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人気者は身バレのリスクを背負う

本日二話更新 こっちは二話目



「アーハー! ごめんね〜、サインは今度あげるからね〜」


 町長宅の前でファンに絡まれるハイテンション町長。

 

 と言っても悪い気はしていないようで、ファンのみんなにも陽気に対応している。

 

 それを少し離れた場所から眺める私と幼女ちゃんは、ため息を吐いてそれを眺めていた。

 

 どーも私です。


 路地裏で亡霊デュラハンに襲われた私たちは、寸前のところでハイテンション町長に助けられました。

 まぁデュラハンには逃げられちゃったんだけどね。


 それから町長宅に向かったワケなんだけど、町長宅の前まで来たら沢山の人集りが……あれよあれよと言う前にファンに絡まれた町長は疲れた顔一つ見せずに対応している。

 私たちからすると胡散臭くて喧しいオッサンだけど、市民からの人気は本物のようだね。


 たぶん、町長としての人気というよりは配信者(ストリーマー)としての人気なんやろな。


 クールでイケメンというよりは、コミカルで親しみやすいのがウケてる感じなんかね。


「……どうする?」

「どーしようかねぇ?」


 そんな感じでファン対応に必死な町長を眺めていたら、町長宅の裏口から顔を覗かせて私達を手招きしてくる存在があった。


 私たちより少しばかり年上そうな金髪の少女。

 片手には同じ髪色の人形を抱いた少女は、町長の娘だ。


 そんな金髪ちゃんがニッコリ笑って、裏口からチョイチョイ手招きをするので付いて行ったら、前回の応接室に通された。


「……町長は?」

「ごめんなさいね。対応が終わったらお父様もやってくると思うから、少し待っててね」


 幼女ちゃんの言葉に、申し訳なさそうに答えると部屋を出ていく金髪ちゃん。しっかりした子だねぇ。


 うちの幼女ちゃんも、ある意味シッカリした子だけど、それとは種類が違う感じ。


「育ちが良さそうだねぇ」

「……なんでわたしを見て言う?」

 

 キミに足りない物だからだよ?



「アーハー! お ま た せ! ごめんね〜、こないだの撮影で身バレしちゃってさ!」

「待ちましたね」

「……はよすわれ」


 三十分は待ったわ。

 どーやら、この家で撮影したものを配信したらガッツリ家の場所を特定されたらしい。

 家の前の『押しかけたファン』はそう言うことね。

 前の世界でも似たようなこと聞いたことがあるから分かるよ。有名税ってやつね。


「先ほどはどーも。さっそくなんスけど、豚貴族の情報掴めました?」

「せっかちだね〜、とりあえずソレらしい人を十人ほどリストアップしてきたから、確認して欲しいかな〜」


 そう言ってハイテンション町長は、何枚かの書類をテーブルに並べる。


「あ〜、一応非合法じゃないけど、一般には見れない資料だから持ち帰るのはやめてね」


 ここで見るだけにしとけってことね。オーケー。



「…………いねぇな」


 十人の顔写真つき書類を幼女ちゃんと見比べるが、豚貴族の写真はない。

 ワンチャン若い頃の写真かもとか思ったけど、ダメだね。さすがに若い時でもねぇ。


「んー、お目当ての貴族はいなかったかい? もしかして相当深い所にいる貴族なのかもね」


 深い所?ってのが何かは知らんけど、たぶん権力があって情報規制がガチガチの貴族ってことかな。だとしたら豚貴族はそうかもね。


「……こいつらの情報は?」


 そんな事思っていたら、幼女ちゃんが口を開く。

 どしたん? どちらにせよコイツらどー見ても豚貴族じゃないの分かってるよね?


 幼女ちゃんは、別の資料と顔写真を見比べて黙り込んでいる。

 ん〜、こっちはこっちで話を進めるか。


「パッと見、いないっすねぇ。他にリストはないんですかね?」

「う〜ん、五日で調べられるのがそれだけってだけだから、もうちょっと時間貰えれば……」


 なるほど……。

 幼女ちゃんをチラ見してみれば、読んでいた資料に興味を失ったのかテーブルの上に放り捨てていた。


「条件に合う貴族はもっといるはずだけど、時間がね〜掛かるよ」


 ふむ……。


「じゃあ引き続き探してもらう事できますかね?」

「アーハー、オーケーさ。全力で協力させてもらうよ」


 そう鷹揚に頷く町長に頷いて立ち上がり。


「たのんますねぇ。また来ますわ」


 そう言って幼女ちゃんと部屋を出ていこうとすると、町長は口に運んでいたコーヒーをダバダバ零しながら『ふぁ?』と間抜けな声を上げだ。


「ちょちょちょっと待って! 本気で言ってる? 君たち亡霊デュラハンに命を狙われたばかりだろ!」


 ええい、腰にしがみ付くんじゃねぇよ。

 つかねぇ……一応助けてもらったから口にはださなかったけどね。


「大丈夫ですよ」

「大丈夫じゃないから今日狙われたんだよ〜」


「大丈夫、大丈夫」


 だってねぇ……

 


「この街から離れたら襲われないと思うんで」

「…………」


 おや、町長の笑顔が固まったね。

 私は窓の外に顎をクイと向けてニィイイと笑う。


「随分と人気者な町長様ですよねぇ?」


 窓の外、つまりさっきまで町長のファンが集まっていた場所だ。


「身バレしちゃったってさぁ……それワザとだったりしない?」

「………………アーハー、もしかして、バレてる?」


「んふふ、初めて首無し死体を見つけた時、亡霊デュラハンは逃げた振りして、私達と町長様が一緒にいるの見てたんじゃないっすかね?」

「…………」


 助けてもらって悪いんだけどさぁ……。

 

 気づいてるわ舐めてんじゃねぇぞ。


「それ、町長様も気づいてたりしてたんじゃないッスかねぇ?」


 助けられたタイミングが良すぎるんだよ。

 そもそも、今まで襲われなかったのに、なんでこの街に到着した途端襲われた?


 答えは簡単、亡霊デュラハンには『私達の居場所』が分からなかったから。

 一番最初に亡霊デュラハンに路地裏で会ったのは、結構遠くの街だしね。

 

 でも、デュラハンは私達に繋がる人物は知っていた。

 それがハイテンション町長だ。


 私達と繋がりのある町長の身バレというか、住所がバレたってことだよね。まぁ町長は有名だからね。亡霊デュラハンも町長の顔を知ってると……。

 つまり亡霊デュラハンが町長を調べたら、居場所がバレるって寸法だ。


 あとは家の近くで張ってたらノコノコと私達がやってくるってね。


 つまり、このハイテンション町長は宣言通り私達を囮にしたワケだ。


「アハ、アハハー……」


 誤魔化すようで全く誤魔化す気のない町長の苦笑い。

 うん、別に怒ってはないよ。


 町長は宣言通り私達を囮にしただけだし。

 それをとやかく言うつもりはない。


 問題はそれを理由に私達を引き止めようとする事だ。


「と言う事で、この街から離れれば安全ってワケッスねぇ」

「待って、本当に危ないよ! ごめん謝るから。僕には君達を利用した責任がある。せめて一晩だけでも」


 私達にはアンタの責任を満たす義理がない。


「つーことでサイナラ。また来ます」


 そう言って部屋を出ていこうとしたら。



「…………いーよ。オバケ姉ちゃん一晩だけ、ここに泊まろう」


 幼女ちゃんが口を開いた。


「う〜ん?」

「……」


 何か考えがあるのかな?



 ――――――――――――――――――――――



「シッカリ施錠されてるね。私達じゃなかったら監禁だよ?」


 真夜中、ベッドの下に作ったスキマの中から這い出した私は、扉を調べて呟く。

 せっかくだから探索ついでに冷蔵庫でも漁ってこようと思ってね。


 扉の下にスキマを設置して部屋から出ようとしたら、ドアノブから歯車魔法陣が浮かび上がり開錠する。


「およ? 珍しいね。幼女ちゃんが夜の散歩に付き合うなんて」


 扉を開錠したのは幼女ちゃんだ。

 寝てたと思ったけど、彼女もスキマから出て来た。

 そういやなんか気になる事でもあるんでしょ?



「……うん、町長の調べた資料を探したい」

「一回見たやつ?」


 幼女ちゃんは私の言葉に首を横に振る。



「……違う。たぶん、町長は資料を隠してる、かのうせいがある」


 


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― 新着の感想 ―
うちの幼女ちゃんが天才かも知れない!行儀悪いけど…
情報を隠していたことよりも 知らない間に豚貴族の孫娘になってたことの方にブチ切れそう(ノ_<)
幼女ちゃんがどんどん逞しくかつ賢くなっていっている。 初登場時の儚さはもう一欠片もないっすねぇ。
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