第三話 少女のぶっとんだお願い
「えっ……?」
目の前から女性が突然きえていた、体感的には数秒、もしかしたら、もっと早かったかも知れない。
気が付いた時には横腹を蹴られ吹き飛ばされていた。
そのまま壁に叩き付けられて気を失いそうになる。
「ぐっ!」
意識は保つことが出来た、だが、体が動かない。
あばらが折れた、顔を上げると女性が俺の首に鎌を付けていた。
こんな状況であれだが、すげぇ、綺麗な人だと思ってしまった。
少しでも情報が欲しい。鎌を寸前で止めてトドメを刺さないのは何かあるはずだ。
「はぁ……はぁ……何者なんだよ」
「……あの子の仲間」
女性は火傷の少女を指差す、なら、目的は同じはずだ。
だが、どう説明するか馬鹿正直に言っても絶対に信じてもらえない。
「話は終わり?」
鎌を振ろうとする。やばい、死ぬ。いや、待て、こいつの属性は多分、雷だ。なら、まだある。
俺は口を開ける。
「あの少女は背中に火傷を負ってる。危険な状態だ」
鎌が首のところを寸前で止まる。あぶねぇ、怖い、漏れそう。
「それが?」
「回復魔法を使えないだろ? 医者を紹介する」
女の顔に迷いが出てきた。
「変な動きをしたら斬ればいい」
「……分かった」
俺は立とうとするが立てなかった、ダメージが大きいのか視界が霞んでる。
「肩を貸してくれないか……?」
「うるさい、気合いで立て」
鬼かよ。いや、きちんと話を聞いて生かしてくれてるから天使か? あと、おっぱいがデカイ。
女性はホープをおんぶして、俺に肩を貸してくれる。え? 普通にいいやでは?
「……早く連れていけ」
「あっ、はい」
俺達はタワーを出て案内する。
だが、痛みで気を失いそうなので、少しでも痛みの意識を無くそうと彼女に話をかける。
「お前は何者なんだ?」
「それに答える気はない。だが、お前は私の質問に答えろ」
めっちゃ理不尽。 まぁ、逆らったら即死なんだけど。
「なんで、この町はこんなにも壊れて人いない?」
「は? そんな事は誰でも知ってるだろ?」
この世界で育ったなら逆に知らない方が不自然な質問だぞ、などと思ってたら睨み付けられたのですぐに答える
「モンスターに突如、襲われたからだよ。原因は誰にも分かってない、ここに住んでた人はみんな札幌に行っただけだ。なんか、ここのモンスターだけ異常に強いし」
「じゃぁ、この函館だけ異常にモンスターが強いのはなぜだ?」
「それも、誰にも分からねぇ」
函館は異常にモンスターが強く危険な町として恐れられてる。
本来、この世界で育った者なら誰でも知ってる常識な話なのだが彼女は知らない。
あと、体の限界がきた。もう、意識を保つことが出来ない。
俺はそのまま気を失ってしまった。
ーーーー
「……きろ」
声が聞こえる。しかし、まだ、眠い。もう少しだけ寝かせてくれ。
「いい加減、起きなさい!」
思いっきり頭を叩かれた。
「いっ!!?……なんだ、雨か」
叩いてきたのは雨だった。口とかは悪いが強いし顔は可愛いと思う女の子だ。
「ふん、ずいぶんとぐっすりだったわね」
「……あぁ、ずいぶん長い夢を見てたよ」
あの出来事は夢だ、考えればダイヤモンド級の魔法使いにあんな強い女性がこんな危険な町に来るメリットがない。
「なら説明して、あいつ何? 手も足も出なかったんだけど」
雨が機嫌悪そうに指をさし、その方向を見ると先ほどの強い女が居た。
あっ、はい、夢じゃありませんでした、めっちゃ睨んでるし、怖くて漏れそう。
「……あっ! 怪我した少女は!?」
「んっ、あんたの目の前よ」
ベットの方に目を向けると、先ほどの少女が俺の手を握って眠っていた。
「この子の怪我の具合いは?」
「大丈夫、貴方よりも早く回復したわよ」
「そっか……よかった」
とりあえず、守ることは出来た。まぁ、後半はボコボコにされてただけなんだけど、んで、なんか、女性がめっちゃ見てる。
あっ、鎌を持って近付いてきた、死んだわ。
「二人とも、私の質問に答えてもらうわ」
「それは人に聞く態度じゃないんじゃない?」
雨も刀を握ってる、いや、ここで戦いたくはないな。
勝てないだろうし。
「いいよ、それで話って?」
「貴方達、アルカンシエルって言葉に聞き覚えはある?」
「アルカンシエル? 初めて聞いたよ」
「私も」
正直に答えると女性は数秒ほど俺達の目を見た後に鎌を離す。
「ロキはアルカンシエルについて知らねぇの?」
「知らねぇな」
ロキにも聞いてみたがやっぱり知らなかった。
アルカンシエルのことを聞いてみるか悩んでいると少女が起き、俺を見ると手をぎゅっと握った。
「よかった……! ありがとうございます……! 貴方は命の恩人です!」
顔を上げて、満面の笑みでお礼を言う。
この笑顔のためなら、あばら骨くらいは安いなと思えるくらいに眩しい笑顔だ。
まぁ、折ったのは貴方の仲間なんですけどね!
「帰るぞ」
そして、その俺の骨を折った張本人が少女の目が覚めるなり帰ろうと言い出すが、それを少女が止める。
「待ってください!」
「駄目だ、あの男は信頼できない」
二人が何か話している、なんか、俺の信頼度だけ以上に低くない?
少したつと話し合いが終わり少女が体を俺の方を向ける。
「お願いがあります! 全宇宙を守る、お手伝いをしてください!」
ぶっとんだ願い事だな。




