レアカード二枚だぞ。喜べよ
「朗報だテレサ! お母さんに会えるよ!」
「はぇ?」
誘拐メガネが珍しく昼間にやってきたかと思えばそんな事を言ってきた。
……お母さん? 白髪ママか!
え? どゆこと? 白髪ママ捕まったのか?
何しとんねん豚貴族!
「えっと……詳しく……」
「ははは、嬉しくて混乱しているのかな? 実は数日前に捜索員から連絡があったんだよ。解の巫女を保護したってね」
豚貴族のところに居たはずの白髪ママが見つかったのか?
おかしいな……青色制服は街に誘導したはずなんだけど……怪しまれて領主館を探されたか?
「どうしたんだいテレサ? 嬉しくないのかい?」
「お、おぅ……嬉しいッスよぉ」
いかんいかん。今の私は白髪幼女だったわ。母親に会えるって分かったら喜ばないと怪しいね。
とはいえ……ちょっと納得がいかないな。わざわざ私が時間稼ぎをしていたってのに……捕まったら意味がねぇだろ。
「えーっと……ママさんはどこに居たんすかね? 無事だったりします?」
心配する振りして情報を引き出すか……。誘拐メガネも上機嫌だから不審に思わんだろ……たぶんね。
「ふふふ、安心していいよ。僕が聞く限り怪我はないそうだ。お母さんは結局、キミを攫った悪い貴族の屋敷にいたらしいね」
「……」
あれ、これやばいか?
「情報が入ってね……捜索員からは、街に逃げたって聞いてたからね。一応、別で動いていた人員に確認に行かせたら発見したらしい。間違いなく解の巫女だそうだ」
「へ、へ〜……」
ポロポロ情報吐くじゃんコイツ……。
待て待て、ちょっとおかしいぞ……。なんで母親だけなんだ? 白髪幼女の方はどうした?
「……」
高笑いを続けるハリウッドメガネを尻目に、考えを纏める。この状況……明らかにおかしいよな。
あり得そうな事から考えていくか……。
まず一番あり得そうことから……『豚貴族が白髪ママを売った』はい、あり得そう〜。
……いや、ごめん。見た目で判断し過ぎだね。豚貴族なら全然有り得るけど、たぶん違う。何故なら豚貴族に利点がないから。
わざわざ引き渡すなら最初から匿わない。
次にあり得そうな事と言えば『豚貴族がミスった』というか普通に考えたらコレ。ハリウッドメガネはコレだと思ってるはずだ。
他にも状況が変わったからとか考えたらキリがない。豚貴族が白髪ママを売ったってのも、これを考えたら有り得る。
「……」
もう一つ……実はコレが一番高い確率だと思ってるんだけど『豚貴族の罠』ってどうかな……。うん、しっくりくる。
それに白髪ママが捕まったって聞いて焦ったけど……。
……案外悪くないぞ。
今回の私のミスは、情報を白髪親子から聞かなかった事だ。情報が足りなかった。そのせいで、私としては時間を稼ぐという消極的な行動しかできなかった。
何をすれば正解なのかが分からなかったんだ……。
でも白髪ママが捕まったと言う事なら……きっと私の元にやってくる。そうすれば何が正解なのか、情報の共有ができる。
「どうやらお母さんが到着したようだ」
ハリウッドメガネが報告を受けて、和かに笑いかけてくる。……勝った気でいるんじゃねぇぞ。
「待たせてすまなかったねテレサ。もうお母さんと引き離されないように僕が気をつけるからね」
それ逃がさねぇって言ってるよな?
「到着したようだ……さぁ入って来てくれ。感動の親子の対面だ!」
牢屋の扉が開かれる。誘拐メガネはまるでショーを開催するかのような大げさな動きで扉を示した。
そして、青色制服に連れられて白い髪の――。
「う、グス……グス……」
幼女ちゃんが現れた……。
「……」
「……」
「グス……グス……」
娘の方じゃねぇか!
どうゆう事だよ!
あれちょっと待ってよ。白髪幼女が捕まって……白髪ママはどうした? 二人とも捕まったか? 私が偽物だと気づかれてたのか?
……だめだ! 混乱して考えが纏まらん!
私はギギギっと誘拐メガネの方に視線をやる。これ控えめに言っても偽物だってバレてたって事だよな。
ヤバくね?
「……」
ハリウッドメガネはニコニコ顔のまま、メガネを外してキュキュっと拭いている。
そして幼女ちゃんを見て、私を見る。
あれ? コイツまさか……。
「はっはっはっはっは!」
誘拐メガネがイキナリ大声で笑い出した後に、大きく息を吸い込む……。
「なんかダブった!!」
トレーディングカードみたいな言い方してんじゃねぇ。白髪幼女のレアカード二枚だぞ。喜べよ。
つか、お前も知らなかったのね。
「な、な、なんだ! コレは!」
すっげぇ混乱してる。まぁ当たり前か。
そういや、なんとかの巫女を保護したって報告。母親の方だって言ってないもんな……。
「うぇ!? えぇ……」
なんど見返しても幼女二人だよ。
頭抱えちゃたよ……。
気持ちは分かるけどねぇ……。ここに娘の方がいるんだから、捕まえたって聞いたら母親の方だって思うよなぁ……。
「……」
「……グス……グス……」
「うぅ……なんでだ! なんでだ!」
控えめに言って……阿鼻叫喚ですな……。




