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コースターパニック


「テレサ……少々オイタが過ぎるよ」


 ハリウッドメガネは笑顔のままブチ切れるという器用な笑みで語りかけてくる。


「……ッ!」


 幼女ちゃんはそれに怯えたような顔を見せる。

 しかし……。


「……ッ! うぅ!」


 一度目をギュッと閉じたかと思うと、メガネを睨みつけた。おぉ、偉い偉い。


「ホントに腹括ってら」


 ハリウッドメガネは幼女ちゃんの視線を受け、少しだけ怯んだ顔を見せた。


 はは、怖いよね。ここまで覚悟が決まった感情を向けられるのって、いくら子供でも怖いんだよ。


「……おのれ……おのれ」


 え、あれ? 幼女ちゃん?


「おのれぇ……オノレェ……おのれぇ……おのれぇぇえ!」


 あ、うん。怖いよね。ヤベェ……ちょっと覚悟キマリすぎてないかい?

 これ戻るよね?


 まぁ、とにかくここまで幼女ちゃんがブチ切れてるんだ。アンタも覚悟決めなよ……ハリウッドメガネ。


 ははは、私も楽しむからさ。


「捕まえろ!!」

「あはははは! 捕まえろッスか? あんた何聞いてたんだよ! これはレースだよ」


 大盤振る舞いだ!


妖球あやかしだま!!」


 パパパパパパパパパパパパパパパパリーン!!


 私の身につけている妖球がそこかしこで破裂する。


「……なんだ? あれは?」


 私と幼女ちゃんの頭上に浮かぶ、三つの赤い光の玉。それにハリウッドメガネと護衛達は警戒し、足を止める。


「……いやいや、警戒してるとこ悪いけどさぁ」


 ピッ!

 浮かぶ赤い玉の内、一つが青色に変わる。


「ただの演出だよ」


 ピッ!

 次に真ん中の赤い玉が青色に変わる。


「スタートシグナルって分かる? ……つまりさぁ」


 ピッ!

 全ての玉が青色に変わる。レースの信号機って言えば分かるよね。


「スタートの合図ッスよぉ!」


 ビィイイイイイイ!

 光の玉から勢いよく、霧が噴き出す。


「あはははははは! 変身解除!」



 ――――――――――――――――――――――


 

「ぷあ! 捕まえろ! テレサを捕まえろ! 城に向かわせるな!」

「何処だ!」

「なんだこの煙は!」


 封印の間を一瞬で包んだ霧にハリウッドメガネは焦りと苛立ちを込めて叫ぶ。視界を埋め尽くす霧に、護衛達も混乱しているようだ。


 そして……


「にゅおおおおおおお!」

「ふぉおおおおおおお!」


 その霧を突っ切って、二人の幼女が飛び出して来た。


「あははは! 幼女ちゃん! 城まで走るッスよ!」

「……しょうち! 走る走る走る! ふぉおおおお!」


「あひゃひゃひゃ!」

「許すべからず! メガネ!」


「あらやだこの子! 随分と荒んじゃったんだけど! これママさんになんて説明しよ!」


 叫びながら洞窟内を爆速する二人だが、所詮は子供の足、追ってくる護衛達との距離は縮まってきている。


「居たぞ!」

「多少手荒な事をしても構わん!」


 白髪幼女が息を切らしながら前方を指差す。


「オバケ姉ちゃ……アレ!」

「え!? 幼女ちゃん! アレ使い物になるの!」


「分からぬ!」

「えぇ……」


 前方に見えるのは、ボロボロになったトロッコ。だが、古びた車輪は確かに錆びたレールに乗っかっている。


「よっしゃ! ここまで来たらなるようになれッスよ! ……とうッ!」

「とぉッ!」


 飛び乗った衝撃で僅かに車輪が回る。


 ギリ……ギリ……


 そして、トロッコは下り坂を進み出した。


「うひいいい! ガタガタする! 幼女ちゃん! これレールが錆びついてるッスよ」

「……んべべべべ」


「んぎゃあああ! 追ってきてるー!」


 後ろからは筋骨隆々な護衛達が大勢で迫って来ている。さすがは護衛と言ったところか、トロッコが進むスピードより早い。

 そして、護衛の手がトロッコを掴もうとした瞬間。


 ガチンッ!


「うおあ!」

「ふぉ!」


 トロッコが脱線した。


「ふぎゃーーー!」

「んごごごご!」


 トロッコは洞窟をバウンドしながら部品を撒き散らす。下り坂を滑るというより削りながら。


 枠だけになったトロッコは二人の少女を乗せてガリガリと滑る。


「「んぎゃあ!」」

 

 そして岩にぶつかり幼女二人を投げ出してしまった。


「あたたた! 幼女ちゃん……生きてるッスかぁ……」

「うぃ……」


 そして二人が転げ落ちた先は、来る時に乗って来たアドベンチャートロッコの前だった。


「よし、ようやく遊園地エリアまで戻ってきたッスよ! レールに沿って走るッス!」

「……まって! 乗って!」


 白髪幼女が乗って来たアドベンチャートロッコに乗れと叫ぶ。


「うぇえ! これのコントロールってメガネが操作してたんじゃないの! 私達がやっても動かんでしょ!」


 少女は白髪幼女の言葉を疑いながらも、乗り込む。

 

「……いける。ブレーキ解除!」


 『解の巫女』の能力とは何か……それは封印を解くことではない。


「おぉ! 進んだッス! 幼女ちゃん! やるじゃん!」


 自分以外の魔力に干渉する力だ。

 遊園地の乗り物に掛かっている制御は、魔力由来であり、テレサはブレーキのプログラムを解除した。


「あ、あれ……幼女ちゃん。速くない?」

「ブレーキを壊した……」


「止めろ! 馬鹿! ブレーキを直せ! 出来るよね!」

「……らくしょう」


 白髪幼女は隣に座る少女にグッと親指を立てる。


「……一時間もあれば再構築できる」

「百回はミンチになるわ! ボケェ!」


 コースターはドンドン速くなり、レールからは火花が散る。完全にオーバーペースである。

 このままではコースターは脱輪してしまうだろう。さっき乗ったトロッコとはスピードがちがう。


 投げ出されたらタダでは済まない。


「クソッ! レディセット!」


 少女はジェットブーツを起動し、コースターの後部座席から身を乗り出す。

 そしてコースターに掴まりながらブーツでレールの上を沿わせ走らせる。


「にゅぉおおお! 氷滅球ひょうめつだま!」

 パリンッ! パリンッ! パリンッ! パリンッ!


 作り出すのは氷の板。

 そして白髪幼女の襟首を掴む。


「幼女ちゃん! ジャーンプ!!」

「……とぅ!」


 コースターから強制脱出させた白髪幼女を、氷の板に着地させる。


「うわぁああ! 速ぇえ!」

「ふぉおおお!!」


 氷の板は、レールの上をサーフィンのボードのように滑る。

 コースターからは手を離したものの、それまでのスピードが速すぎて氷の板は凄まじい勢いで滑走する。


 乗り主のいなくなったコースターは、スピードに耐えきれず、前方で脱線して粉々に砕け散っていた。


「ひぇええええ!!」

「うおぉ……」


 幼女を乗せた氷はレールを走り、そしてついに洞窟を抜ける。

 視界が広がり、光が弾けた。


 外は満点の星々とキラキラ灯りが眩しい遊園地。


 忙しなく動く遊具達が、楽しげに幼女達を歓迎する。


「みえたぁああ!」

「……城!」


 そして湖の城も堂々と存在感を示していた。


 

 

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