死体になりそうなんだけど!」

「いやいや、勘違いしないでね。逃げてるのはコイツからじゃないから」


「安心出来る要素が何一つない……悪徳貴族以外にも狙われてるって事じゃない!」

「ははは、帰るのは豚貴族の元なんで安心してね」


「……とにかく、今は何とも出来ないわ。少し調べる時間が欲しいわね」

「おけおけ。それで呪いの解除料金なんスけど……」


 私がそう呟くと、OL女は顔を難しくし始めた。恐らく呪いを解くって相当金が掛かることなんだろうね。でも、安心していいよ。


「あぁ、いやいや。これの呪いの解除料金は要らないっすよ」

「…………なにを考えてるのかしら?」


 そんな警戒しないでよ。こっちの都合もあるんだからさ。


「いやぁ。呪いを勝手に解いたのはコッチですからねぇ……それで金払えなんて押し売りもいい所でしょ? それに姉ちゃんは金と時間さえ掛ければ呪いを解く事ができる」


 それで規定料金貰ってたらOL女の旨みがない。つまりは私達を切り捨てやすいんだ。ハリウッドメガネが探してるって事になったら売られちまうでしょ。


「さっきも言った通り『私達を雇って』ほしいんだよ。一日の給料としてお金を貰う。くれる金額は高くなくていい。その代わり、さっき言った通り情報の提供、衣食住、私達の隠蔽と便宜を図って欲しいって訳ッスね」


 名付けてサブスク幼女だよ。

 

「……なるほど、商人との交渉がよく分かってるわ。……親に守られる子供の思考じゃないわね。落とし所が絶妙だわ」

「そんじゃ契約成立という事で、また明日来ますわ……帰るよ幼女ちゃん」


 私がソファーから立ち上がると、幼女ちゃんもお土産のピザを持って立ち上がる。その行動にOL女は首を掲げた。


「あら、帰るの? 衣食住を提供して欲しかったんじゃないの? 今日の所はベッド使っていいわよ。明日本社まで連れて行くから」


 OL女はソファーの後ろのベッドを指さす。

 その瞬間に作っておいたスキマに滑り込んだ。


「……えっ? ……嘘でしょ……どこに消えたのよ……」


 再び、視線を戻した時には、私達の姿はなく、OL女は目を白黒させていた。


 悪いけどそこまで信用できないんだ。帰るって言ったけど本当はこの部屋にスキマ作って明日までヒマ潰すつもりだから。



 無防備に寝ている姿を晒す気には、なれないんだよねぇ。



「なんせ、こっちは無力な子供だからな」




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― 新着の感想 ―
[良い点] 絶対に隙は見せないところ良いねぇ。 豚貴族のとこの檻は安心要素でもあったのか。
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