ショータイム
どーも私です!
さあやっちまったぜ、この状況。
私達の周りに浮かぶ幾つかのモニター。はいぃ……ハイテンション町長が、見たことないようなサイコパス笑顔を浮かべながら首斬ってる瞬間ですわ……。
しかも幼女ちゃんたら何回もその殺人シーンをリピートしてやんの。
いやヤベェよ……思ったよりバッチリ映っとるやん。
「…………あーはぁあ? …………ふぅぅん」
一か八かだったけど、やっぱオメーじゃねぇかクソがっ!
ハイテンション町長は片手で顔を覆いながら、空を見上げる。隠されてその表情は分からないが、声色は随分と落ち着いているようだ。
さぁ、お前はどうする?
ハイテンション町長……いぃや、亡霊デュラハン。
「……なるほどなるどぉ」
顔を押さえていた指の隙間から、町長の怪しくひかる眼が私達を捕捉する。
そして、手では隠しきれなくなったように、口が笑みの形に吊り上がった……。
こ、こえぇ〜……。
あ、あの……今更なんだけど……全部無かった事にしませんかね?
「…………ようやく……キミたちを殺せるかなぁ」
ただの小さな独り言……町長は誰に訊かせるでもないような、そんな小声で呟いた。
駄目みたいッスね!!
あーあ、こらアカンわ。
つってもね……元よりこっちも無かった事にする選択肢はないよ。だってお前、どうせ私達のこと殺すつもりだったろ……。
「さて町長様。このモニター見て何か言うことあります?」
「アーハー? そうだね」
私のそんな言葉に、町長は顔に当てていた手を退けると、笑顔を見せた。
それは……まるでいつもの、おちゃらけた町長そのもので、それが余計に悍ましさを感じる。
「よぉ〜く出来たフェイク映像だねぇ〜アーハー! アッハッハ!!」
フェイク? フェイクねぇ……。
この期に及んで誤魔化すつもり……じゃねぇなコリャぁ……。
町長は、ニコニコ笑いながらも、手で長剣を弄んで楽し気に肩を竦めている。
認めてる。
いぃや、もやは隠すつもりなんてない。そんな顔だ。
「でも教えてくれないかなぁ……なんでキミたち、僕が亡霊デュラハンだと分かっ……アーハーおっとぉ、亡霊デュラハンだと思ったのかなぁ?」
ドロリと溶けるような、まるで泥が滴るような目でコチラを見据える町長の顔は、普段のおちゃらけた顔の下から確かな狂気が見え隠れする。
へぇ……私達のお遊びに付き合ってくれるんだ?
お優しいじゃない……それとも余裕の表れかな?
……好都合だよボケが。
「アーハーキミたちさ〜。最初に会った時からずっと……ずぅ〜っと僕のこと警戒してたよね〜? なんでかなぁ……」
最初に会った時ねぇ、ソレって……
「私達が首無し死体を路地裏で見つけた時ッスかね?」
「そうそう! んーん、あの時亡霊デュラハンに狙われていたキミ達を、偶然通りかかった僕のお陰で助かったんだと思うんだけどね〜?」
試すような笑みで顔に影を差した町長が、見下ろすように首を捻る。
「バリバリ胡散臭い登場しといてソレ言います?」
「アーハー! これは手厳しいね〜! でも……キミたちはあの時、僕を警戒しても殺人鬼だとは思ってなかったはずさ」
「違うでしょ? 『偶然通りかかった』のは町長じゃないッスよ」
「んん〜〜?」
「偶然通りかかったのは『私達』と、そこで縁日の金魚みてぇに死にかけてる『変態殺人鬼ニーサン』だ」
「…………」
「亡霊デュラハンが殺人を犯したすぐ後にねぇ?」
「アーハー……なるほど、キミの主張では順番が逆なのか〜。でもソレ、わざわざ出てくる僕って馬鹿みたいじゃない?」
肩を上げて、しょうがないなあとばかりに、鼻から息を吐く。
「アンタ心配だったんだよね? 私達が殺人の瞬間を見ちゃったんじゃないかってさぁ」
「……だとしたら、その場でキミを殺さなかった理由はなんだろねぇ。僕が犯人なら、その場で目撃者を殺したんじゃなあ〜い?」
そんなもん……アンタが一番よく分かってんだろ。
「ケケケッ、なるべくなら殺したくなかった……とか駄目かなぁ?」
「それはそれは、随分とお優しい殺人鬼だね。いいよ、次だ。二回目、僕は現にキミたちが襲われてる瞬間を助けたんだけど……それでも僕が怪しいんだ?」
違うよ。アンタが私達を殺したくなかったのは全部自分の為だ。
「あぁ、路地裏で追いかけ回されて、そこの変態殺人鬼ニーサンに襲われたことですね」
「………………変態やめろ」
おい、そこのファッションサイコパス変態殺人鬼……今忙しいからだぁってろっ!!
「違う違う。私達を路地裏で追いかけ回したのはアンタだよ。んで、そこの変態ニーサンの所まで誘導されたんだ」
「ん〜……ふっふっふ。何で僕が態々そんな事するかなぁ? それにそんな事できる訳ないでしょ?」
出来るよ。
「だってアンタ……どういう理屈か知らんけど、私達の居場所分かるじゃん。変態ニーサンにも同じ事してんなら、誘導出来んでしょ?」
「んーん、そうかも……ね」
「そしてやった理由なら分かるよ。アンタ、私達の信用が欲しかったんだ……」
「……」
「連続殺人鬼に追い回されて、それを助けた自分……危ない所を助けたんだから信用されると思ったんだ?」
だってコレしかないからね。
「合ってるでしょ?」
「アーハー……なんでかなぁ? 僕はずっとキミ達に『頼れる大人』『気安い大人』『誠実な大人』を演じてたはずなのに……なんでキミ達は、やればやる程……僕を警戒するんだろうねぇ? ……本当に……やりずらいよキミたち……」
お褒めに預かり恐悦至極。
「んっふっふ。別に私達もその時点じゃ、町長様が亡霊デュラハンだなんて思ってなかったッスよ」
「ならなんで、僕は信用されなかったのかな?」
んなもん……お前の行動がチグハグだからだ。
「アンタは私達に付き纏う理由に『亡霊デュラハンに対する囮』だと言った……」
「アレが駄目だった?」
「いいや、百点だよ。それはそれは私達に耳障りの良い言葉だった……でも、あんた色気だしたね?」
それだけだったら私達は納得した。そう言うもんだってさ。
「『私達に好かれようとした』! 『信用を得られようとした!』 だから私達は……アンタが何を考えてるか分からなくなった……」
「……あちゃ〜……ソレが良くなかったのかぁ〜。で、僕が亡霊デュラハンだと思ったワケだ」
「まぁ、予想の一つだね。この時点だと、町長様はただの怪しくて信用の置けない不審者なだけ」
「アーハー! 思ったより最悪の評価!!」
「まぁ決定的にアンタを疑ったのはアレだね。アンタ……」
「何かな?」
私は目を細めて町長を見ると、彼も目を細めて試すように見てきた。
「パーカー兄貴に何かした?」
「んーん…………パーカー兄貴? 誰の事かな〜?」
ハイテンション町長は顎に手を当てて首を捻ると、突然弾けたように笑い声を上げる。
「アーハー!! アッハッハ!! 嘘だよウソウソ!! エルロイド パペル君の事だよね〜!」
腹を押さえながら、さも嬉しそうに笑い続ける町長は、控えめに言っても最高に胡散臭くて……邪悪だった。
「おかしいんだよね。何でパーカー兄貴……負け犬ニーサンじゃなくて、私達を最初に襲ったんだろうね?」
パーカー兄貴の負け犬に対する執着を見たら余計に違和感がある。私も確かに煽って恨まれてた自覚はあるよ。
でもやっぱりおかしいんだ。
アレほどイカれた行動とってたパーカー兄貴が衝動のまま行動せずに、私達にやってきた。
衝動のまま行動するなら、負け犬に真っ先に向かうのが正しい。……なんで私達に最初に来た?
「そしてもう一つ。アンタ……しつこいくらいに私達の居場所が分かってる癖に……あの時は助けに来なかったよね……なんでかなぁ?」
町長は楽し気に『ンーフーンーフー』と言った後、何でもないように口を開く。
「健気だよね〜〜……彼。僕ね家名がバベルって言うんだ……そして、彼はパペルなんだよ? 似てるよね。僕に憧れて、家名まで似たのに変えたのかな〜?」
町長はまるで狐の妖怪ように、クシャっと顔を歪ませて、ニィアアアと笑う。
おぉう……楽しそうで何より……。
「そんな憧れの僕に冷たくされて、あまつさえオリバー君に話しかける……ショックだったんだろうね〜?」
ハイテンション町長は右手を上げて、私達に手のひらを見せてくる。その指には緑色にひかる指輪が嵌められていた。
「アーハー、これね。ダンジョンから偶に発見される遺物なんだ〜。抵抗力の弱いものの意識を少〜しだけ誘導できるんだよ」
「……ふ〜ん、それでパーカー兄貴を嗾けたんだ?」
催眠術みたいなもんか?
「んーん、勘違いしないでね? これってそんなに効果強くないんだよ。特にエルロイド君みたいな強い子にはね。だ か ら 僕が何かやらなくても彼はいつか同じ事してたんだよね〜!」
町長は楽しそうに腹を押さえて笑う。
なるほど、パーカー兄貴の疑問を答えてくれてありがとさん。
違和感あったんだよ。
パーカー兄貴はイカれた異常者なのは間違いない。でも、アイツはそれまで普通の冒険者を装ってきていたんだ。少なくとも同じパーティーメンバーにバレずに。
つまり自分が異常者という自覚があったにも関わらず、一般的な感性も持っていた事になるんだ。
それなのに、パーカー兄貴はその日のうちに行動を起こした。
おそらく町長の言ってることは間違いないんだろう。
いつかは同じ事をやっていた。それが今すぐかどうかに変わっただけ……。
でも、それは間違いなく町長が何かをしたって事なんだろう。
「キミ達にも困ったもんだよね〜……本当ならさ〜、もっと追い詰められて死にかけたくらいに助けに入って、僕に感謝する予定だったんだけどね〜。自分達でなんとかしちゃった。……ほんと上手く動いてくれない困ったチャンだ」
やれやれと芝居がかった仕草で首を振る。
「つまり、本当にもう口ですら隠すつもりがねぇんだな?」
「んーん、どうだろぅ〜ね〜? それより君たちこそ分かってるんだろうね? オリバー君も言ってただろ? 『他人の不正を暴いてもロクな事がない』ってさ」
……上等だよ。
「『汝……亡霊デュラハンなりや?』」
私の宣言に、ハイテンション町長は堪らないとばかりに、笑みを浮かべる。
「『み と め る』」
さあ、ここからは賭けだ。
――――――――――――――――――――――
「ンハ〜〜ッハッハッハ!! アーハー、認める!! 認めるよ〜!!」
町長は狂ったように笑い声を上げると、ケタケタと笑いながら長剣を弄ぶ。
まるで私達に見せつけるように。
「そうだよ〜!! 僕がッ、僕こそが『亡霊デュラハン』だッ!! アーハーッハッハ!!」
「……知ってる」
「まさかだよ!! まさかキミ達みたいな子供にバレちゃうなんてさあ〜!! お笑いだよね!! 最後だったんだよ!? それなのにキミ達に殺す瞬間見られちゃったんじゃないかってさ〜!!」
「……不安だった?」
「全部ッ!! 全部キミの言う通り!! 不安だったんだよ〜キミ達に見られちゃったんしゃないかってさ〜! そんなことないって思おうとしても、キミ達全然僕のこと信用してないから焦ったよね〜。どっち? ってさ〜ハッハッハ!!」
嬉しそうに笑う町長は、泥のような瞳をギョロリと向けると、顎髭を弄りながら口を開く。
「プレジールヴィイ君はちょうど良かったんだよ。最後に僕の罪を全部被ってもらって、彼の首を切るつもりだった」
「あ〜……その変態ニーサンね。亡霊デュラハンじゃねぇだろうなって思ってたからね」
これも町長を疑った理由の一つ。
「ん〜なんでかな〜?」
「だって町長様、ずっと悲痛な思いで亡霊デュラハン追ってたっていったけど、たぶんソイツがクロックシティーに来たのって最近ッスよ」
なんせ私達が会ったのは最近、豚貴族の屋敷だ。
それから変態殺人鬼はこのクロックシティーに逃げてきた癖に、町長は長年追ってたんだってさ。
……じゃ亡霊デュラハンってコイツじゃねぇじゃんよ。
「アーハー! そこかぁ〜……キミたちクロックシティーの外で出会ってたんだ〜。人選ミスだね〜。最後だから気が抜けちゃった!」
それから一通り笑った町長は、長剣の切先を私に向けると寂し気に呟く。
「キミ達もさ〜馬鹿だよね〜。大人しく待っとけは良かったのに……態々殺されに出てくるなんてね〜」
嘘つけ……。
「どうせ殺すつもりだったんでしょ?」
「んーん、そうだよ。いい加減見たかどうかも分からない子供に悩ませられるのもウンザリだったしね。キミ達が悪いんだよ」
悪くねぇわボケ。
どちらにせよ私達を逃す気なんてなかったんだよコイツ。なんで亡霊デュラハンなんて演ってたかはわからないけど、全部変態殺人鬼に押し付けて扱いに困った私達を殺すつもりだったんだ。
「僕のこと信用してくれれば殺さなかったかもしれないのにさ〜」
これは……どっちか分からんな。でもどちらにせよアンタを信用する未来なんてなかったんだよ。
「アーハーハー、本当馬鹿だね〜。せめて人がいる時にこの映像を出せば……少しは僕に仕返し出来たのにね〜?」
「違うね……今しかなかった」
「ん〜?」
「人がいる時だとアンタに殺されてた……」
コイツにはそれが出来た。
自分の人気を気にするお前はそれだけは許せなかったはずだ。
いくら怪しかろうが、町長にはそうするしか出来ないから。
苦しい言い訳になろうが、バレるよりマシだろうからね。そしてコイツには有耶無耶にできる実績がある。
クロックシティーにおいて、それだけの人気と信用がコイツにはあるんだよ。
「だから……今しかなかった」
「ん〜ふっふっふ。本当、僕の考えてることよく分かるね。そうだよ。これだけの証拠もってたんじゃ衝動的に殺しちゃってた……だって僕、町長だもの」
そう、このタイミングでなければ、おそらく映像が流れる瞬間に提示すら出来ずに私達は殺されてたんだ。
だから今しかなかった。
「もういいかな? 十分キミ達には驚かされたし、焦らされた……驚愕だよ。たかが子供にここまで汗をかかされたの初めてだね」
そう言って町長は、剣を見せつけるように構える。
「キミ達を舐めてた。誇っていいよ。間違いなく君達は僕を追い詰めた存在だったよ」
クシャリと顔を歪めた町長が、泥のような瞳で笑う。
「んっふっふ。この期に及んで生き残る気はないんでしょ?」
「それはどうッスかね」
私は背中に冷や汗を掻きながら、平然と振る舞うように笑う。
「無理だよ、誰も助けに来ない。いや、助けに来たところでキミたちを守れる存在なんてクロックシティーにいないんだよ」
「……」
「キミたちバイラールファミリーや教会から逃げ回ってるでしょ? 知ってるかな〜、エルテ嬢と祈りの巫女」
知ってるよ。化け物だろ? ……あぁ、アンタもか。
「僕ね〜……『彼女達より強い』からね〜」
え? マジで言ってます?
ゴメン、一回最初からやり直しません。
荷物まとめて逃げるから。
……まぁ、無理だよね。
だってコイツ、私達の居場所分かるんだもん……。
「キミたちを救ってくれる存在はいないよ? あぁ、そう言えば亀様かイタチ様くらいなら、何とか出来るかもしれないけどね〜」
あぁ、あの爺さんとヒョロ長女か……。
「でもあの二柱もこないよ。キミ達、何したのか知らないけど……『町長に任せる』って言ってたしね〜。アレってそう言うことだよ。随分と嫌われてるね」
もとより知らん化け物に助けられても困るわ。
「じゃあ、突如不思議な力で覚醒した君たちが、僕をボコボコにするってのはどうかな? アーハー無い無い!」
「無いかな?」
無いでしょうよ。
「アーハー、夢見がちな少女らしい妄想だね〜! 最後に少しだけ可愛いところ見れて良かったよ。……それじゃあ……」
町長の目が怪しく、鈍くひかる。
「ばいば〜〜い……」
これは賭けだ。
町長が神速のスピードで踏み込む。
その長剣は吸い込まれるように、私の首を目掛けていた。
「……………………は?」
そして、次の瞬間に私の目に映ったのは。
「あ……え……何これ? えぇ……?」
ワケが分からないと言った表情で膝を突き、口から血を流す町長の姿だった。
「ひっひっひ」
私の口から、引き攣ったような笑い声が自然と漏れる。
「あひゃひゃひゃひゃ」
「ぬひひひひひひひひ」
私達は賭けにかった……。
「「アヒャヒャヒャヒャヒャ!!」」
ケタケタ笑い出した私達を、町長は呆然とした顔で見ていた。
「勝った!! 私達は賭けに勝った!! アヒャヒャヒャ!!」
「ヌヒヒヒヒヒヒヒヒヒ! ……勝った勝った」
――――――――――――――――――――――
何が起きたのか分からない……。
ケタケタ笑う少女たちを見ながらも、町長は自分の手を見る。
震えた手にポタポタと、口から流れた血が垂れる。
「………………え?」
立ちあがろうとして、足に力が入らない。
「…………なんで?」
「おいテメェ……やってくれたな……」
もしかして……自分は殴られたのか?
自分に投げかけられる男の声……プレジールヴィイ。
彼はボロボロの体で、拳を振り抜いた姿勢で睨みつけていた。
彼に殴られたのか?
「……えっと……なんで?」
もう死にかけのはずの彼の拳が、ここまでの威力を発揮するわけがない。
……なら、コレはなんだ?
「アヒャヒャヒャ!! 不思議? 不思議だね〜!!」
待ってましたとばかりに、長髪の少女が笑い声を上げながら自分を嘲るように見てくる。
「答えは突如覚醒した変態が助けてくれる〜…………な訳ね〜だろバァ〜カ!」
じゃあ何でこうなっている?
なんで何でナンデなんで……。
「「アヒャヒャヒャヒャヒャ!!」」
笑う幼女達に、町長はゾッと血の気が引く。
「アーハー……意味分かんない……」
震える手と足。
間違いなくプレジールヴィイの拳が効いていることを訴えてくる。……ありえない。
そして……
「…………アーハー……まさか……まさか……ねぇ」
あり得ない想像をして、町長は誰でもなく。
遥か彼方の空を見上げる。
「そうだよぉおぉおぉお?」
「ッ!」
地獄の底かは這い出るような少女の声にビクリと、体を震わせる。
「あんたスゲェよ! 嘘ばっかりのアンタだけど一点だけ!」
「……いっかんして誠実だった!」
「突然覚醒して強くなる? 無い無い。じゃあなんでしょうねぇ? 答えは決まってるよね」
「ヌヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!!」
「……ねぇ……キミ達……嘘だよね?」
考えうる限り最悪で、そしてあり得ない状況に、町長は苦笑いをしながら幼女達に問いかける。
幼女達は、町長のそんな顔を気持ちよさそうに眺めると、子供が浮かべてはいけないような酷く悪辣な顔をする。
「「アヒャヒャヒャヒャヒャ!!」」
そして、その悪魔のような幼女達は、ビシッと両腕を上げるポーズを取った。
それはよく見るポーズであり……自分がよくするポーズ……。
「イィイーーーッッツ!!」
長髪の少女がハイテンションに、大声でそう叫ぶ。
そして、同じポーズを取っていた白髪幼女がコテリとクビを捻った……。
「…………しょーたいむ」