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Once Upon a Talk  作者: 深園青葉
1/5

ローダンセ

「久しぶり」

『久しぶり』

「はい、お土産」

『わっ!朝香あさかの手作りパウンドケーキ!』

「好きでしょ?」

『うん!高校1年のバレンタインで初めてもらって食べた時から、ずっと大好き!』

「昨日ね、仕事必死で終わらせて、残業免れて帰ったんだ。妃花ひめかにケーキ作ること考えたら、頑張れた」

『えー!嬉しい!ありがとう、朝香』

「桜、咲いたね」

『そうだね。春って感じ』

「春って感じ」

『あっ、同じこと言った、うふふ』

「ふふ。妃花、春、好きだったよね」

『うん!春が季節の中で一番好き。朝香は確か……』

「私は、夏が一番好き」

『そうだそうだ!夏だ』

「7月の暑ーい日に、海、一緒に行ったことあったよね」

『あったあった。1日中、遊んだよね』

「ビーチバレーしたり」

『そうそう』

「スイカ割りしたりね」

『懐かしい~!』

「私は全然ダメで、妃花が、お見事!ど真ん中に当てて、割ったんだよね」

『あはは!そうだったね』

「懐かしいね」

『うんうん』

「秋には、焼き芋大会するのが恒例」

『大会っていうほどの人数いないんだけどね。あははっ』

「2人だけ。けどそれが、すごく楽しかった」

『美味しかったな~、炭火で焼いたサツマイモ』

「去年の冬は、イルミネーション、2人で見に行ったよね」

『そうだそうだ!“恋人同士かよ!”って、お互いにお互いでツッコんだよね』

「綺麗だったなぁ、あの、ピンク色の、でっかいクリスマスツリー」

『たしかに……あの綺麗さは、忘れられないなぁ』

「あれ見て、約束したんだよね。来年の春は、桜見に行こうって」

『……そうだね』

「行きたかったな……」

『うん……』

「妃花と一緒に、桜……見たかった……」

『うん……』

「……泣かないよ、私は」

『えっ……?』

「妃花なら、きっと、こう言ってくれると思うんだ。“朝香、笑って”って」

『朝香……』

「だから、もう、泣かない。妃花、今も、天国から私のこと、見ててくれてる?」

『うん……うん、見てるよ』

「妃花、私の声、届いてる?」

『うん……届いてる。全部、聞こえてる』

「妃花、泣かないで」

『なっ……泣いてないよ……』

「笑って、妃花。約束、ね」

『うん……わかった。約束、ね』

「これ……誕生日プレゼント」

『お花……?』

「ローダンセっていうの」

『綺麗……』

「花言葉は、“変わらぬ思い”、“終わりのない友情”」

『終わりのない、友情……』

「私たちは、これから先も、ずっと親友」

清森朝香は、立ち上がった。

彼女の目の前には、水上妃花の墓があった。

「大好きだよ、妃花」

『私も、大好きだよ、朝香』

「じゃあ……またね」

朝香は振り返った。

そこには、満開の桜があった。

『またね。いつでも、待ってるから』

桜の枝が優しく揺れたのを、朝香は見た。

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