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第9話 レイドボス リバイアサン


「えっ、これじゃあ足りない!?」


「本物ですが、まだ足りませんね。もっと集めてきてください。次」



 俺たちのダークコアを鑑定するべく鑑定士に鑑定してもらったのが足りないとぞんざいに扱われた。

 まぁ、人が殺到するほどの冒険者が参加して、その生き残りだけがダークコアをゲットできたんだ。俺たち以外にも人はいる。



「ちょっと、あといくつほどで……」


「これ、中ボスクラスでしょ! もっとレイドボスとか、大きいのを手に入れてよ!」


「レイドボスって、あっあの」



 鑑定士はぴしゃりと話を切り上げた。



「レイドボスって、超大人数で攻略しないといけないよな」



 レイドとはパーティーとパーティーとパーティーとパーティーが集まった戦闘のことで、とにかく人が多く集まってボス戦となるのだ。



「俺、友達いないし…………んっ?」



 冒険者ギルドの入り口でなにやら騒いでいる。



「平原の南に海がある。そこの海のダンジョンに我々は行く。ついていく者はいるか! これには旅団のパーティーと師団のパーティーがいくつか参加済みだ」



 攻略者募集か。大きなダンジョンやボスだと大人数が必要となるため、こうして人員募集をかけている。

 しかし敵対関係にある、旅団と師団が手を組むのか? いや、どうせドロップしたダークコアの取り合いで血で血を洗う争いになるんだろう。



「目標はリバイアサンだ」



 何ッ!! レイドボスじゃないか。その言葉に命知らずの冒険者どもはうおおおおと雄たけびを上げる。

 レイドボス……悪くはないが、マインには相談しなきゃ。

 


「マイン、冒険者ギルドで聞いたが、ダークコアの数はこのままでは足りないらしい。もっと大きなものを手にいれないと届かないみたい。それで、次はレイドボスに挑戦してみようかと思うんたが、どうかな? 前回とは比べられないくらい危険だが」


「ケヴィン様が、行くというなら私もついていきます」


「でも、かなり危険だよ。前回は幸いにもポーションを必要とせずにきたがさすがに今回は…………」


「…………危険なのは承知です。最前線で戦わなければ、トップで走り続けることは無理でしょう」


「…………………………」



 最前線で戦わない者に多くのダークコアは得られない。故に伝説の剣はもちろん伝説の勇者にはなれない。

 つまり、没落したくなければ、何も失う物もない冒険者たちと競争してまで勝ち取らないといけない。



「わかった。とりあえず、リリーさんのところへ行こう。ダークコアのためにギルドによったけどその時はリリーさんはいなかったから、おそらくはアジトの方だろう」


「はい、わかりました。ケヴィン様」



 マインは身支度をしボトムへ向かう。俺も行こうかとしたその時、マインのお袋さんに話しかけられた。



「ケヴィン君、ちょっと」


「はい、何ですか」


「今度はどこへ行くの?」


「海のダンジョンに行く予定です」


「……確かにちょっと危険ね」


「……すみません……大切な一人娘なのに、危険なところに連れ回して」


「仕方ないわ。あの娘は芯の強い娘だもの」


「誰に似たんでしょうかね。ははは」


「…………本当、……誰に似たのか……ね」



 お袋さんはやや暗い顔をした。和ませるために作り笑いをしたが誘えなかった。やっぱり、娘の心配をしているのだろうか。



「とりあえず、ケヴィン君にはこれをあげるわ。……いざという時まで開けないで」



 お袋さんが渡してくれたのは懐中時計だった。



「開けないと時間が見れないですよね」


「ううん、それは止まっているの」


「それは時計としての意味をなさないんじゃ…………」


「でもね、それは特別な懐中時計なのマインにね」


「………………」


「だから、もしもダメ…………」


「その時は来ませんよ。絶対に」


「…………ケヴィン君」


「安心して下さい。何日かは外泊をしますが、また帰ってきます」


「そう…………待っているわね」



 そう言って俺は屋敷を出た。なんとなく想像はてきる。今際の時、もしくわ戦死でわかるように何かしらの細工があるのだろう。




「リリーさん、今度はリバイアサンの出る海のダンジョンに行こうと思います。なんだか旅団と師団が一緒にやるみたいで」


「……はぁ、危険よ」


「それは承知です」


「陸地と違って、海のダンジョンは窒息の危険も伴うわ。海といっても必ずしも海上とは限らない。海中や海底かもしれないのよ」


「それなら、他の冒険者が脱落していきますね」


「……ポジティブね、まぁいいわ。貴方には彼女がついてるものね」


「マインですか?」


「シルフを使えば、二人だけ周りの空気を海中でも維持できるかもしれないわね」


「そうか、そうだよな。できるか? マイン」


「はいっ、やってみます!」


「……貴方って、案外無鉄砲なところもあったのね。まぁ、いいわ。こちらからもそのクエストに二人が参加することを伝えるわ。もちろん旅団としてね」


「お願いします」



 俺たちはリリーさんに仲介を頼むと王都を出て平原へ着く。

 平原には多くの馬車が並ぶ。護送馬車方式ってやつか。俺たちは旅団の馬車に乗り、南へと向かう。

 すると海岸に着く。



「皆、各自で船に乗ってもらう」



 旅団の船と、師団の船にそれぞれが乗る。

 木造帆船は大きく広い。甲板はでっかいイカダを思わせる。



「ケヴィン様、すごいですね」


「かなりの人がこの構造物に密集している。マイン、俺から離れるなよ」


「は、はいっ! ケヴィン様」



 俺はマインの肩を抱き寄せた。


 船は目的地へと向かうはずだったが。



「おい、消えたぞ」


「どういうことだ!」


「岩があったんだよ! 目印となる尖塔岩が!」


「何だってッ!!」


「その尖塔岩はいつ見たんだよ」


「漁師の話によると、もう14日前だ」


「フォートナイトで消えたのか」


「ありえない。尖塔岩は海面から二階家ほどの高さを保っていたはずなのに」


「14日夜で消えるほどもろかったんじゃないのか」


「そんなわけあるか、岩が波に削れるたって、とてつもなく長い年代を経てだぞ」


「おいおい、尖塔岩の海面下は岩礁だろ。どうするんだよ暗礁に乗り上げたら」


「そもそも、海のダンジョンなんかあったのか」


「あったさ! 尖塔岩の近くに小島があって、その小島の昼の干潮時に地続きの道があって、その道に割れ目が……」


「わかった、わかった。しかしここの位置であってるのか」


「なら、後ろを見ろ! 出航した入り江に灯台があるだろ。そのてっぺん部分を、この板の穴にちょうど嵌まるように、板の糸をぴんとはるようにしてみろ。糸に赤で印があるだろ、そこまでの距離にあったんだよ」


「いや、無いぜ」


「だから、さっきから言ってんだよ!」



 さっきから、船乗りの男たちが慌ただしくなってきた。

 会話によると本当はここらへんに海のダンジョンへの入り口があったらしいがなくなったようだ。



「おいおい、どうすんだ。確か船に残る戦士たちと実際にダンジョンに進む戦士と別れていたんだろ」


「まぁ、この船が師団どもに襲われないとはかぎらないからな。分け前もめんどくさくなりそうだし。ごちゃごちゃほざいてきたら海に放り投げりゃいいと思っていたが」 


「チッ、こりゃじゃあ話が違うぜ」


「あー、師団の方も揉めてんなぁ」


「どうする? 船長に引き返すように言うか」


「しかし、お守りの戦士どもにごちゃごちゃ言われそうだしな」


「そん時こそ、海に放り投げりゃいい」



 どうやら、俺みたいな末端には知らされていないことがあったらしい。

 なるほど、出し抜くためには都合のいいことしか答えないってやつか。まんまと引っ掛かってしまった。リバイアサンに釣られたぜ。



「おい、雨が降ってきたぜ」


「マジか、さっきまで晴れていたのに」


「どうするんだ、嵐になればダンジョン攻略とはいかないぜ」


「仕方ない、不足の事態だらけだ。引き返すしかない」



 船乗りたちが諦めようとしたその時。



「カリュブディスだッ!!」



 男の叫び声で乗員たちが騒ぎ始める。それに伝播してか戦士たちも戦慄く。



「引き返せぇーー。大渦だーー」



 カリュブディスと呼ばれる大渦は瞬く間に旅団の船と師団の船を飲み込む。



「マイン、シルフだッ!!」


「はい、ケヴィン様。私たちに加護となれ『シルフ』」



 ぱあああと、優しい空気の塊が俺たち二人を包む。



「逃げろーー。船が飲み込まれる」


「バカ野郎!! 逃げるたって逃げ場所がねぇだろうが!!」


「やばいやばいやばい、船が壊れる」



 ギシギシと船が悲鳴をあげる。

 俺たちはシルフの加護まで周りの空気で守られており、さらに空中浮遊もしていた。



 ギャャャャオオオオ



「なんだ、今の叫び声!」


「あいつだ! あいつが来たんだ!!」



 しだいに天候は大雨となり、風も吹く。大きく船が揺れ、渦の中心に旅団と師団の船がのみこまれるその時。



「ぐわああああ」



 船の先端が互いにぶつけ合い、一閃の光りと共にまるで大きな鉄球が船を破壊する。

 船の先は粉々となり、海水が船に入り込む。

 俺は甲板から乗り出すように船の先を見た。



「魚影?」



 大きな黒い影が大渦の中に見える。もしや…………。


 ギャャャャオオオオ!!


 黒い影から顔を覗かせた。



「リバイアサンだぁぁ!!」



 ギョロっとした目つき、船をも飲み込むこうとせんとする大きな口、口の円周上に二段となっている鋭い牙、そしてなにより頭についている光り輝く鎖のモーニングスター。



「さっきの鉄球はあいつのチョウチンだったのか」


「ケヴィン様、リバイアサンに近づくのは危険です。ここは私に任せてください」


「だろうな、見るに硬いウロコをしている。おそらくどんな武器も通用しないだろうな」



   ギャャャャオオオオ



 リバイアサンはチョウチンを横に振り回し、甲板にいた戦士や船乗りは海に放り投げ出される。

 そこをリバイアサンが口を開けて吸い込む。人も海水も船も。



「リバイアサンは悪食だな。口腔内攻撃はキツそうだな」



 皮膚が硬いのなら、外からの攻撃は難しい。なので内からの攻撃にするのだが、内からの攻撃というのは限られる。そのうちの一つが経口攻撃。

 口から中へと攻撃したいが、まず口が硬いとなるとその先の胃も硬そうである。



「となると、やわらかい場所はあそこか」



 リバイアサンのギョロっとした眼だ。

 眼を守るためのまぶたはついておらずむき出しの状態。通常、眼球はやわらかい、それに視覚情報感覚器という重要な部位であり、多くの生物にとって弱点である。


「マイン、リバイアサンの眼を狙って、目玉焼きにしてしまえ」


「はい、ケヴィン様。

 海中の怪物のおどろおどろしいそのまなこを焼き尽くせ『サラマンダー』」



 賢者の杖からサラマンダーが火竜のごとくリバイアサンの眼へ喰い殺す。

 


  ギャャャャオオオオ



 リバイアサンの左目が焼かれ、叫び声をあげる。

 それを見たのか師団の船から弓使いたちが矢を放つ。しかし、当たらない。

 それもそのはず、旅団と師団の船は大渦により顔をだしたリバイアサンの周りを回る。相当の腕がないとまず当たらない。



「ケヴィン様、リバイアサンの左目を見てください」


「……白くなっている。成功か」



 俺がそう安堵しているその時。



 ギャャャャオオオオ



 リバイアサンのチョウチンが横薙ぎに旅団と師団の船を破壊し、大波を誘う。

 瞬く間に二つの船は大破し、大きなイカダとなった。

 俺とマインは空中浮遊していてイカダに乗らなくても大丈夫だが。



「はあはあはあ」


「大丈夫か? マイン」


「すみません、ケヴィン様。MPの消費が激しくて……」



 マインの風魔法のシルフがMPを食っていた。それもそのはず常に魔法を使用し続けているのだから。それに加え攻撃魔法のサラマンダーも行っている。



「マイン、まずはグリーンポーションを飲め」


「はい、うっぷ」



 俺は無理やりマインの口にグリーンポーションを飲ませる。グリーンポーションはMPを全回復する。

 グリーンポーションの数に限りがある。ブルーポーションを使ってもいいが、このままだとジリ貧になる。



「クソッ! 眼を潰してもこれだけ元気なら。盲目になったら手がつけられないほどに暴れるかもしれん」



 リバイアサンは海面から顔の部分を出している。もし水面下にある胴体部分に弱点があったならどうするか。

 おそらく、リバイアサンは尻尾のヒレなどで水中に漂う、泳ぐことができるだろう。ヒレを斬り刻めは泳げなくなるだろう。

 しかし、渦巻く海の中に生身のまま行くのは投身自殺に等しい。



「はぁ、ケヴィン様。次はどうしますか。はぁ」



 MPは全回復させたものの、依然としてシルフを使い続けている。ある意味シルフがMPの毒状態となっていた。

 このままではマインは疲れきってしまう。…………ん、疲れる。



「マイン、悪いけど土魔法、ノームを使えるか」


「もちろんです。ケヴィン様。それでどこに撃ちましょう」


「いま、リバイアサンの体力を消費させる動作はあれだ。あのチョウチンをモーニングスターのように動かしている動作だ。つまり、あのチョウチンに負荷をかけるんだ」


「わかりました。ケヴィン様。

 荒れ狂う海の怪物よ

 その罪深き重りを更に背負え

 『ノーム』」 



 リバイアサンのチョウチンに土が吸い寄せられ小島になる。


  ギャャャャオオオオ


 すると、どしゃあんとチョウチン島が海に浮かび、リバイアサンは頭を起こせないでいる。

 そのことに何が起きたかわからないのか知能がそこまで高くないのかリバイアサンは暴れまくり、海中から尻尾を見せた。

 尻尾にダメージを加えさせたいが、サラマンダーで攻撃しても海中に潜られたら、波しぶきで炎が消えたらと思うと攻撃方法が一つとなる。

 俺はマインにグリーンポーションを飲ませMPを全回復させ、万全にする。



「マイン、リバイアサンの尻尾まで近づいてくれるか。俺が尻尾を斬る」


「わかりました。ケヴィン様。どこまでもついて行きます!」



 風魔法のシルフで尻尾に近づき、その暴れまくる大きな尻尾めがけ斬る。



「はあああああ!!!」



 高速に突撃し横斬り! 

 リバイアサンはダメージを食らい血しぶきを尻尾からあげる。


  ギャャャャオオオオ


 リバイアサンはその痛みから更に尻尾を暴れさせる。

 どんどんとエネルギーを消費させる。

 チョウチンを振り回すというパフォーマンスを維持しようと思えば大きなエネルギーを使う。

 故にリバイアサンの最大の攻撃であると同時に弱点でもある。

 


「マイン、リバイアサンの顔へ出るぞ」


「はい、ケヴィン様」



 リバイアサンの顔へ再び来る。チョウチン島はしだいに波で削れていく、じきに無くなるだろう。それまでに決着をつける。



「マイン、俺の剣にサラマンダーを撃てるか?」


「小さくですね。わかりました。それでどうするんですか」


「炎の剣でリバイアサンの右目から脳まで突き刺す」


「しかし、ケヴィン様、剣がリバイアサンの脳まで届くでしょうか」


「だから、シルフも使う。俺の剣を炎の矢としてリバイアサンを貫かせる」


「わかりました」



 俺はもう一度マインにグリーンポーションを飲ませMPを全回復させる。



「小さき刃よその心を燃やせ『サラマンダー』」



 ぼおっと俺の剣が火を噴く。

 充分に距離を取り、直線上にリバイアサンの右目とおそらくあるであろう脳に位置を取る。



「海の怪物よ、その眼に写る最期は地獄の業火であれ

 いまここに終焉の矢を放たん

 『シルフ』」



 賢者の杖から解き放たれる風は嵐をも切り裂く。

 斬り裂く先は海の怪物。



「いっけえええええええッ!!」



 炎の剣がリバイアサンの右目を斬り裂き、めり込む。


  ギャャャャオオオオギャャャャオオオオ


 リバイアサンが暴れると共に炎の剣は更に奥へと進み。


  ギャャャャオオオオ


 脳天を貫いた。



「やりましたね! ケヴィン様!」


「ああ、レイドボスを倒したぞ」



 ぱああああとリバイアサンは消滅し、カリュブディスと言われる大渦も静まり、嵐も止んだ。

 見渡すは船の残骸とわずかに生き残った旅団と師団の人たち。



「ケヴィン様! すごいです!すごいです!」



 マインは手に入れたダークコアを俺に見せた。

 ゴーレムを倒したときとは比べ物にならないくらいに大きい。これならいいかも。



「マインのおかげだよ。マインがいなければ倒せなかった」


「そんな、ケヴィン様の指示のおかげです」


「いいや、マインの」


「いいえ、ケヴィン様の」


「「ふふふ、ははは」」



 俺たちは謙遜のしあいでつい笑ってしまった。お互いがお互いのおかげというのは本当だろう。



「でも、マインがいてくれたからここまでできた。ありがとう」


「ふぁ」



 俺はマインの額にキスをした。

次々々回で終わるかも。

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