強力な悪霊に目をつけられた!
ハーイ! 悪い子のミンナ〜!
やってきたパリピどもから、カラカラになるまで感情エネルギーを搾り取っていくゲーム!
「はじまるよぉ〜!」
お、いるいる。合計四人のパリピだね。
男女二人づつでダブルデートかな?
うん、今までパリピ達のことを、迷惑な輩だと判断してたんだけどね。
「感情エネルギーを生産してくれるなら、大事なお客さんだよねぇ」
まぁ、ダンジョンはまだ出来てないんだけど、『ダンジョンを作る能力』の試運転で轢き殺してやるわ!
いやまぁ、ホントに殺しはせんよ……。
比喩だから比喩。だから幼女ちゃん、ナイフをジッと見つめるのはやめようね?
別に私は、パリピどもに恨みなんてないし。
それにね……仮にダンジョンの能力で殺そうと思っても、たぶん無理だよ。例の如く攻撃力なんてないからね。
じゃあ何の為の『ダンジョンを作る能力』だと思う?
目的は、ダンジョンを作って人を呼び込み感情エネルギーを得ること。もっとも、正しい言い方をすれば、『既存のダンジョンのフリ』だけどね。
結局、人がいなくちゃ感情エネルギーもへったくれもないからさ。
そして、この能力は感情エネルギーの収穫に特化した能力として作ったつもりだ。
「相性良いはずなんだよねぇ……」
勘違いしちゃいけないけど、私の持つ『ゲームの能力』と『領域畑』は別の能力なんだ。
領域畑は、どちらかと言えば超越者の元の力に近い。
そして領域畑と『ダンジョンを作る能力』をリンクさせたのが今回だ。
それにより、領域畑で出来るようになった事とは。
主に『領域畑の管理』、そして『演出の強化』。
領域畑の管理……つまり空間を弄って道を繋げたり、新たな空間を作り出したりできるんだね。マップを自由に弄れるゲームにした理由はコレ。
そして演出の強化……いままで、パリピ達をビビらせる方法は妖球を使うことが多かったんだけど、ソレ以外の演出が可能になる。
覚えてるかな?
これは、一度やったことがあるんだ。
「宝石店で、ピエロ泥棒を相手にした時は楽しかったなぁ〜……」
あの時は、収穫物であるテーブルを領域畑に取り込む事で、エネルギー効率を無視したゴリ押しだった。
それを『ダンジョンを作る能力』のおかげで、再現できるんだよ。
これで感情エネルギーの大量収穫を狙う!
もちろんダンジョンを弄るのにも、演出を行うにも感情エネルギーを消費しちゃうからね。
消費エネルギーと、収穫エネルギーのバランスが大事。
「そしてもう一つ……」
ダンジョンと領域畑を掛け合わせることで、出来るようになったこと……。
『ルールの設定』と『条件の達成』
二つある? 気にすんな!
大丈夫……大丈夫。今からやってみせるから。
恐らく、感情エネルギーにボーナスが入ると思うんだよね。
ま、本格的なダンジョンってワケじゃないから、どんなことが出来るかお試しだと思って。
「そんじゃあ準備はいいね? 幼女ちゃん!」
「……むぃ」
「今回のテーマは……『なんか強力でヤバそうな悪霊に目をつけられちゃったぜ!』作戦だ」
「………………その通りでは?」
「ねぇ幼女ちゃん……キミ、私のコトなんか誤解してなぁい?」
幼女ちゃんの中で私ってどーなってんのよ……。
一回キミとはちゃんと話し合う必要がありそうだね。
私、そんなに邪悪な存在じゃないからっ!
「まったくもぉ……こんな美少女に向かって悪霊だなんて……」
「……だいぶ、おこがましぃ……」
おい、背中には気をつけろよ?
「……それで、わたしはどうすればいいの?」
「ん〜そッスねぇ、基本的に幼女ちゃんのアドリブに任せるつもりだけど……ストーリーだけ伝えておくね」
――――――――――――――――――――――
「ここかあ、いいじゃん」
「これだけ人気がないなら、騒いでも警察とか呼ばれなくていいね」
ゴーストタウンの寂れた公園にやってきた、四人のパリピ。
「ねえ……帰ろうよお〜。絶対ここ、なんかおかしいよ!」
「なに言ってんだよ。あんなん噂だって」
車を公園の外に置いて、公園に入ってきた四人のパリピ達は辺りを見渡す。
手入れが行き届いていないその公園は、設置してある灯りによって、薄暗く、そして怪しく照らされている。
「お、ベンチあるじゃん。酒でも買ってきてココで飲む?」
「やだよお〜……」
一人の男が、錆びついて古くなったベンチに腰掛けようとした……瞬間。
ザザ……
ザザ……
「え? ……いま、なにか」
視界が……いや、世界そのものにノイズが入ったような気がした。
「な、なんか……おかしくねえか?」
あえて言えば、『空気が変わった』……四人のパリピはそう感じ、ブルリと身を震わす。
カチ……カチカチ……
公園に設置されている薄暗い灯りが、断続的に明滅を繰り返す。
「ねえ……もう、帰ろうよ……」
「お、おう……そうだな……」
全員が、何か異常が起こっていることに気づいていた。だが、それを認めないようにしている……。
「……ッ!!」
「お、おい、どうした?」
「いま一瞬、あそこに何か……」
一人が明滅を繰り返す灯りに、震える指を指す。
しかし、そこには何もいない……。
気のせいだと思いたい……だが明滅の一瞬だけ、人影が灯りの下に立っていた気がするのだ。
「もぉ帰ろう! 絶対変だよ!」
「分かってるよ!」
なにかいる……
ただの噂としか思っていなかったが、この公園には『なにかがいる』ことを自覚してしまい、恐怖に襲われた。
一刻も早く、この場から離れたい……しかし……。
「あ……れ、俺たちの車が……ない?」
それは叶わなかった……。
公園の入り口に置いていた車がない。
いや、違う……。
公園を出た先の作りが変わっていた。
T字路になっていた道路は、ひび割れたコンクリートの建物が左右に立ち並ぶ、真っ直ぐ伸びる直線に……。
まるで、公園が別の場所に移動したかのようだ。
「……なんだよ……これ……」
自分たちの乗ってきた車が消えたことと、景色が変わったことに呆然とするパリピ達は……声を聞いた。
ヒヒ……
キヒヒヒヒッ……
何処から……ではない、耳の奥から響くような幼い笑い声。
真夜中の公園に居るはずもない……子供の笑い声。
何処から聞こえているかも分からないのに……全員が声の持ち主に、ゆっくりと振り返った……。
「ひっ!」
公園の中央から広がる、禍々しい……黒い霧。
揺らめく黒い霧は、まるで大量の腕を纏っているかのように蠢く。
そして、霧の蠢く地面からズズズズ……と這い出して来る長い髪。
「……あ、あぁ……」
四人のパリピは恐怖のあまり、その場でヘタリ……と座り込んでしまった。
地面から生えてきた長い髪は、少女の形をしていた。
――――キヒヒ……――――
長い髪から覗く口元が、自分たちを視認してニィイイと歪む。
そして……
キヒヒヒヒヒヒヒヒッ!!
「う、うわァァアア!!」
「キャーーーー!!」
まさに悪霊としか言いようのない存在は、自分たちに向かって真っ直ぐに襲いかかってきた。
今すぐここから逃げないといけない……しかし、恐怖で座り込んだ四人に、立ち上がらせる隙すら与えないと、悪霊の少女はやってくる。
そして、闇を纏う手がパリピ達に届く瞬間、恐怖のあまり目を閉じた。
ビキッ! ビキキッ!!
何も起きない……。
不思議に思い、ゆっくりと目を開けると……そこには自分たちの前に立ち塞がる小さい人影……。
「いったい何が……」
自分達の前に立つのは、白い髪の幼女……。
その白い髪の幼女が背中を向けて、手を前に出していた。
幽鬼のように佇む白い幼女は現実感が希薄で、もう一体の幽霊のようだと感じる。
――ギ、ギギギ……――
そして、黒い霧の悪霊は透明な壁に阻まれているようで、前に進めないでいる。
まるでその白い幼女の行動は、自分たちを悪霊から守っているかのようだ。
「……俺たちを守っているのか?」
しかし、悪霊がいっそう闇を纏って進もうとすると、ビキリビキリと、透明な壁にヒビが入った。
「ひ、ひぃい!!」
悪霊の、その暴力性の高さを感じとったパリピ達から悲鳴が漏れた。
白い幽霊は片手を上げると、何かを握るように手を閉じる。
すると、悪霊の周りに三体の動物を模った像が降ってきた。
――ギ、ギギギ――
三体の像を結ぶように結界のような壁が現れ、悪霊を閉じ込める。
「なんだよ……これ……」
突如始まった、悪霊と白い幽霊の闘いに呆然と呟くパリピ。
そのパリピ達にゆっくりと振り返った白い幼女は、公園の入り口を指差す。
その感情を感じさせない……赤い瞳にゴクリと唾を飲む。
――ナガクモタナイ……――
――オッテクル……ツカマラナデ……ニゲテ……――
口を動かしているワケでもないのに、白い幽霊から声が聞こえた。
ビキッと結界にヒビが入る。
「う、うわぁああああ!」
白い幽霊より、悪霊のほうが力が強いと感じたパリピ達はもつれる足を動かし、公園を飛び出す……。
悪霊に追いつかれないように……。
――――――――――――――――――――――
「はぁ! はぁ! はぁ!」
「なんなんだ! なんなんだよアレ!」
「もうイヤ! こんなの普通じゃないよ!」
「あの幽霊が言った通り逃げるしかねえだろ!」
ゴーストタウンをひたすらに走る四人は、涙を流しながら走る。
街の様子は変わっていないようで……決定的に違う。
真っ直ぐの道しか無いのだ。
――――キヒ……――――
聞こえる。
自分たちを追って来る、あの悪霊の笑い声が……。
「誰か! 助けてくれ!」
パリピのうちの一人が、転んで立ち上がれなくなる。
走ったことによる疲労と恐怖により、足が動かなくなだてしまったのだろう。
男は、走り去る仲間たちの背中に手を伸ばしながら絶望する。
「う、うわあああああああ!」
その最後の絶叫を聞きながらも、パリピ達は振り返る事なく走る。
「もうヤダよお!」
「止まるな! 俺たちも捕まるぞ!」
――キヒヒヒヒヒヒヒヒ――
なおも悪霊の声は追ってきていて、すぐ後ろまで迫っている気配がする。
そして、三人のパリピがたどり着いたのは……。
「はぁはぁはぁ……き、教会?」
ポツンと建てられた変哲もない教会。
しかし、どこか神聖な雰囲気があり、薄らと光っている。
教会の扉に背を預け、パリピ達は息を整える。
もしかして、ここは安全なのでは……と思いながら。
パリン……パリン……
しかし、おぞましい悪霊は、自分たちを追ってやってきた。
――キヒヒヒヒヒ――
教会に貼られているであろう、神聖な何かを破壊しながら。
「……もう、ダメだ……」
「ヤダ! ヤダヤダヤダ!」
「こないで!」
教会の前でへたり込む、一人の男と二人の女は黒い霧を纏う悪霊に追い詰められてしまった……。
そして、ゆっくりと笑いながら近寄って来る悪霊の前に……。
ソレは再び現れた……。
――ギ、ギギギ!! ジャマヲスルナァァアア――
悪霊と対をなすような白い幽霊。
そして白い髪の幽霊が手をかざすと、結界に阻まれ、悪霊が怨嗟の声を上げた。
しかし、やはり、悪霊は強大な力を持っているようで、結界にはヒビが入る。
「助けてっ! お願い! 私たちを助けて!」
白い髪の幽霊は、その言葉にゆっくりと振り返ると、教会の扉に指を指した。
――アオイタマ……ヨッツ……ミツケテ――
――トビラニ――
その言葉に、呼応するように、幾つかの光が地面から立ち昇る。
――ジカンガ……ナイ……オサエキレナイ――
立ち昇る光を見てみれば、色とりどりの球が光っているようだ。
「もしかして……青い球を見つければいいのか?」
「……見て! 扉に何かハメ込むところがある!」
――ハヤク……――
バキバキと結界にヒビが入る。時間はあまり残されていないようだ。
「……やるぞ!」
「青い球!」
「これは、違う!」
覚悟を決めたパリピ達が走り出す。
地面に散らばった球を集め、青い球を教会のハメ込む。
「あと一個!」
バリンッ!
瞬間、地響きがして、悪霊に結界が破られた。
「お願いッ!」
悪霊がその手をパリピ達に届かせる、その瞬間……青い球のハメ込まれた扉が開き、教会が眩い光を放つ。
――グッギギギャアア――
最後に聞いたのは……苦しむ悪霊の声だった……。
――――――――――――――――――――――
「あ……ここ……は?」
目のくらむ光からパリピ達が目を開いた時には、朝日に照らされた公園の前だった。
そして、目の前には車の前に倒れ込む、悪霊に捕まったはずの仲間の姿がある。
「……いったい……なんだったの?」
「あ、あれを見て」
公園の中央にたたずむ、白い髪の幼女。
その姿は朝日に照らされて、薄らと透けていた。
そして、キラキラと消えていく。
「……守って……くれたのかな?」
「分かんね」
ただ一つ、一晩の悪夢は終わったのだと感じた……。
――――――――――――――――――――――
「うぇ〜い、お疲れー!」
「……楽しかった」
まぁ、こんな風にいろんな演出が出来るってワケよ。
三体の像が降って来るところとか、カッコよくない?
ちょっとばかりエネルギー消費のデカい演出だったけどね。
超強そうな悪霊だったでしょ?
もちろん、全部見せかけの演出なんだけどね。
おかげで感情エネルギーを得ることができたよ。
でも、演出でも結構エネルギー使っちゃったんだよね。
「でも大丈夫!」
実はかなりのプラス収支なんだぁ!
カラクリは『条件の達成』システム。
そうだね。簡単に言うと、パリピ達はダンジョンをクリアしたんだよ。そのおかげで感情エネルギーにボーナスが付いたんだ。
領域畑の能力を探っていて、何となく出来るんじゃないかなぁって思ってたんだけど正解だったね。
『ダンジョンを作る能力』とリンクさせたことによるシステム。
それが『条件の達成』。つまりゲームクリア。
設定した条件が厳しければ厳しいほど、クリアさせた時のエネルギーが大量に得られる。
その為に必要なもう一つが、『ルールの設定』。
幼女ちゃんがパリピに伝えてたよね。
『追って来るから捕まらずに逃げろ』ってさ。
これがルール。
失敗したパリピの一人はゲームオーバー。外に排出されました。
最後の教会では、四つの球を集めて、制限時間内にハメ込むこと。これがルールだったね。
これの演出は、エネルギーが安いんだよ。
なんせ、スーパー妖怪殲滅2 【妖球を生成する能力】と領域畑をリンクさせたからね。
そう、私の持ってる能力とリンクさせれば、それにちなんだ演出は安く済むんだ。
領域畑とゲームの能力は別物だから、能力スロットも消費しないし。お得でしょ?
冒険者用のダンジョンに使えるかは、分かんないけどね。
「どーだった? 私のダンジョン!」
「……だからこれ……ダンジョンじゃないよ……今まで何見てきたの?」
の、能力の慣らしだから……。




