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知らないお連れの方


 スキマから廊下を見渡す。

 ふむ、真夜中だからか人通りはないね。

 慎重にスキマを張り巡らせながら、行動出来る範囲を広げていく。ときおりホテルマンみたいな人が通りかかるが、豚貴族の屋敷で慣らした私の潜伏能力なら問題ない。


「脱出できそうな場所は三ヶ所か……」


 一つはエレベーター……でもコレを使用するのは悪手だろうね。隠れる場所もないし、あまりにも目立つ。

 

 もう一つは扉の先にある階段。従業員用の通路なのか、豪華な廊下とは違って質素で飾り気のない折り返し階段。でも一本道すぎて見つかるリスクが高い。


「となると……最後のところかぁ」


 そこは廊下の突き当たり。扉の先にある外に通じる扉だ。鍵がかかっているようだが、私のスキマの能力なら何も問題ない。


「あーなるほど? 建物の外に付いている階段になってるのか」


 非常口なのか何なのか知らないけど、建物の横に剥き出しの階段が設置されてる。

 まぁ剥き出しっていっても折り返し金属製の階段で落ちる心配はないけど。


「う〜ん、この階段降るの大変だぞぉ……」


 なんせ今いる場所って地上から十階以上、上の階だからねぇ。


「めんどくせぇ……」

 

 カツンカツンと音を鳴らしながら三階ほど降って諦めた。子供の体で一々降ってられるか!


 私は、階段から身を乗り出して支柱に捕まる。


「人に見つかったら危険だって怒られる事間違いなしだね」


 でも安心して欲しい。そんなモノは私に関係ない。


「レディセット!」


 ジェットブーツを起動して、支柱に抱きつくようにしてジェットブーツをくっつける。


「……ゴー!」


 キュルキュルとローラーが回転して凄まじい勢いで視界が上に飛ぶ。

 そして地面近くになったら逆回転。


「シュタッとね」


 はい、自前のジェットブーツ式エレベーターの出来上がりだよ。ジェットブーツはスピードさえあれば、重力を無視できる特性があるから、それを活かした方法だね。


「いいね、これ帰りも同じ方法で登れそう」


 つーことで、探索の開始!

 わざわざホテルの正面玄関に向かう愚行は犯さないよ。ホテルマンに見つかるかもしれないからね。

 あのハリウッドメガネの立ち位置と、影響力がどれだけかは知らないけど、白髪幼女の姿を見られるわけにはいかない。


 遊園地の方角を目指して、舗装された道路から外れ、植木の向こう側へ。しばらく進むと三メートルほどの塀が見えたのでジェットブーツで越える。

 塀の柄がメルヘンなので分かりやすい。


「夜の遊園地いぇ〜い……」


 はい、はっきり言って不気味です。

 取り敢えず手近にあった案内版を見てみる。文字は読めなくても絵で描かれた園内の地図は何となくわかる。


「なるほど……中央の城が立っている湖を囲んで、三つのエリアに別れてるのか……」


 まぁ、園内をグルッと回ってみるか……。

 舗装された通路をジェットブーツで滑走する。おお、過去最高の滑り心地だ。


 段差のない通路……バリアフリーってやつか。それに地面のガタガタもほぼ無い。こりゃ気持ちいいわ。


 湖の外周を回るように園内を見回っていく。店員のいないフードコートや、お店なんかもあったけど今はどうでもいいか。


 よく分からん遊具もあったけど、どうやって乗るんだろうね。あまりちゃんとは見てないけど、取り敢えず一周してきた。


 そして人心地付いた私は、メリーゴーランドの前にあるベンチに座り腕を組む。


「ふ〜む、至って普通の遊園地だ……」


 中央のお城は気になるけど、湖に掛かってる橋を渡らないと行けないっぽい。でも途中の跳ね橋みたいなモノが上がっていて通れなかった。


「今の能力じゃ超えられないねぇ……」


 たぶん昼間なら跳ね橋も下がってるんだろうけどね。


「取り敢えず今日は牢屋に戻るか?」


 まぁ、園内を一周回っただけじゃ怪しい所も発見できなかったし。


 ゴゥゥン……


 そんな事を考えてたら、妙な音を感じた。いや、しっかりとした音という訳じゃなくて、僅かな振動というか……ボイラーの起動する音というか。


「ッ!」


 急に昼間のように明るくなって、身を固くした。

 ベンチの後ろにある。メリーゴーランドの明かりが付いたようだ。背後に明かりが付いた事で、私の影が通路に伸びる。

 

「……いったい何事よ」


 急に起動したメリーゴーランドは、お客さんを乗せてもいないのに一人でに回り始める。チャラチャラと軽快な音を鳴らしながら、知らないキャラクターたちが踊るように回る。


「……人が近づいたから起動した?」


 いや、それなら今までのアトラクションが起動しなかったのはおかしい。私は一応、ジェットコースターの座席に座ってみたりもしたからね。


 周りを視線だけで見渡すと、メリーゴーランド以外の遊具は沈黙したままだ……。


 私の存在が誰かにバレたか? いや、人に見つかったつもりはないんだけど……魔法のある世界だから確証もないね。


 そして、私は、正面にあるお店のショーケースを見て口が引きつった。

 ショーケースには明るくなったメリーゴーランドの光が反射して、その手前のベンチに座る白髪幼女の姿も映っている。

 もちろん白髪幼女に化けた私の姿なんだけど……問題はその隣に――。


 

 ――女性が座っている事だ――

 


 もちろん私の隣に女性なんて座っていない。

 でも……ショーケースに映ってる私の隣にはいるんですよねぇ……。

 

 ドレスを着た女性は園内の雰囲気にマッチした服装だとは思うが、お客さんの服装とは違う気がする。どちらかと言えば園内の演者さんのようなドレスだ。


 反射した姿だから顔までは分からないが、ガラスケースの女性と目が合った気がした。


 すると、口が笑みの形に変わった……。


 ガラスに映る女は、隣に座る私に手を伸ばそうとする。


「に……」


 私はジェットブーツを起動して……。


「にゅおおおおおおおお! で、でたああああ!」


 一目散に逃げ出した。


 本物の幽霊がでるとか聞いてませんよ!

 

 



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