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豚と少女の醜い会話


「ハァ……ハァ……ハァ……」


 疲れた……敵対者に追われながらの全力疾走がこんなにも疲労する物だとわ。

 今はバリケードで時間稼ぎできているけど、長くは持たないんじゃないかな。それは分かってるんだけど身体が休息を求めているんだよ。少しでも体力を回復させようと大の字で寝転ぶのも許してくれ。


「ぶふぃ……ぶふぃ……おいキサマ。どうやって牢屋から逃げ出した。しかも喋れるのを隠しておったな……」


 汚ねえ吐息の豚貴族が、汗だくの顔で忌々しげな表情を作る。そんなに息を切らせて運動不足なんじゃないかな? 私を含めてな。


「へへ、お貴族様ぁ。硬いことは言いっこナシですよ。言葉も隠してた訳じゃなくて最近喋れるようになったんで……」


 これは本当、探偵ファーマルのゲームを進めたことで得たエネルギーを使い、喋れるようになったのはつい最近だ。しばらく黙ってたけどね。

 まぁこの状況で迂闊に豚貴族とも敵対するつもりは無い。精々下手に出ましょうかね。


「それより何ッスか? あのコート男たち。なんで歩いている癖に引き離せねぇのよ」

「チッ……あれは奴らの特殊な歩行術だな。追跡に特化した技だったはずじゃが……アヤツめ、依頼料をケチりよったな」


 私の質問に答えるというより、状況を把握する為の独り言のようだ。

 しめしめ、この豚貴族も私を相手にしている場合じゃないらしい。この状況を打破する為に思考を巡らせているな。

 命を狙われている事に随分と慣れてらっしゃるようで。


「助けは来ないんですかねぇ?」

「すでに呼んでおる……十分耐えれば夜勤の兵が宿舎から到着するが……」


 顎に手を当てながら考え込む豚貴族。本来なら私の質問など答えないだろうに、よほと追い詰められてるな。


「つか護衛とかいないんすか? 貴族なんでしょ?」

「領主館に詰めていた奴は、出火した施設に向かわせた」

「はぁ? 馬鹿じゃねぇの?」


 どう見ても囮作戦に引っ掛かっとるがな。


「な、なんだと! キサマァ、殺されたいらしいな!」


 やっば、思わず本音が出ちゃった。

 豚貴族は寝転んでいる私に手を伸ばそうとして、苦しそうに顔を歪めると俯いた。

 はは、体力の消耗が激しいらしいな。腹が立っても動く気力が湧かないか。


「全員向かわせたんスか?」

「もう黙れ! チッ……夜勤中でも休憩時間に寝ている奴はいるだろうが、気付かぬだろうな」

「あん? どしてよ?」

「平民の家じゃないんだぞ。休憩室から此処までの距離では音を立てても気付かぬよ。そして休憩室には連絡装置が置いていない」


 置いとけよ。いやよく考えたら寝ている場所で叩き起こすような装置は置かないか。

 

「いや兵士を向かわせる前に、寝てる奴を叩き起こさせろよ」

「……だ」

「はい?」

「……さっさと見に行ってこいと怒鳴りつけたんだ……」

「死ぬの?」

「うぐっ……」


 あ、この豚貴族、バカだわ。

 こんなバカの為に私まで身の危険に晒されてるとか溜め息でるわ。


「なんで暗殺者なんて差し向けられてるんです?」

「ハンッ、心当たりがあり過ぎるな!」


 偉そうにしてんじゃねーよ殺すぞ。


「じゃがまぁ、今回に関しては分かっておるがな」

「へぇ、誰なんすか?」

「なぜキサマに答える義理がある?」

「殺されかけてる以上に義理……必要ですかね?」


 そもそも分かってるなんて言葉を聞かせるぐらいだ。聞いて欲しいんだろ? 面倒くさいオッサンだな。


「……息子だ……」

「そりゃ出来たお子さんですね。わざわざお金払ってゴミ掃除とは」

「ついでに目撃者も掃除してくれる、いい業者を選んだようだな」

「……」


 ふざけんな。一人で殺されろ。


「親を息子が殺そうとするなんてアンタ何したんだよ」

「ハンッ! 何をした……か? ハハッ、何でもしたぞワシは」


 あー殺されて当然って訳ね。そして自覚もあると。

 マジでゲス野郎じゃん。


「ひひひ、そういえば息子の惚れた女が気に食わなかったから実家に嫌がらせをしたかのう?」


 おおう……何で誇らしげなんだよ。貴族の間では悪事トロフィーでも集めるのが流行ってんのか?


「んで、惚れた女を守る為、暗殺者を雇われたと。ここで死んどいたほうがいいんじゃない?」

「不正を告発するだけじゃ飽き足りんかったらしいな。あの馬鹿息子は!」

「不正までしとったんかいこのクズは……いっそ清々しいよ」

「なに、真っ当な貴族なら普通だ普通、がははっ」


 なんで楽しそうなんだよ。やっぱ集めてんのか悪事トロフィー。


「さて、そろそろじゃな」


 豚貴族がヨッコイショとでも言いたそうに膝に手を当て立ち上がる。

 

「え? なにが?」


 轟音を立ててバリケードが吹き飛んだ。

 飛来する破片が顔の横を通り過ぎる。


「な、なんだぁ!?」


 爆弾でも使われたの? いや爆発はしてないけど! 吹き飛んだぞ!

 扉のあった場所に大穴が空いていた。


 その向こう側には手の平を向けているコート姿の男が二人。


 えーっと、もしかして魔法とか使いましたかね?


 何気にこの世界で魔法って見てないんだよね。

 やべ、ちょっとワクワクしてる。


 でも出来るなら私に向けないでくれると嬉しいです。

 

 


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