メンタルブレイクなら得意なんすけどね
「えーっと……状況の説明ってできるッスか?」
「……グス……売られた」
お〜う、U RA RE TA 簡潔な説明どうもありがとう。
売られた、とな? 誰にと言われれば豚貴族になんだろうけど……。
「売られたってのは何でか分かるっすか?」
白髪幼女は涙を流しながらも首を振る。
まぁ、豚貴族の考えなんか分からんけど、事情は知らされてないか……。子供に言っても仕方ないと思ったか?
「グス……今からお前を売るって言われた……お母さんがいない時に連れて行かれて……」
「それは豚貴族に言われたの?」
「怖い、太ったおじちゃん……ゆるさぬ」
「……」
豚貴族で間違いなさそうだね。
「他に豚おじちゃんから言われなかったすか?」
「……ズズ……」
白髪幼女は鼻を啜りながらも、思い出そうとしているようだ。
「キサマに……任せる」
「……」
これは……。
「伝えろって……言われた」
「……誰に伝えろって言われた?」
再び首を横に振る白髪幼女。
おいおい、もうちょっと情報を伝えとけよ……。子供に伝言を頼んだ所で怪しいと踏んだか? 豚貴族のヤツ子供を舐めすぎだろ。
子供嫌いそうだからなぁ。子供の記憶能力に期待してないんだろうけど。まぁ自分の子供が出来損ないだからそんな評価なのかもしれん。
よし、少し整理しよう。
まず白髪幼女が豚貴族から売られたという言葉。つまり幼女ちゃんがここに居るのは、豚貴族の意思という事で間違いない。
捕まったんじゃなくて、豚貴族の行動だ。
つまり、何らかの理由があっての事だろう。……そして本当に売られたってのはない。
ハリウッドメガネは保護したなんて表現をしている事から豚貴族とメガネの間にやり取りはなかった。つまり豚貴族に利点なんてないんだ。
豚貴族の考えは分からんけど、予想できる状況としては2点。
一つは『そうせざるをえなかった』
これは充分に有り得る。最悪を避ける為に、幼女ちゃんを捨て駒にするのはいかにも豚貴族の考えそうな事。
もう一つは『豚貴族の策略』
こうなると私には読めなくなる。偉い奴の策略なんて分かるか。というかコレは少し私の願望も入っている。
状況は良くなってるって事だからね。
『そうせざるをえなかった』は事態が不味くなったから。『豚貴族の策略』は反撃の準備が整ったと考えてもいい。
次に『キサマに任せる』の言葉。
これはもしかしなくても……
「私に言ってるんだよなぁ……」
任せるって……そりゃあ白髪幼女でしょ……。
豚貴族は、私に白髪幼女を任せるって言ってんだよなぁ。
いや、なにすりゃええねん。護衛か? だとしたら無理だぞ。メンタルケアなら母親に当たれ、私だとブレイクしかできん。
まぁあれだ……。なにはともあれ豚貴族には追加の報酬を要求するわ。
――――――――――――――――――――
「アナタは何を考えているのですか!!」
領主館にて白髪ママことメイルンは、目を血走らせて豚貴族の胸ぐらを掴んでいた。
「何を考えているかだと? 説明したではないか」
本来なら不敬だと言うところだが、豚貴族は上機嫌でニヤニヤした笑みを浮かべる。
「それは断ったでしょう!」
「おやぁ? そうだったかな?」
すっとぼけた豚貴族の態度に、メイルンは頭に血が上り平手を向けたが、豚貴族はそれを予想していたかのように避ける。
「ふはは、ワシは言ったはずだぞ。過程はどうであれとな! 安心しろ最終的にはキサマら親子の幸せは保証してやるわ」
「だからと言ってテレサをわざと引き渡すなんてどうかしています!」
白髪幼女を引き渡したのは豚貴族の策略だ。しかし、メイルンはそれを了承しなかった。
豚貴族は一度は折れたふりをしたが、メイルンの目を盗んで作戦を決行したのだ。控えめに言ってゲスのような男だ。だがそれは豚貴族にとって褒め言葉も同然である。
「はん、あの若造はキッチリと叩き潰してやる。それにはこうするのが一番手っ取り早いのだ」
「……」
ワナワナと震える母親は食いちぎらんばかりに豚貴族を睨みつける。
「ぐふふ、いいぞ。その表情だ。その感情を忘れるな。それが娘を助ける原動力であり、ヤツを叩き潰す剣となるだろう」
「アナタはッ! 最低です! テレサにもしものことがあったら私はアナタを許しません!」
「最低で結構、それに巫女の娘なら心配いらんだろ」
「何を根拠に!」
「あっちにはアレがいるからな……どうにかするはずだ……合流できたらな」
「……あの少女の事ですか?」
「まぁな。それより今からキサマには予定通り動いてもらうぞ。今から面談だ。そして夜には飽きるほど手紙を書いて貰うからな」
「……」
豚貴族はニチャっと笑うと舌舐めずりをする。
「あの小娘が上手く時間を稼いだおかげで、繋ぎを作る時間がとれたわ」




