第1話
友達に「お前が書く話、難しすぎて長すぎ!」と言われて書いてみた作品です…
今まで書いていた形式と違って書いてみたのでつまらない部分も多いと思いますが、楽しく読んでいただければと思います。
「バカ、早く動け!」
「あんな奴がどうしてうちのパーティーになったんだ。」
「ごめんね、もっと頑張るよ…」
暗いダンジョンを攻略している冒険者たち。
このパーティーの一員であるカイルは、パーティー『白鷲』の正式メンバーであるにもかかわらず、人夫として扱われている。
『白鷲』は国をあげても指折りの最強のパーティー。
長い年月の間に数々の功績を挙げ、最強の称号を得た。
そしてカイルも初期の頃は全員に認められていた。
だが…
「おい、二類不良品。俺の話を無視してんのかよ?
早く来いという言葉が聞こえない!?」
足に蹴られてそのまま倒れてしまう。
しかし、何も言わずに再び立ち上がる。
慣れた仕事だ。
「まったく、ステイタスの総合だけよいって何になるんだ。
まともなものは一つもねから。」
これがカイルが無視されるようになった理由だ。
この世の全ての人にはステータスが付与されている。
力、敏捷、根性、知能の4つの基礎スタット。
そしてこの分配によって人の価値も決まる。
戦士クライドは力、弓手のジェーンは敏捷、タンカーのラルフは根性、魔法使いのロイは知能でそれぞれこの国の最高を争う。
ステータスの総合だけ考えればカイルも誰に負けず、屈指の数値だ。
でも無視されている。
各職業群には固有のスキルが存在、スキルを習得するためには一定レベル以上のスタットを必要とし、スタットはそのスタットに関する様々な経験を通じて上げることができる。
結局、最初に与えられたステータスが今後の成長方向性まで左右する。
はじめに付与される40のステータスポイントの分配が、こうした成長において特出した一つが、いくつかの凡才より優れているこの世界の公然とした常識。
そしてカイルは全ての能力値に10ポイントをもらった。
その結果, 誰より努力して来たにもかかわらずどんなものでさえ特出するようにならなかった。
何をやっても二流八方美人になってしまうだけだ。
最初は万能と認められたが、次第にチームが強くなって強い相手に出会い、その速さにカイルは追いつけなかった。
そのため、他のやつらがSランクを達成する間、カイルのランクはBの末端にとどまっている。
「それくらいにしておけ。もう少しであいつが必要だから。」
クライドはいじめを止めてくれた。
カイルと共に初めて『ハゲワシ』を決めた友人であり、パーティーのリーダーでもある。
「ここがどこなのか忘れたのか。
踏破率0.3%である最悪のダンジョン「悪魔の巣」だ。
ゴールが近いからといって、緊張を緩めるな。」
「そうは言っても、もう来ているようだけど?
ほら、道が終わったぞ。」
道が終わったところには、奇妙な形をした祭壇だけがある。
そして、この祭壇が現在このダンジョン唯一の未攻略モンスターでありボスと知られている、悪魔を閉じ込めているという。
ただ、誰もその悪魔を呼ぶ方法を知らないが…
「始めようか…」
クライドの剣はカイルの腹を突き刺した。
何も知らずにカイルは地につんだ。
「クライド…?」
「知られるだけで誰も読めなかった祭壇の古代言語の一部分を、ロイが解読したんだ。
『悪魔の飢えを、渇きをいやす餌をここに。』
簡単に言えば生け贄が必要だということさ。」
「なのにどうして俺を…」
「そうだな、鶏なんかを一羽持ってきて試してみてもよかっただろう。
でも、そんなことよりも、お前がこのパーティーにいるのが気にくわないから、ボケ。」
「うそでしょう…?お願いだから、やめてよ…」
「俺たちは高いところまで上がってきたし、これからも上がるつもりだ。
もうお前はお前の背負った荷物よりも役に立たないやつだぞ。
この辺でお別れするのが正しい決定だろう。」
もっと言おうとするが、吐いた血が喉を塞ぐ。
他の同僚を見て回るが、あざ笑ったり、目を向けるだけだ。
「お前が望んでいたことじゃない、カイル?
俺たちにとって役に立つやつになりたがっていただろよ。
願いは叶えてあげるから、俺たちを恨まないで楽に行け。」
今や体がまったく動かず、祭壇に身をもたせる。
そして、待ってみるが、いくら待っても祭壇は何の反応もない。
「…」
「なんで反応がないんだ?
ロイ、ちゃんと解読したのかよ?」
「俺もわからないよ。ちくしょう、 何が問題なんだ…?」
「…まあ、いい。今回は腐ってしまった歯を抜いたことで満足しようぜ。
残念だが、今度はこの辺で帰還することにしよう。」
そして『白鷲』は去っていった。
その背を見るカイルの目は次第に暗くなってきた。
「…オレってやつは…」
「お前ってやつは?」
誰かの声、ワシの誰かの声ではない。
一体こんな所に他の誰がいる?
声ははっきりとまた声をかけてくる。
やっとの思いで目を覚ますと、黒いシルエットが自分を見下ろしている。
「言ってみろよ。何て言いたかった?」
「…どこまで運が悪いんだ…?」
「ククッ、そういうことだったか。
とにかく、俺を出してくれてありがとうよ。
俺はお前たちが悪魔と呼ぶ存在だ、よろしく。」
「どうして今になって出てきた…」
「だって悪魔の餌食が用意されたから。
さっきのばかどもは生け贄という意味で考えたようだが、悪魔の餌食は否定的な感情のことだ。
君がさっき悲しみや怒りなど、あらゆる否定的な感情を思い出して、それに反応して俺が現れたんだ。」
「それで、もう俺をどうするつもりよ?」
「本来なら俺を起こしたやつらに死より恐ろしい苦痛を与えただろうけど、もう行ってしまったし、お前はもう死ぬ寸前だから…」
まあ, 久しぶりに目が覚めたが, 面白くないね。」
「そうだね…お前がもう少し早く起きていたら俺の復讐をしてくれたのに…」
「…復讐したいかい?」
「やりたいこととできることは違うよ。」
「出来ればやりたいってことだな。
よし、面白いのが浮かんだ!」
悪魔が名前にふさわしい笑い声を聞かせてくれる。
不気味さを超えて、本当に愉快だという感じさえ受ける。
「俺が力を貸してやる。悪魔との契約をしようということだ。」
「…ただではねだろ。対価は?」
「俺にとって楽しいことをたくさん見せてくれるならいいぞ。
その代わりにお前が切に望んでいたものをあげよう。」
「悪魔と契約してまで復讐はしたくないけど。」
「復讐の話ではなく、運の話だ。
お前を最高の幸運児にしてやる。」
なぜか笑いが出る。
そんなことが可能ならこうなったはずがない。
「俺を信じていないようだが、俺は何でもできる。
俺と契約したらバフを、幸運をかけてやる。」
「幸運のバフ?そんなバフは聞いたことない。」
「まあ、誰もができることではないから。
人間が運命という言葉を作り出した理由でもある。
どんなことをしても運を変えるのは不可能だから。」
「だからお前の話は、その運を変えられるということかよ?」
「俺ならできる。そして、運のバフがかければ、今とはまったく違う人生を過ごすことができろだろう。」
「悪魔の言葉を信じろって…?」
「ううん、強情なやつだね。言葉をちょっと変えてみようか。
今こうやって会話ができる理由、俺がお前の魂を掴んでいるからだぞ。
俺の提案を受け入れないならこのまま死ぬんだよ。
ほら、 俺の言うことを信じてお前に損になることがある?
生き返て、運命をつかめ。」
生き返れる。
この言葉が胸を打ったし、思いもしないうちに心が切り出した。
「…契約する。」
「よし、面白い人生になることを祈るよ。
行こうぜ、幸運児さん。」
話し終わって目が覚めたときには、ダンジョンの入り口に立っている。
今まで夢でも見たのか…?
確認する方法はたった一つだけだ。
「ステイタスオープン」
視覚化されたステータスが現れた。
ゆっくりとステータスを読んでいく。
『力:653 敏捷:674 根性:662 知力:659』
こうして終わるべきステータスの下に小さな文字が書かれている。
『+α』