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逃亡幼女


 どーも私です。


 いや〜、どうでしたかねぇ? 私の美しい踊りは……。


 キモノお嬢も敗北を宣言して項垂れております。私の踊りに見惚れてしまったようですね。

 私が本気になれば、こんなん楽勝ッスわぁ。

 ハッハッハッ……

 

 んなワケあるかッバカヤロウ!!


 フォオオオオオオ!! 死ぬかと思ったぁあ!!

 楽勝なはずねぇだろがよぉ!! ふざけんな!


 内心、ぷるっぷるだったわ……。

 鬼畜幼女ちゃんは、無茶なステップ要求してくるしよぉ……。

 

 あ、ステップっていうのはアレね。

【VRリズム剣豪】


 まぁ、ちょいと種明かしといこうか。

 分かってるかもしれんけどね……。


 単純な話だよ。

 私にはキモノお嬢の動きが見えないから、幼女ちゃんに見てもらっただけ。

 幼女ちゃんは、キモノお嬢の動きが見えるみたいだからね。

 

 でも、幼女ちゃんが見えたからって私が見えるワケじゃないし、幼女ちゃんが避けれるワケじゃない。

 だから、見える幼女ちゃんが指示をだして、ジェットブーツのスピードを持つ私に、避けさせる必要があったんだ。


 そこで【VRリズム剣豪】だよ。

 ただのお遊び能力だけど、今回はやりたい事に合致した。


 このゲームはMODという物に、幼女ちゃんを掛け合わせることで、彼女が自由に楽譜を作ることができる。

 つまり【MODオン幼女】

 私は幼女ちゃんの作り出す『リズムゲーム』をしていたんだ。


 これで幼女ちゃんは私に指示を出してたんだね。

 いちいち口で『上』だの『しゃがめ』なんて言ってたら絶対間に合わないからね。

 キモノお嬢の『死ね』の指示に従うことになっちゃうよ……。


 まぁ金属杭の雨に突っ込め、なんて指示が来た時には、『え? マジで言ってる? 私に死ねってか……』とは思ったけどね。


 まあ、これが私の動きの正体。

 


「……つかれた」

「お、幼女ちゃん。お疲れ〜」


 幼女ちゃんが目をシボシボさせながら、歩いてきた。

 そうだよねぇ、キモノお嬢の動きを見て、私にリズムゲーとして伝える作業したてんだもんね。

 体を動かすだけの私より疲れたかもね。


「んじゃあ目的も達成したし。もう行こうか!」

「……うぇい」


 いや〜疲れた疲れた。


 


「…………待ちなさい」


「フォオウッ!」

「ぴぃ!」


 スタスタ歩き去ろうとしたら、後ろからキモノお嬢に声を掛けられた……。

 だ、ダメですかね? 何となく雰囲気で逃げようと思ったけど、やっぱ殺す気だったりする?


「……」

「……」


 ギギギギと油の差していない、錆びついたような首を回して、幼女ちゃんと恐る恐る振り返る。


「……ひぇ」


 張り付いた笑顔より、真顔の方が怖いとか何なんだよもぉ……。

 どこかダウナーな感じのキモノお嬢は、暗く沈んだような目でコチラを見ている。


「な、なにか〜?」

「……どうする? オバケ姉ちゃんが土下座する?」


 テメェはやんねぇのかよ……。


「安心しなさい。私はもう……アナタ達に手は出さないわ」

「お、マジで。ラッキー」


「どうせアナタ達もやる気なんてないんでしょ……分かってるわ。だから私は負けたのよ」

「……」


 ……そうだね。

 私たちがまだ戦うつもりなら、嬉々としてキモノお嬢は私たちを殺すだろう。

 

 けどやらない。

 ……だからキモノお嬢は敗北するしかないんだ。


 私たちのことを、殺したいほど憎いけど……殺せない。キモノお嬢にとって、これ以上の屈辱はないはずだ。

 これが私と幼女ちゃんの復讐。


「教える気がないなら別にいいわ。でも答える気があるなら教えて欲しい……なぜ、分かったのかしら」

「……」


「……なぜ私がこの選択を取ると確信できたの? 舞のプライドより、アナタ達を殺す方を優先するかもしれないじゃない。いえ、そもそも何故……少しでも私が舞を優先するなんて思ったの?」


 あ〜、そこかぁ……


「半分は勘ッスね……でも、矛盾を感じたからだよ」


 まぁ、こっちは賭けだったんだけどね……。

 予想というか願望が多分に含まれた予想だった。


 ぶっちゃけさ、キモノお嬢って無敵だと思わない?

 

 重心から相手の動きを読み、そして相手の力は合気道みたいな技で無力化。

 そして、山を消し飛ばすほどの力を持っていて、眼球に刃物が刺さらない。

 

 なにこの超生物……いや、これ生物でいいの?

 でもさ、

 

「私はここで違和感を持ったんだ……。なんで『舞』なんだって」

「……?」

 

 ただ強すぎるって一緒に考えたら分からなかったけど、舞を切り離して考えたらおかしいんだ。

 

 さんざん味わったから、朧げに舞のことは分かったよ。

 さっきも言った通り、合気道みたいに相手の力をゼロにしたり、方向を変えたりするんだろ?


「でも、アンタ……攻撃なんて効かないじゃん……」


 なんで相手の力を利用したり、無力化したりする『舞』なんていう技術を覚えたの?

 そう、技術なんだよコレ。

 舞には覚えるという過程があるはずなんだ。

 人体の構造とか、勉強みたいなこともしたかもしれない……。


 ね? なおさら分からないよね?

 オマエなんで舞なんて覚えたの?


 化け物みたいな力持ってんのに、力を使わない『舞』という技を覚えるなんて発想浮かぶか?

 なんなら力の弱いヤツが覚える技術なんじゃないの?


 まあ、もしかしたら偶々覚えようと思ったのかもしれないけどさ……私は思ったんだ……。


 もしかして、わたし風に言うとキモノお嬢は『縛りプレイ』をしてたんじゃないかってさ……。


 力が強すぎるから、何でも思い通りになってしまう。

 だから力を全く使わない『舞』を覚えよう。

 少しは面白くなるかな?


 と言っても技術だからね……キモノお嬢は舞を頑張って覚えたんだ。

 そして人外じみた力を持つクセに、力を使わない技をあれほど昇華させたんだからねぇ。

 

「そうなると、アンタにとって、それはそれは……大切な物になったんじゃないかなぁ〜……てね?」


 そう考えてキモノお嬢の今までの言動を思い返してみれば、なんとなく正解だって思えた。


「元ご主人様さぁ……舞を使って追い詰めてくる時、嬉しそうに、どうやったか説明してくるんだよね。逆に力で押し潰そうとした時は、つまんなそうに『もういいや』って感じかな?」


 舞に対するプライドがあった……。だから私はプライドを盾に殺せないようにしたんだ。

 まぁ、所詮予想だったし、キモノお嬢の本気を躱して一撃を入れるっていう、馬鹿げた難易度を超えないといけなかったんだけどね。

 

 いやマジで大変だったわ。今回は私も本気だからね。

 私の一番の能力……slit〜スリット〜を外したんだよ。

 それはキモノお嬢に対して、逃げ隠れをしないという意味を持つ。


 最後まで外すか迷ったわ……。

 

「……ふっ……言われて気づいたわ……」


 どこか投げやりに、鼻で笑うキモノお嬢は私たちに背を向けた。


「なんであんなに怒ったのか、なんで舞にプライドを持ったのか……ようやく分かった。私……舞が好きなのね」


 そういってキモノお嬢は、花びら舞い散る庭園を去って行く……。


 そして空を見上げて……誰にも聞こえないように小さく呟いた……。




 


 

「…………家がないわ」


 さっきアナタが全力で粉々にしましたよ。

 


 ――――――――――――――――――――――



「………………嘘だろ……」


 自分の目でみたものが信じられず、傷グラサンは呆然と呟く。まさか……まさか本当にお嬢を退けてしまうなんて、誰が想像できた。

 

 キモノお嬢の私邸があったクレーターの前で、立ちすくむ彼女を尻目に、幼女二人がソロ〜っと距離をとろうとしているのが見えた。

 お嬢が扇子を下ろした理由は分からないが、心変わりを危惧してだろう。


「そんじゃ改めて逃げようかね」

「……うん。スッキリした」


「ま、待て!」


 そんな幼女二人に慌てて声をかける。


「ん? おや兄さん、どうかしました?」


 振り返る少女にビクリと震える。

 目の前にいるのは、ただの子供ではない。

 どんな手を使ったのかは分からないが、お嬢を退けたのだ。

 人外同士の戦いをただ、呆然と見ているしかなかった自分には、何が起こったのかは分からない。

 だが……


「……コアを置いていけ」


 言われた幼女二人は、二人して首を捻ると思い出したかのように白髪幼女の手にある天然コアを見て、満面の笑みを浮かべた。


「嫌ですね!」

「な、オマエ! 自分の言ってることが分かってんのか! それはマフィア連合の所有物になったんだぞ!」


 しかも、自分以外の人間にも見られている。

 つまりは……


「狙われるぞ! オクトー区域のマフィアが総出でオマエらを狙う事になるんだ! 今なら間に合う、だからソレをコッチに寄越せ!」

「ん〜、幼女ちゃんが気に入ったようなんで、彼女のオモチャにしますね!」

「……興味深し」


 お嬢の存在が強烈過ぎて影に隠れがちだが、マフィアとは舐めて掛かっていい組織ではない。理由があれば、子供とて容赦はしないだろう。


「子供のオモチャにしていいもんじゃねえんだよ!」

「ふ〜ん……マフィアにとって大事な物なんスね?」


 少女はニヤァと笑う。


「だからだよ……」

「……は?」


「だから持ってくんだよね。これ慰謝料っていうか仕返しのつもりだから……キモノお嬢はマフィアなんでしょ? つまり他のマフィアの皆さんも同類だよね?」

「ッ! それ……は……」


 違わない……お嬢がやったことだろうが、少女達からすればマフィアがやったも同じ。

 ましてや、可哀想とか思っても助けようなんてマフィアはいなかった。少女達の復讐にマフィアが入るのも当然と言える。


 少女の言っていることは正しい。

 正しいが、ソレはマフィアに本気で喧嘩を売る事と同じだ。


「たのむ……置いていけ」

「はぁ……お兄さんは相変わらず中途半端ッスね。コレを持っていけば、マフィアに私たちが狙われるのを心配してるってところかな?」


 呆れたように首を振る少女に、何も言い返せない。中途半端……そうなのだろう。

 哀れに思うだけで行動は何も起こさない。

 少女たちからすれば酷く滑稽に見えるだろう。


「だってさ幼女ちゃん。これを持って行くとマフィアに狙われるんだって……逃亡生活だよ! ウケるよね」

「……片腹痛い」


「だよねー! そんなもん……」


「「いまさらなんだから」」


 声を揃えて笑う二人に薄寒いものを感じる。

 

 そうだ、お嬢は言っていた。

 きっと親は一緒じゃないと、あの二人は逃亡者だと。

 マフィア以外にも狙われているのだ。

 そのまま、楽しげに去り行く二人を止める言葉はなかった。



「……お嬢」

「あぁ、アナタね」


 屋敷のあった場所で立ちすくむお嬢に声をかければ、普段の笑みのない顔があった。


「……我を忘れて家を壊しちゃったわ。再建するまでお父様の邸宅で過ごすわ。……なんか臭うから嫌だけど」

「……へい、準備を整えます」


「……」

「……」


「……気になるの?」

「え」


 お嬢はやる気の無さそうな視線を向けてきた。


「……アナタ、あの子たちに情が湧いてたものね」

「そういうワケでは」


 朧げに分かることは、少女たちはお嬢に実力で勝ったワケではない。お嬢の心を負かしたのだ。

 それはある意味、実力で勝利するより難しい。


 だが逆を言えば、無力な子供に変わりはないのだ。

 コアを盗んだ二人に、マフィアが容赦するはずがない。それが心を重くする。


「……そんなに気になるなら。アナタが捜索の指揮を取ればいいじゃない。推薦くらいするわよ」

「……」


 自分が指揮を取ったところで何になる……。


「……ふぅん。まぁいいけど、どちらにせよ私はあの二人から手を引くから好きになさいな……」


 そう言ってお嬢は背を向けた。

 

 静かにため息を吐く。『中途半端』……ノラに言われた言葉が頭にこびり付く。

 自分に相応しい言葉だ。

 そうだ。自分はマフィアのクセに、あの二人に同情した。


「……それの何が悪い?」


 ……中途半端? なるほど、いいじゃねえか。

 それが俺の処世術だ。


 ある閃きが頭に浮かぶ。

 中途半端……突き詰めれば世渡り上手だ。自分の心に嘘を吐かずに周りを納得させてやろう。


「お嬢、あの二人。ペットじゃなくてファミリーにしません?」


 お嬢の背中に声をかける。

 そうだ、俺はあの二人がマフィアに殺されるのを防ぎたい。その為の理由が必要だ。


「……ファミリーのことならお父様に相談したら?」

「いえ、そうではなく、お嬢の直属のファミリーとして」

「……」


 心臓がバクバクと音を立てる。

 本来、そう言ったことは俺が言っていいことではない。

 落ち込んでいるとはいえ、いきなり振り返って首を物理的に切られる可能性がある。


 そして、ゆっくりとお嬢が振り返ったとき。


「……う……お」


 口から妙な呻き声が漏れてしまった。


「……いいわねソレ」


 目は糸目に細められ、奥からは怪しげな瞳が光る。

 張り付いたような不気味な笑みが、顔に張り付いていた。


「ふふ、ふふふ。初めての敗北で落ち込んじゃってたわ。一度負けたからってね。じゃあ待てば良かったのよ」

「お、お嬢?」


「あの子達が弱いから、私は手が出せない……なら将来強くなるまで手元に置けば、再戦してもいいわよね? こう言うの何て言うのかしら……そうそうノラが言ってたわね」


 キモノお嬢はクスクスと、扇子で口を隠して笑う。それはとても不気味なものだった。


 

魂 手 入(こんてにゅ〜)



 お嬢は傷グラサンの肩に手を置いて口を開く。


「いいわよ。アナタがあの二人を捕まえる指揮を取りなさい。私は手を出さないからね。その代わりアナタの好きなようにしなさい。……協力してあげる」



 ――――――――――――――――――――――




 ここは豚貴族の領主館。


 デカいソファーに腰を下ろした豚貴族が、眉間を揉みながら呟く。


「……おったわ」


 その言葉に白髪ママ、メイルン シュライン。いやメイルン アヤブドールが疑問の顔をする。


「何がですか?」

「ん〜……あ〜……うむ」


 どこか言いづらそうな、歯切れの悪い豚貴族はため息を吐く。


「……アヤツらの居場所が分かったぞ」

「ッ!! 何処ですか!! 今すぐ向かいましょう!!」


「だぁー! 落ち着かんか!」

「……すみません」


「ほれ、テレサだ」


 そう言って豚貴族はパイプ端末から映像を見せてくる。


「ああ! テレサ無事なのね」


 その映像には、闘技場のような場所で逃げるように走るテレサの姿があった。どうやら元気そうだ。


「お父様! この映像はどこで」

「あ〜うむ………………クロックシティーの……あの〜……マフィアが発行した裏の世界の『賞金首』リストで……」


「………………は?」

「う、うむ。二人組の少女、アライブオンリー(生きて連れてくること)決して傷を付けずに連れてくること……だそうだ。……なにをやっとるんだあのガキども……」


 クロックシティーという、まさかの大移動をかました少女達の行動力に頭を抱える。


「お父様ーーー!! 早く!! 早くマフィアを潰して!! テレサがマフィアに狙われてるわ!」

「……いや、このままでいい」


「ああ!?」

「落ち着け! 首を絞めようとするな!」


 襟を直してコホンと咳をする。最近メイルンが自分に遠慮がなくなってきた気がする。


「生け捕りだと書いてあるだろ。だったらヤツらに見つけさせて、それから潰せば問題はない。少しは頭を使え」

「今すぐ潰してもいいでしょう」


「お前、テレサのことになると見境無くなるな……。正直ワシはあの小娘を見つける自信がない。どうやら、マフィアと何か因縁が出来たようだし、ヤツらに見つけさせてから潰した方が効率がいい」

「……」


 メイルンはスッと立ち上がると、部屋を出て行こうとする。


「お、おい。どうした」

「クロックシティーに向かいます。さあ! お父様も早く支度してくださいませ! 飛行船に乗り込みますわよ」


「あぁ、飛行船は使えん」

「……」


「首を絞めるなと言っておるだろ! 飛行船をクロックシティーに向かわせると、軍が動くことになるぞ!」

「何ですかその状況!」


「うむ! ワシは不正で今微妙な立場にあるからな! そんなワシの飛行船を王領に飛ばしたら、誤解を生むのだ」

「……」


「……役立たずが……みたいな目を向けるのやめろ……不敬だぞ」

「……役立たずが。一人で行くから震えてろ……」


「言いおったぞコイツ! 待て! ワシも行くから、その目をやめろ!」

「それでは準備してきますので、お父様もお早めに」


 そう言ってメイルンは、音を立てて部屋を出て行った。


「はぁ〜……面倒な」


 ガバス アヤブドールを眉間を押さえながら、ふと、先ほどテレサの映った映像を眺める。

 そこには、目を赤く光らせ、辺りを油断なく見据えるテレサの姿。


「ふん……あの小娘に影響されとるなコレは」


 よく見れば、その映像からはガラスが舞い散り、奥では人が逃げ惑う姿が確認できる。

 そんな状況に置いて焦ることなく走る白髪幼女は、以前の泣くだけだった少女ではない。


「……それに。賞金を掛けるために映像を出したヤツも気づいてないのか?」


 その映像のテレサは、画面より少し、左に映っている。


「……本当はココに映っていたのではないか? あの小娘が……」


 カメラマンの腕が悪いと言われればそれまでだが、なぜ二人組の少女と言っているのにテレサの姿しかない。

 


「……もしかして……記録に残らんのか? あの小娘。……まるで妖怪だな」


 姿が記録にも記憶にも残らない……。

 ただ、『居た』という記憶しか残らない少女に、薄寒いものを感じる。


 ガバス アヤブドールは忌々しげに、映像に映ったテレサの……何も映っていない右側を睨んだ。




 ――――――――――――――――――――――



「やっぱさぁ……探すなら貴族じゃない? 豚貴族の情報持ってんの貴族だろうし」

「……貴族はそんなにポロポロ落ちてない」


 街中のオープンカフェ。

 

 人のまばらな、そのテーブルに座る二人の幼女。

 頭には大きめの帽子を被った二人の幼女は、飲み物を飲みながら会話を続ける。


「……それに、そろそろお金が心許ない」

「え? マジで? いつの間に!」


「……さいきん贅沢し過ぎた……しばらくは節約」

「ん〜、確かに。私たち普通にここに入ったけど、安かぁないよね?」


「……贅沢は……慣れるとキリがない」

「う〜ん、資金の調達が先かなぁ。マフィアが探してるから大っぴらに動けないよねぇ」


 そんな会話をする幼女達の帽子に、ハラリと白いものが落ちてくる。


「……雪だ」

「どーりで寒いと思ったよ!」


 クロックシティーに……


「……わたし言った……外は寒いからやめようって」

「だってオープンカフェって憧れるじゃん!」


 冬が訪れようとしていた。


「早く店内に入るよ! 幼女ちゃん!」

「……わたし最初からそうしようって言ってた」



 目立つ白髪を隠す為の帽子を深く被り、逃亡者の幼女たちは寒さから逃げる。

 

 このクロックシティー(時計仕掛けの街)で。

 

 ここまで読んで頂き、ありがとうございます。

 これでマフィアの娘編は終わりです。

 最後の方は一話の文字数がメッチャ増大してしまいました。見辛かったらすみません。

 沢山のマイリスや評価、感想や誤字報告、イイネを頂きました。とても嬉しいです。

 よろしければ、次のお話もお付き合いして頂けると嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[一言] 文字数増えたのはむしろご褒美では お嬢のファミリーになったとしてお嬢の場合情が移って…とかなさそうだよなあ
[一言] 魂手入でコンテニュー こわいて
[良い点] テンポが良くて面白い! 定期更新ありがとう!
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