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抜け出す準備とイケメン息子



「ん〜……たぶんここだ」


 いやね、ここから居なくなる準備が整ったんだよ。基本的には厨房に忍び込んで食料の確保。

 ココから脱出して一番困るのは食料だと思うのよ。

 あとお金も少しだけ失敬させてもらおうと思ったんだけど見つかんねぇし、そもそも金を見た事がないから分かんなかった。

 まさか完全に電子マネーに移行してるとかじゃないだろうね……。


 しかたないから、金になるかもしれない宝石の類いを幾つかスキマに放り込んでおいた。


「でも宝石はなぁ……換金できるか怪しいんだよねぇ」


 この世界でも貴金属に価値があるのは分かっているから、換金所みたいな所は存在するだろうよ。


「身元不明の子供が利用できるならね……」


 うん、結局はコレに尽きる。

 ある程度文明の発達したこの世界で、子供が貴金属を捌けるとは思えないんだよなぁ。そもそも盗品だし。


「どこかで働けるならいいんだけど……子供だとそれも難しい」


 これはこの世界の文明が発達していなかったとしても当然のようについて回る問題だ。


「あのヤンキー神、本当に厄介な事してくれたよ……的確に私を苦しめやがる。まさに神の一手だわ」


 宝石は最悪のときの交渉材料にしかならないね。例えば命乞いとかさ。


 となるとやっぱり食料一択だなぁ。


 ここから出たらスラム街的な所を探して住み着くのが第一候補だね。目立たず情報収集が目的だ。

 

 もしくは今みたいにひっそりと金持ちの家に住み着いて物を盗む妖怪みたいな存在になるか。


 そう考えるとやっぱり、この世界に来てすぐに囚人の身分になったのはラッキーだったんだよね。


 本当ならもうちょっとこの世界の常識を知ってから抜け出したかったんだけど。


「流石に豚貴族の身の回りが不穏過ぎる……」


 それさえなければかなり快適な生活だったんだけどね。暗殺者うんぬんと関わり合いになるのはゴメンだよ。



 抜け出すのは今夜にでも決行しようと思ってるんだけど。


「最後に豚貴族の息子とやらのツラを拝ませてもらうおかなと思ってね」


 豚貴族にクリソツだったら絶対に笑うわ。

 まぁ豚貴族の息子なんだからデブで馬鹿に決まってるけどね。よし、馬鹿息子と呼ぼう。


 という訳で、豚貴族と馬鹿息子の会話を盗み聞きしてみたいと思います。

 

 場所は大体予想ついているんだよね。

 話し合いをするなら応接室でしょ。それらしい部屋はいくつか見当が付いている。

 その中でも、最近掃除された跡のある部屋が怪しいと思っている。掃除されている……つまり近々利用する予定があるってことだからね。


「あとはこの部屋にスキマを作って待機しておけば、盗み聞きできるでしょ」


 これで全然違う部屋だったら笑えないね。


 さて、スキマを作れそうなところは……結構あるね。

 応接室だからかな、椅子やテーブルはもちろん調度品なんかも充実しているからスキマの作成に困らないね。


 とりあえずキャビネットにスキマを作成。あと念のために灯りと壁の間にも作っておこうかな。


 ―――――――――――――――――――――――


 スキマに待機して結構時間がたったけどなかなか来ないな。これは部屋を間違えたかな?


「豚貴族の息子がやってくるのは今日のはずなんだけどなぁ」


 メイドの話を盗み聞きしたから間違いないはず……。


 スキマの空間の中で懐中時計を確認すると、すでに待機して二時間が経っていた。


「お、来たか?」


 二人の男が部屋に入ってきた。豚貴族では無いみたいだね。



「父上はどうでますかね。ヴィイ君、キミはどう思います?」


 ソファーに座った男はそう切り出す。

 

 ん〜もしかしてコイツが豚貴族の息子か?

 なんというか、本当に豚貴族の息子かと疑うほどイケメンだな。穏やかそうな顔でどちらかといえば王子様みたいな顔をしてるね。

 いや、よく見ると顔のパーツ一つ一つは豚貴族に似てるかも。

 


「くく、どうだろうな? まぁ交渉が成功するにしても決裂するにしても……いいんだろ? ……殺しても」


 そう返すもう一人の男はコート姿で長身の男。グラサンなんかを掛けて軽薄そうな笑みを口に浮かべている。


 あ〜、こいつ暗殺者だわ……。コート姿のヤツは暗殺者なんだよ。私知ってる。

 コイツ、アレだろ……。豚貴族が言ってたイカれた殺人鬼ってやつ。名前は覚えてないけど、いかにも人殺すのが楽しそうな顔してるもんな。


 命を狙ってる息子と殺人鬼が仲良く訪問とか、殺意高いわぁ……。

 これは豚貴族終わったな。


 二人を観察していたが、運ばれてきた紅茶には手を付ける様子がない。


 毒殺とか警戒してんのかね?


「ふん、待たせたな……クロートザックよ。歓迎はせんぞ」


 豚貴族が二人の護衛を伴って入ってきた。

 お、面倒臭がらずに護衛は付けてきたね。えらいえらい。


 話し合いが始まるね。



 これを見届けたら今晩に抜け出すとしよう。


 精々私にも楽しい話をして下さいね。




 

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