安心と信頼のセキュリティ
「封印を解きに行こうか……テレサーズ」
「ウィッス! 頑張りましょ!」
「……グス……」
さぁやってまいりました! 三日に一度の封印解除のお時間です!
うん、来ちゃったよ。というかぶっちゃけ疲れたよ……。白髪幼女のご機嫌取りにさぁ……。
おかげと言っていいかは分かんないけど、白髪幼女においては少しだけ落ち着いた模様。でもこの子ね……なんも知らんのよ。追加で分かった情報はなし!
ここに何も知らない無力な幼女二人が誕生しました。
そんなこんなで、封印解除の為に遊園地に連行されてます。なんか護衛増えたね……二人に増えたから護衛も二倍かな?
ハリウッドメガネはチラリと私達二人を見ながら、頭痛を起こすように頭を押さえている。
どうしたの? 具合が悪いなら二人で頭を撫でてあげようか?
「ぴッ……」
いつものミラーハウスに歩いていたら、横を歩いてた白髪幼女が変な鳴き声をあげた。どったの? しゃっくり?
「……」
幼女ちゃんは、フラフラと視線を彷徨わせたあと、表情を固くして地面を向く。
ん〜、なにそれ? 新しい遊びとかじゃないよね?
幼女の視線を追っても地面があるだけ……。
う〜ん? あれ……この反応って……。
私は幼女ちゃんから視線を外して辺りをキョロキョロ見渡す。護衛と目が合った……あ、どーも。
これじゃない。……あったガラスだ。
「…………あ、いるわぁ〜」
おい、ドレス女の幽霊いるじゃん……。
お前、封印解除の日は近づかないんじゃなかったのかよ。
ドレス女は白髪幼女の顔を覗き込むようにしている。
もしかして幼女ちゃんさぁ……バッチリ見えてたりする?
私がガラスを凝視していたのを不審に思ったのか、護衛がガラスを見る。そして首を掲げていた。
「……いやぁ、可愛いお人形ッスねぇ」
「……」
ガラスにディスプレイされている人形で誤魔化す。
どうやら護衛には、ガラスに映るドレス女は見えてないらしい。
私には何かに反射したドレス女は見える。そして護衛には見えていない……。そして白髪幼女はドレス女そのものが見えてるってこと?
巫女ってスピリチュアルな存在が見えるのかね? 巫女っぽいじゃん。役に立たなさそうだけど……。
まぁ、歩いてたらガラスに映る存在をいつまでも認識は出来ない。無視して目的地まで歩く。付いてきてるかどうかは知らん。
そして、いつものイタチ像に到着。
「さぁテレサ……たち……頼んだよ」
「ぴっ……グス……グス」
あ〜あ〜、また泣き出した……。ようやく最近落ち着いてきたのに。
どうやら白髪幼女はハリウッドメガネが苦手のようだね。……というか完全に怖がってる。トラウマレベルだ。
あ〜……ちょっとよろしくないね。
私の計画としては、封印を解いているフリをしてたわけだけど、幼女ちゃんはそんな事できないよね。
フリができないという訳ではなく、封印を解けというハリウッドメガネの言葉に逆らえないんだ。
子供の恐怖心ってのは簡単には拭えない。経験のない負荷に未熟な精神が耐えられないんだ。
こういった特定の相手に対する恐怖心てのは厄介なんだ。損得を抜きで言いなりになってしまう。
これを克服するのは大人でも難しい。ましてや子供の白髪幼女が克服できるものではない。
「早めに……頼むよ」
念を押すようなメガネの言葉に、白髪幼女は顔を青くして像に歩みを進める。
「テレサB……キミも……」
「はいは〜い。了解でやんすぅ」
私は幼女ちゃんの横に立って、イタチ像をいつものように光らせる。さて……。
チラリと幼女ちゃんを見てみると、像を光らせている私に不思議そうな顔をしている。しかし、ハリウッドメガネの視線に怯え、慌てて像に手を伸ばす。
ほのかに、幼女ちゃんの両手が光を帯びる。そして瞳は赤く輝き始めた。
う〜ん、これが封印を解くってヤツなのか……。私の石像イルミネーションに負けず劣らずの演出だね。
幼女ちゃんの両手からは光のエネルギーのようなものが形を作る。それは糸が絡まったような光る毛玉のようにも見えた。
それを解きほぐすように幼女ちゃんは手を動かしていく。
「う〜ん……」
よく分からんが、このままだと封印ってのは解けるんじゃないかね? そもそもさぁ……封印て解けたらどうなんの?
まぁ、たぶん良くない事が起きるんだろうよ。なんせ白髪親子が逃げ出してきたんだから。
今までなら封印を解くフリをして、時間を稼ぐだけだったから良かったんだけど……。このままだと幼女ちゃんが封印を解いちゃうねぇ……。
「はぁ……どうしようかねぇ?」
幼女ちゃんに封印を解くフリだけしろって言ってみる? 無理だよねぇ……さっきも言ったけど、幼女ちゃんに逆らうことなんてできないよ。
しかたない、せめて牢屋に戻ったら幼女ちゃんに封印を解くとどうなるか聞き出さないとね。
それによって今後の私の行動も変わってくる。
幸いな事に、封印を解くって作業は時間かかるモンだと思われる。しかも幼女ちゃんの負担も大きいらしい。
それは3日置き、三十分くらいしか作業をさせない事からも窺える。
つまり……時間はあるんだ。
ピシッ……
「……」
「……」
「……ピシッ?」
え、なに今の音? えーっとぉ……イタチ像にヒビが入ってますけど……幼女ちゃん……お前なにした?
幼女ちゃんは赤く光る瞳で、光の毛玉から糸でも引き抜くようにスッと手を引く。
ピシ……ピシ……
あ〜……幼女ちゃんよぉ……。キミってもしかして、封印解除系の才能に溢れてる天才だったりする?
イタチ像はサラサラと砂のように崩れ落ちてしまった。
はい……時間が足りない事が発覚しました。幼女ちゃん、まさかの十分で封印解除です!
「……随分と早かったね」
ハリウッドメガネが複雑そうな顔で、私の顔を見てくる。あまりにも早すぎて、ニセモノっぽいはずの私の封印解除が逆に信憑性を帯びたようだ。
今まで進めていたから、とうとう封印が解けたみたいな感じに見えたらしい。
しかし封印が解除されたのはまずいか? いったい何が起きる?
「あと二つだね。二人とも今日はもう休んでいいよ。また三日後だ」
「……」
あっぶね……。封印は三段階認証だったらしい。




