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コンテニューは受け付けない



「でんでんでんででんでんででんでん!!」


 走る。

 最高にイカれた光を放ちながら。自分を蹴り飛ばしてくれた憎き仇敵目掛けて、少女は走る。


「でんでんでんででんでんででんでん!!」


 プレジールヴィイはゾクゾクと肌の産毛が逆立つような感覚を覚え、狂気の笑みに顔を歪ませた。


「ククッ!! おもしれえ!! すぐには潰れんなよ!!」


 そう言って人差し指を、発光しながら自身に向けて猛ダッシュしてくる少女に向けた。

 そして一発、指先から魔力弾を撃ち放つ。


 真っ直ぐに少女へと向かった魔力弾は直後に少女に着弾し、土煙をあげた。

 並の人間なら体が砕けてもおかしくない威力だ。


「でんでんでんででんでんででんでん!!」


 しかし、少女は止まらなかった。

 土煙を突き抜け、尚も変わらぬスピードで駆ける。


「はは、嘘だろ! どんな小細工だよ」


 今度は両の手を向けて魔力弾を撃つ。


「でんでんでんででんでんででんでん!!」


 止まらない。


「おい……」

「でんでんでんででんでんででんでん!!」


 特大の魔力弾を連打する。


「……なんだそりゃ……」

「でんでんでんででんでんででんでん!!」


 止まらない。

 力ではなく、まるで突進という概念を宿したかのような違和感。


「はは、嘘だろ……良い加減にしろよ」

「でんでんでんででんでんででんでん!!」


 いくら攻撃しても少女の走りは止まらない。

 その事にプレジールヴィイは苛立ちを覚えた。


 何度攻撃しても、すぐに土煙の中を突っ切って、真っ直ぐで射抜くような少女の瞳が現れる。


「何だよその目は!!」


 まるで効いていないと言われたようで、苛立ちが募る。


 そしてついに少女は、プレジールヴィイの眼前まで辿り着こうとしていた。


「ザコが!! 調子にのるんじゃねえ!!」


 プレジールヴィイは石橋を砕く膂力をもって、少女の顔面目掛けて思いっきり拳を叩き込んだ。


 少女の首が跳ねる。

 ここでようやく足が止まった。



 ――――――――――――――――――――――



 ガバスとクロートザックの親子対決は、当初の拮抗とは打って変わって一方的な物となっていた。


 息子は素早い動きで切り掛かり、豚貴族はその場から一歩も動いてはいない。


「はぁ……はぁ……」

「……ふん」


「……なん……で」


 汗だくの息子が困惑と焦燥を浮かべながら、ガバスに切り掛かる。


「……軽いわ……」


 息子の剣を弾く豚貴族には焦りもなく、酷く簡単な作業をこなすような顔をしている。

 剣を受けた腕が痺れたのか、馬鹿息子が顔を歪ませる。


「ようやく調子が整ってきたところだ。まだまだヤレるよな? ザックぅ」


 ニタァと悪者の笑みを浮かべながら、今度は豚貴族の方から切り掛かる。


「うッ! クッ!」


 それを精一杯という顔で防ぐが、受けた体は流され、痛みは体に蓄積されていく。

 その事実に馬鹿息子は歯をガチガチと鳴らし、顔を青ざめていた。


「どうした……怖いのか? 命を取られるのがそんなに怖いか?」


 豚貴族の攻撃は徐々に回転を増し、威力を上げていく。


「覚えておけ……安易に敵を作ると言うことは、やり返されるリスクもあるのだ……」

「う、う、うおおおおおお!」


 玉砕覚悟のように馬鹿息子は切り掛かった。


 その剣を豚貴族は……


「ところでザック……」


 剣を持っていない方の手で受け止めた。


「お前……」

「あ、あ……」


 持っていた剣を無造作に投げ捨て、空になったその手をゆっくりと上へと持ち上げる。

 息子にはその姿が巨大な怪物のように見えた。


「母さんの墓に挨拶はしたのだろうな?」

「あ、う、」


 クロートザックは答えることができない。

 豚貴族は持ち上げた手を握りしめる。

 その拳は人の頭ほどの大きさを持って、『拳骨』の形をなした。


「この……」

「うああああああああ!!」



「馬鹿息子が!!!!!」


 大地を揺るがす一撃は、石の床にクロートザックの頭を起点にして、蜘蛛の巣を張ったようなヒビ割れを作り上げた。



 ――――――――――――――――――――――



「でんでん……でんででん……」

「ッ!?」


 見ていた。

 少女は拳により首を跳ね上げられ、上を向いた状態でプレジールヴィイをギョロリと見ていた。


 その目は少しも怯えなど感じておらず、見下すようにただ真っ直ぐに男を睨みつけていた。


「な……クッ!」


「でんでんでんで……」


 クワッと少女の目が見開く!


「デンデンデンデデンデンデデンデン!!」

「う、うおおおおおおお!!」


 何故、死なない? 何故、砕け散らない?

 何故、怯えない?


 何故、その目がイラつく?


 プレジールヴィイは気付きつつあった。


 ついに自身の元までたどり着いた少女を止めようと、そして体を突き飛ばそうと小さな肩を掴む。


「デンデンデンデデンデンデデンデン!!」


 ガリガリとプレジールヴィイの踵が音を立てる。


「デンデンデンデデンデンデデンデン!!」

「ふざけるなぁぁああ!」


 ガリガリガリガリと少女に押されて、足を支える石畳が捲れ返る。

 電車道のような跡を残して、石橋を押し切られる。


「うおおおおおお!!」


 止まらない。何をしても止まらない。

 あり得る訳がなかった。これはもう、体重が重い軽いの問題ではない。

 強者であるはずの自分が、小さな少女の突進を止めることすらできないのだ。


 理不尽なイラつきに少女を睨みつけるが、

 

「デンデンデンデデンデンデデンデンデンデンデンデデンデンデデンデンデンデンデンデデンデンデデンデン!!」


 そんなプレジールヴィイの眼力を、知ったことかと言わんばかりに睨み返される。


 今まで、自分は強者との戦いを数多くこなして来た。

 その中には僅かだが、自分より強くて撤退を余儀なくされたこともあった。


 だが、そんな時でさえ、これほどのイラつきは感じなかった。

 いや、正確には今感じているこれはイラつきなんかではない。


 プレジールヴィイはようやく気づいた。


 強者でもなく、弱く矮小な存在の少女に負けるという『恐怖』だ。


 久しぶりの感情で忘れていた。恐怖をイラつきと勘違いしてしまっていた。

 認めることが屈辱だった。


 自分(強者)が、少女(弱者)に『恐怖』した。


「デンデンデンデデンデンデデンデン!!」

「うおおおおおおおおおお!!」


 二人が作り出す電車道の終点は迫っていた。

 奇しくもプレジールヴィイが作り出した、橋の崩壊地点だ。


「デンデンデンデデンデンデデンデン!!」

「…………〜〜!!」

「デンデンデンデデンデンデデンデン!!」

「…………クソが!!」


 絶対強者である彼は、この世で最も弱者であると思っていた存在から、逃げ出した。


 少女の体を振り払い、背を向ける。

 迫った橋の崩落地点を飛び越える為ジャンプした。十メートルほどの幅など彼にはあってないような物だ。


 屈辱に身を焦ながらも、逃げるという選択をしてしまった。


「チクショウが!! この借りは……」


 

「でんでんでん……」

 


 空中で毒づいたプレジールの近くで、いや上の方から少女の囁き声が聞こえた。

 引き伸ばされた感覚の中、ゆっくりと振り返ったプレジールヴィイの真上に、少女が両足をそろえて飛び上がっていた。

 目が合った。


「うおあああ!!」

「デデン!!」


 空中で顔面にドロップキックをされた暗殺者は、崖の下に翼をもがれたかの鳥ように蹴り落とされた。


 プレジールヴィイを蹴り飛ばした反動で少女は、橋まで帰還し、スチャっと着地する。




「ゲームクリア……コンテニューは受け付けないッスよ」


 


 


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― 新着の感想 ―
[良い点] 神回 [一言] デンデンデンデデンデンデデンデン!
[一言] 評価:★★★★★ コメント: 正直なところ、あらすじでもどんな内容なのかいまいちイメージしずらい感がしたものの、わざとらしい媚びがあまり感じなかったので読んでみたら何これめっちゃ良いじゃない…
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