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酔った女に声かけようぜ


「よ〜し、今日はここで夜を越そうかね。幼女ちゃ〜ん、ちょっと周り警戒しといて」

「……任された」


 どーも私です。

 遊園地を脱出して三日が経ちました。

 あの後、私達は街を目指して歩き続けた。まぁ、街を目指してって言うか、常に街ではある。

 でも都会の方に向かってるって感じかな。


 特に目的なんてものがある訳じゃないけど、栄えた場所の方が情報も集まりやすいかなと思ってさ。でも都会に向かってるって言っても何となくだからなぁ、本当に正解かどうかは怪しいね。


 今、私達がいるのは、お店が立ち並ぶ大通りから少し離れた路地裏。地面のコンクリートにはヒビが入っていて治安はお世辞にも良くなさそうかな? でもこの位のほうが人目がなくて行動しやすい。


 ハリウッドメガネが探してるだろうしね。


 コチコチコチコチ……チーンッ!

「はいオッケー。準備できたッスよ〜」


 スキマを作ったのは車も入ってこれない建物の間の通路。表の店から出たゴミを捨てるゴミ箱の横だ。


「おしおし、誰もいませんねぇ……」


 幼女ちゃんをスキマに押し込んだら、辺りを見渡して誰も見られていない事を確認。


「ニュルっとな……」


 ゴミ捨て場の横に作ったが、スキマの中にまで臭いは入ってこない。


「うぃ〜、今日もよく歩いたねぇ……」

「……疲れた……お腹減った……」


 タタミ一畳の空間で二人してベットリと横になる。狭いとはいえ、子供二人なら寝転ぶことは可能だ。


「そだねー。お腹減ったねー」


 食料はめでたく食べ切ってしまった。いよいよ食べ物を盗む計画を立てないといけないね。あんまり危険は犯したくないんたけど、そうも言ってらんない。


「……オバケ姉ちゃん……あれ」


 そんな事思ってたら幼女ちゃんがスキマの外を指差して来た。


「う〜ん? あのOLっぽい姉ちゃんがどうかした?」


 路地裏を歩いて来た姉ちゃんの事でいいんだよね? いかにも仕事の出来そうな姉ちゃんだけど……なんか疲れてそうな顔してんね。フラフラしてるけど大丈夫か?


「……もしかしたら……交渉できるかも……」


 ふぅ〜ん……。とりあえず話を聞いてみよか。


 ――――――――――――――――――――――



「なるほどねぇ……確かに場合によっちゃ交渉できるかもね」


 角を曲がった姉ちゃんの後を付けながら、私は考えを巡らす。スニークミッションをしながら幼女ちゃんの話を聞く限り、行けそうな気はする。ただちょっと予想が入ってるので、ハズレた場合が怖いけど。


「ヤバイ奴だったらどうする?」

「……逃げる」


「オッケー、分かりやすい。合図をしたらダッシュで逃げるってことで」


 ある程度の作戦会議をしながら後ろを付けて、女が人気のない通路を曲がった所で声を掛ける。


「よぉよぉ、そこの姉ちゃん。一緒に食事でもど〜お」

「……よぉ〜よぉ〜」


「姉ちゃんの奢りで」

「……よぉよぉ」


 なんかめんどくせえナンパみたいな声掛けになっちゃったけど、まぁええやろ。だいたい合ってる。

 あわよくば私達の糧となれ。そしてメシをくれ。


「……」


 OL女は振り返ると、私達の姿に少しだけ面食らったようだが、ため息を吐くと、興味を無くしたように歩き始めた。ん? もしかしてちょっと酔ってるか?


「まぁまぁちょっと待つッスよぉ……耳寄りな話があるんで聞くだけでもどうッスか?」

「……ここはあんまり治安がよくないわ。子供は大人しくお家に帰りなさい」


 引き止める私の言葉に冷たく返してOL女は立ち去ろうとする。いやいや、こっちはお家に帰りたいから話しかけとんのよ。


「……32個……それと別で一個……」

「ッ……」


 幼女ちゃんが呟くと、OL女は立ち止まってこっちを睨みつけるように警戒し始めた。


「……なんの……数字かしら?」

「いやいや、そんなに警戒しないでくださいよぉ〜」


 あれぇ……私が話しかけると余計に警戒させちゃったぞ。こんなに可愛らしい少女なのにねぇ。


「分からないわね……誰のお使いかしら?」

「ぬーん。どうも勘違いしてるみたいッスけど、私達のバックには誰も付いてないッスよ」


「嘘おっしゃい……数まで正確に当てておいて良く言うわ」

「いやぁ勘違い勘違い。こっちの幼女ちゃんは特殊な能力を持ってましてねぇ。そういったのが見えちゃったりするんすよ」


 私が説明すると、幼女ちゃんは目を赤く光らせてOL女に歩み寄る。うん、ちょっと不用心だけど大丈夫かな?


「……呪い……困ってない?」


 指をさされたアタッシュケースを胸に抱きながら、一歩、二歩と後ろにさがるOL女。うん、無表情で目を光らせると怖いから気をつけようね。


「そんなに怖がらなくてもいいじゃないッスかぁ。本当に悪い事考えてないっすよぉ。それでですねぇ……幼女ちゃんは見えるだけじゃなくて――」


 幼女ちゃんがスッとアタッシュケースに手を添えると、鍵が開いて中の荷物がぶちまけられた。


「解除するのも得意なんすよ」


 OL女は目を白黒させながら開いたアタッシュケースを眺める。触れただけで鍵が解けちゃうんだからビックリだよね。不思議エネルギー由来の鍵なら幼女ちゃんにかかればこの通りよ。デモンストレーションだから許してね。


「……呪い……困ってない?」


 再び幼女ちゃんの口説き文句。


「とにかくさぁ、こんな所で立ち話もなんだから……興味があるならメシでも食ってお話ししなぁい? ……姉ちゃんの奢りで……」


 腹減ってんだよ。


 


 ちょっと小出し。

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