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幽霊は自慢したい


 人気のない夜の遊園地で、あるアトラクションの明かりが灯る。

 その遊具は、一人でに動き出して、誰もいない園内で寂しく起動し始める。


「うっせぇ、もぅ慣れたわ……」


 は〜い、どうも私です。

 最近の夜の日課、遊園地の散策のお時間です。


 3日置きに開催される石像イルミネーションも三回目を終えたよ。ここに来て十日以上経ったけど……正確な日数は覚えてない。

 いや、日付とか分からんと何日たったかって覚えてられないもんよ?

 

 封印を解くという名の、ただの石像イルミネーションの日以外は遊園地の散策に当ててるんだけどさ、毎日私が通りかかると何かしらのアトラクションが反応するんだよね。

 怖いよね〜、明らかに私を狙ってるんだもん。

 でもね……もう慣れたんだよ!

 

 毎回毎回、『このアトラクションとかどう?』って感じて起動してくんのよ! あんなのは偶にやるから怖いんだよ! 同じやり口で驚かされても怖がってあげられないよ!

 どうせガラスとか見てみたら私の後ろにドレス女がいるんだろ?


「ほらいたわ!」


 保護者みたいな立ち位置でドレス女が付いてきてたわ。なんか私を見てケタケタ笑ってる。

 

 何が面白れぇんだよ……。いや、笑うのはちょっと怖いからやめてくんね?


『……ザッザザ……――……――……――――――――!?』

「うふぃ〜!!」


 急に隣の販売機が起動して心臓が跳ねる。


「ちょっとバリエーション加えてきた!」


 成長する心霊現象ヤメロ。


『――――――――――――!?――――――――――――――!? ――――――――――――――!?』

「繰り返すのはダメでしょ……」


 機械から狂ったように流れる音声って、なんでこんなに不気味なんだろうね。


 やばい……相手しなかったらドレス女の心霊現象が露骨になってきやがったわ。


『――――――――――!?』

「分かった! 分かったから! じゃあドリンクお一つ下さいッス」


 たぶんドリンクの自動販売機みたいなもんだろうから、ドリンクはいかがですか……みたいなこといってるんだろ?


 ガコン……


「あ、本当にくれんのね」


 言葉が通じてる訳じゃないんだろうけどね。いま言語理解の能力外してるし。単純にボタンを押したからだろうね。


「……なんか押したもんと違う飲み物出てきたんだけど……馬鹿にされてる?」


 まぁくれるんなら貰うけどさ……。あ、結構イケるねこれ。

 まぁ、ドレス女もこれで満足だろ。どっか行け。


 たぶんこのドレス女なんだけど、園内にいる間ずっと私について回ってる訳じゃなさそう。園内をある程度回ったらアトラクションが起動始めるからね。


 私を見つけてから付いてきてるって感じ。そして石像イルミネーションの時には出てこない。


「う〜ん……私が一人の時を狙って現れてる?」


 まさか領主館で私が豚貴族にやってたことが、まるまる返ってくるとはね……。


「まぁでも……違う……」


 私は必要最低限、見つかりたくなかったからそうしただけなんだよ。対してドレス女の方はと言うと……ハリウッドメガネが存在を認識してるっぽい……。

 

 確かに封印解除の時は出てこなかったけどね。泉の反対側のアトラクションが起動してたんだよ。

 それを見てハリウッドメガネが「どうやらご機嫌のようだね……キミを歓迎してるんじゃないかな?」って言ったんだ。


 つまり遊園地の幽霊は周知の事実だったりする? もしかして白髪親子が狙われているのと、ドレス女は関係があるのかも? ダメだ分からん。情報が少ないね。


「こんな事なら白髪親子に事情聞いとくべきだったわ……」


 深く関わりたくないとか言ってたけど、ここまでガッツリ関わっちゃうと聞いておけば良かったと後悔。


 まぁドレス女にかまけててもしょうがない。私の仕事に戻るか。


「出口オッケー」


 今は夜で塞がれてるけど園内の正面ゲートの場所は把握した。脱出のときはここも念頭に入れておこう。

 まぁ、見晴らしがいいから使うかは分からないけどね。選択肢は多い方がいい。


 そろそろ牢屋に戻るか……。


「おい……私は戻るんすけど……」


 帰ろうとしたらジェットコースターが起動した。

 乗れってか? やだよ。何があるか分からんもん。


「……」


 分かったよ……。無視しようとしたら色んなアトラクションがギコギコ言い始めたわ。一回乗ったら納得するかね?


 ジェットコースターの座席に乗ると固定される……。ちょっと早まったか?


 ジェットコースターは最初の坂をゆっくりと登っていく。まぁ別に絶叫系が苦手じゃないからいいんだけどね。安全は確保してよね。


 そして天辺まで登り切り高速でレールを降り……。


「止まってんじゃねぇよ……」


 はい、なんか頂上で止まりました……。スタッフさ〜ん止まりましたよ〜。


「どうすんだよこれ……」


 いやまぁ最悪、霧化で抜け出して降りればいいんだけどさ……無責任じゃない?

 そんな事考えてたら泉の城がライトアップされた。


「お〜綺麗だねぇ」


 ……で?


 何がしたいの?


 そしたらうん……コースターがゆっくり後ろに下がって行くんだけど。せめてジェットコースター堪能させてくんない?


 お試し試乗とか車じゃねぇんだからよ。


 搭乗口に戻ったらアトラクションも沈黙した。


 もしかしてさ……。



「おい……お前城を自慢したかっただけか?」


 


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