ステキな笑顔ですね
「それじゃあ帰ろうか」
「うい〜ッス…………んぇ?」
「な、なんだ?」
「巫女の守りを固めろ!」
洞窟から帰ろうとしたら、なんか壊れたイタチ像の所から光の玉が現れた。
ソレはコチラを窺うように空中に止まる。……なにこれ?
ハリウッドメガネの様子からして不測の事態っぽいけど……。
――――壱の封印は解かれた――――
洞窟全体から響くような、そんな声が聞こえた。
どうやら聞こえたのは私だけでないようで、全員が辺りをキョロキョロと窺っている。
――――あと二つ、封印を解除せよ――――
感情がないような無機質な声色で語りかけてくる。
――――名を刻め、盟約に従い望みを叶える――――
「お、おぉ!!」
響く声にハリウッドメガネが喜色の声をあげる。
「僕だ! 僕の名はクリフォード セイレーン。アナタを解放する者だ」
――――名を刻め――――
「僕の! 僕の運命力を上げてくれ!」
――――名を刻め――――
メガネの願いは、声には届いていないようで、名を刻めの言葉を繰り返す。
なんだろね……。胡散臭……。有りがちというか……ソレっぽい台詞を吐くじゃん。
願いを叶えるかぁ……。次は壺でも買ってくれってか?
まぁ、魔法のある世界だからね。本当にそういうこともあるのかもしれないね。
「そうか……まだ声は届かないか。テレサ、私の名前を教えて上げてくれ」
「……ッ!」
ほう、幼女ちゃんならそう言う事もできるのか。巫女だから神様に言葉を伝える事ができる……みたいな?
ハリウッドメガネの言葉に怯えを見せた白髪幼女は、光る玉に震える手を向ける。おっと、私もソレらしいポーズ取っとくか。
よし、片足上げてアイドルっぽいポーズとかどうよ?
「……テレサB?」
「あ、これ巫女の正式なお祈りポーズなんで邪魔しないでね」
「……斬新だね」
これ言われたら何も言えんよね。
「……グス……グス」
「まぁいいさ。僕の願いを叶えたらお母さんも面倒みてあげるから……しっかりね」
「グ……ス………………」
そして、光の玉から小さな光が分離すると、ハリウッドメガネの体に向かって飛んで行き、体内に吸い込まれる。……よく分からんけど、名を刻んだって事かな?
――――封印はあと二つ、名を刻め――――
その言葉で光の玉も消えていった。
「ふふふ、もうすぐだ……」
ハリウッドメガネは上機嫌なもよう……。
封印を解いたら願いを叶えるかぁ……。ハリウッドメガネはそれで運命力とやらを上げたいと……。
その封印を解除する為に白髪親子を狙ってたって訳だね。
なんだよ運命力って。
「おや、テレサB……運命力が気になるかい?」
あ、教えてくれんの? 浮かれてんなぁ。
まぁ聞いてみましょ。
「まぁテレサには必要ないものだけどね……」
なんだ今の表情、イラつき? 嫉妬?
「一般に知られている事じゃないさ。世の中には生まれ持った運命力、あるいは存在力と呼ばれるものがある」
なんかフワッとした表現だね。
「運命力の高い者は長命になりやすく、異能も発現しやすい……そう解の巫女のようにね」
ふ〜ん……変態殺人鬼や豚貴族も運命力が高かったりするのかね?
「そして僕の運命力は……並だ……」
結局さぁ。長生きしたいってことでいいの? とりあえず野菜食えば?
「テレサも知っての通りこの遊園地トワイライトにはある神が封印されている」
知らんけど?
「昔からある遊園地を僕が買い取ったのはその為さ。感応性の高い者には声が聞こえるらしいね。封印を解けば願いを叶えると……僕は運命力を上げる為に封印を解くことにしのさ……」
なんかコンプレックスありそう……。まぁ分かったよ。その噂話にすがったって訳ね。まぁ魔法のある世界だから信憑性はあるんだろう。
むしろここまでするんだから高い確率で叶えられるのかもね。
「強固な封印をどうするか随分と悩んだけどね……僕の弟が解の巫女と結婚したと聞いてね。協力してくれて僕は嬉しいよ」
協力(強制)ですね。というか白髪ママの事を妹とか言ってたけど、ハリウッドメガネは旦那の兄ってことか。
「噂には聞いていたけど、他者の魔力に干渉できる能力……極めて稀有な存在だ……」
嬉しそうでなにより。
というか聞いてみたら割と単純な話でこっちはびっくりだよ。つまりお前は『我に力を……』って行動原理でいいわけね?
まぁコイツにしか分からん意地やコンプレックスがあるのかもね。それは幼女ちゃんに見せた嫉妬の顔からも判断できるよ。
私がいくら下らないって言っても、本人にとっては大切な事なんだろう。私は尊重するよ。
それにしても神様ぶった天の声みたいなヤツ……有りがちな台詞吐いてたねぇ。
私達は帰り道の洞窟を抜け、ミラーハウスから園内に出た。
「……またいるよ」
そうしたら目の前にうっすらと透けているドレス女の幽霊が立ってた。
しかも……今度はガラス越しじゃなくて裸眼で見えやがる。
幼女ちゃんをチラ見してみると、やっぱり見えているようで視線を地面に向けていた。
でも私達以外にドレス女が見えているヤツはいないみたいだね。
というか私はなんでガラス越しじゃなくて見えるようになったんだ?
まぁうん……本当は分かってる。封印を一個解いたからだろ。つまりコイツがハリウッドメガネの願いを叶えてくれる神様ってことだね。
ドレス女は私と目が合うと、ニッコリと笑った。
ところでハリウッドメガネさぁ……。
ドレス女の笑った口は吊り上がる。三日月を描く口は耳元まで裂け、酷く醜悪な笑みへと変わった。
「マトモに願いを叶えてくれるような顔してないけど……いいのかね?」




