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婚約者を蔑ろにすると痛い目に遭いますよ?

作者: ポコ太
掲載日:2020/02/02

 






「もう一度仰って頂けませんか?ルトさま」








 花が咲き乱れる綺麗な庭園にて。

 この場所はとても神聖な雰囲気を醸し出しているところを、このアホ王子は今なんと言った?


「もう一度私が言うわ、ロベルトさまはリリスさんと婚約破棄して欲しいんだって。今、ロベルトさまの愛はぜ〜んぶアネットの物なのよ」



 ドヤ顔宜しくと此方に勝ち誇った表情をむける女性。この方は・・・あぁムストル子爵家の娘、アネットさまですね。

 本来であれば公爵家である私の許可なく発言をするなんて・・・ムストル子爵さまの教育が伺えるわね。それでもジッと私は婚約者でもある第二王子のロベルトの発言を待つ。

 やっと重い口を開けて。


「すまないリリ。君には悪いが俺はアネットを愛してしまったのだ、この愛を俺は貫きたい・・・それに」










「ロベルトさまのお子を授かりましたわ!」









 庭園が更に静かになる。

 三人の間には静かな時間しか流れず、次の言葉が出たのはリリスだった。


「そう・・ですか。私を裏切り、ましてやお子を宿されるとは・・・私も舐められたものです」


 ロベルトとリリスの婚約は王命となっており、公爵家の父親は頑に首を縦に振らなかったが偶々ロベルトとリリスが出会った時にお願いされてリリスが父親に話をして事が進んだものを。

 こうもいとも簡単に崩すとは。

 小さなため息をつきながらリリスは立ち上がり綺麗なカーテーシを彼らに見せる。


「分かりました。この婚約破棄、リリス・シャイニングお受けいたします」


「ありがとうリリ、君には悪い事をした」


「いいえロベルトさま、その愛を絶対に貫いて下さいませ。例え陛下が了承しなくとも・・・ましてや精霊王のご加護を受けられなくとも」




「ちょっと!それどう言う意味よ、加護が受けられないってそんなのあり得ないわ!!だって私は精霊王の娘とされているんだから」



 ん?なにか聞き捨てられない言葉が聞こえたが。

 精霊王の娘とな。


 この世界には唯一神である女神マータ・ユルを並べ精霊王、四大元素のエレメント、二幻想のエレメントが存在する。精霊王はその名の通り、四大元素と二幻想の王として生きとし生けるものの頂点。その下にエレメントの長達が居て更にその下が居る。

 はるか昔。当時の精霊王が一人の娘に恋をして珠のような可愛らしい子を授かる。

 精霊と人間とのハーフなのでエレメントの長達や生き物達に愛され、女神マータ・ユルからの寵愛もあったそうだ。

 と、言うのが教会での言い伝え。


 確かにアネットさまにはまぁまぁな魔力がありますが、その様な性格ではエレメントの長達並びに無垢なる生き物達に愛されてるとは思えない。

 それに精霊を見た事があるのだろうか。


 アネットとロベルトはいちゃこら。


 面倒な事になったと思いながらリリスはロベルトに本当なのか?と問えば言葉を濁しながら頷く。















「と、言う訳ですお父さまお母さま」



「ああ・・なんて事を」

 フラリッ、ドサッ!!


「「「「「奥方さまっ!!!!」」」」


「へぇ〜・・ふぅん・・・そう、分かったよ」


 やっとの事で王子と浮気相手のいちゃこら劇を終始見させられていたリリスはやっと解放されて公爵家である自身の家へと戻る。

 婚約破棄の件を父親と母親に伝えると、母親は顔を真っ青にさせて気を失い父親は顔は笑っているが瞳の奥は極寒の真冬だった。

 ああ、それとお父さまに言わなくては。




「お父さまってばいつの間に妹をこさえたのですか?」



 ピシリと空気が周りを固める。

 父親はすぐには動けなかったがどう言う事だ?と首を捻りながらリリスへ質問。アネットの精霊王の娘と自称していたと答えれば・・・


「ぼ、僕の好きな人はティテとリリだけだ!」

 ボフンッ!!



 サラリと真っ白な雪色をした長い髪に、顔面が整い過ぎている美丈夫が泣きながら倒れた女性と少女を抱きしめる。周りにいた他の使用人たちも次々にボフンッ!と音を立てて人間から別のものへと変わる。

 実は。

 リリスの父親は精霊王。

 この事を知っているのは母親の実家である伯爵家と、この国の国王と王妃並びに教会の法王のみ。

 若い頃、父親はまだ幼かった母親に恋をして猛アタックをし愛を勝ち取ったとの事。それを小さかったリリスに延々と聞かされていたのならば、父親が浮気をして別の女性に妊娠させる訳がない。


 ではアネットの言う事が嘘になる。


 もしかしてアネットは下級精霊が見えるとか。下級精霊は光の玉みたいにフヨフヨ浮いており、個人的な意識や感情はあまり無い。中級精霊となれば妖精の様な姿をしており、魔力が沢山ある人間がよく契約を交わす相手。

 それ以上に上級精霊は所謂、四大元素と二幻想のエレメントと呼ばれる長たちだ。その長たちが先ほどの使用人たちなのだ。



 父親はリリスの頭を撫でながら精霊語を発するとリリスの身体が光に包まれ。一般的な茶色い髪に榛色の瞳にどこからどう見ても普通そうな顔、平均的なスタイルから一転して・・・


「お、お父さまどうして偽装魔法・・・・を解くのですか!」


「だって、もう王家に嫁ぐ訳ないから元に戻したよ」




 ふんわり父親と同じ真っ白な雪色をした長い髪に、母親と同じ蜂蜜色の瞳。普通そうな女の子から将来有望な美少女でスタイルも出るとかは出て引き締まった抜群の姿に。

 と、同時に周りにいたエレメントの長達が一気に崩れ落ちる。


『あぁ真のお嬢さまを見るのは何年振りだっ』

 真っ赤な焔を基調としワイルドな青年風な炎のエレメント《イフリート》


『妾は偽装の姿も好きだが、この愛らしい姿がいい』

 深海の色を塗り潰した妖艶な美女っぽい水のエレメント《フリーズン》


『えぇ〜でもでもやっぱり自然が一番だよ!』

 若草色を模した手をパタパタさせる元気っ娘な風のエレメント《エターナル》


『某も豊満な姫が見られるのが良い』

 茶色く染めた髪に頭には犬の耳を付けた変態紳士な土のエレメント《ルドガー》


『相変わらず姫は可愛いなぁ。なぁクーロ?』

 黄金色を辺りに眩く光らせる爽やかそうな青年な光のエレメント《ライジン》


『うん、ボク・・・も、好き』

 黒曜を塗し闇に溶け込んだ幼い少年風な闇のエレメント《クーロ》


 それぞれに賞賛の声(一部変な要望)があった。

 リリスは小さなため息をつきながらこれからの事を話す。王子には婚約破棄を言われたが、王命である陛下の許可はとあるのだろうか?

 それは否だろう。

 国王陛下は父親が精霊王と知っており、ましてや私がその娘と分かっているのであれば王家の血に精霊の遺伝子を組み込みたいはずだ。私がお飾りの王妃で、アネットさまが側妃に収まるだろう。


「私を蔑ろにした王子とは絶対に嫌ですっ」


 まだ形だけの付き合い(政略結婚)だったら良かったものの、途中まではロベルトはリリスに形式的な婚約者として贈り物や夜会でのエスコートをして貰った。

 だが、学園に入った頃からそういうのがパッタリと無くなる。あれは完全にアネットが絡んでいる。


「そっか・・・リリがそう言うんなら分かったよ。ティテの実家に連絡しよう」


 パチリと父親が指を鳴らし、ポワッと現れたのは真っ白な鳩と足には手紙が。それを持ちながら鳩は闇夜の外へと消えて行く。



「あ、あの〜精霊王さま・・この手紙が届いたのですが」


 おずおずと父親に手渡しをするのは中級精霊の使用人だった。綺麗な封筒に楼で納められた刻印は・・・王家の物だった。内容は二日後の夜会に出席する様にとの事。

 たぶん婚約破棄の前に出された手紙だろうから陛下も王妃も知らないだろう。ロベルト王子がエスコートする筈のリリスでは無く、浮気相手のアネットだと。











 二日後の夜会。


 王宮の門には次から次へと貴族達が集まり、婚約者が居ればその者をエスコートして入場。居ない者は身内や親しい人に頼んでエスコートして貰っている。

 中は大きな大きなシャンデリアがあり、魔法で光を灯しており辺りには瑞々しい綺麗な花々が活けられて更に大きなテーブルには色とりどり贅を凝らした食事が置かれている。

 周りには王宮のメイド執事も壁の方に並んでおり、その者達も一応美男美女となっていた。

 中央に鎮座しているのはこの国の王であり民を導く国王陛下、並びに横には王妃と側妃が次々に入場する貴族達を見守っていた。

 その中には無論、我が子であるロベルト王子がエスコートするのはシャイニング公爵家のリリスだと疑いもせずに。


「「ロベルト王子、入場ですっ!!」」



 声と共に現れたのは。

 ロベルトが優しくエスコートをしている女性は王子と同じ瞳の色をしたブルネットのドレスを身に纏い、薄い桃色の髪には王家の髪飾りらしき物を付けながらゆっくりと歩いてくるアネット・ムストル。

 ザワリと周りが騒めく。ロベルトの婚約者は確か公爵家のリリス嬢では無いのか?とかあの女性は誰なんだ?など。

 王妃は直ぐさま立ち上がり顔を真っ青にさせながら体をガタガタ震わせ、国王は顔を真っ赤にさせながら鬼の様な形相で彼らを睨む。

 二人の様子は全く目に入らないのか、ロベルトとアネットの周りにはまるで花々がが咲き乱れ包み込んでいた。

 この夜会には隣国諸国の王族や貴族も呼び寄せていて、彼らも婚約者はシャイニング公爵家ではと思っていたからだ。一瞬で理解した。

 シャイニング公爵家の令嬢は婚約破棄され、新たに王子が寵愛しているあの女性をエスコートしているのだと。


「これはどう言う事なのですかっロベルト!!」


 いの一番に声を荒げたのはロベルトの母である王妃だ。何故!何故何故何故何故何故何故何故っ、と睨みつけながら手に持っていた高級そうな扇子がミシミシ音を立てる。

 その横で側妃も冷たい目を向けながら自身の子達に、ああはなるなと王妃を押さえながら話す。子供達もキョトンとしていたがあの王妃の迫る勢いに只ならぬ出来事だろうとコクリと頷く。


「父上・・いえ、陛下に王妃。俺はムストル子爵令嬢のアネットを愛してしまったのです、それで婚約者をシャイニング公爵令嬢のリリスでは無く彼女にしたいのですっ」


 ザワザワッーーー

 更に騒めきが一層する。グラリと王妃の体が傾き、椅子に倒れ込む。爆弾はまだ持っている。リリスに婚約破棄を言い渡した事とアネットのお腹の中に宿した子のことを。


「ならぬっ!ロベルトよ、婚約者を変える事は出来な」





「「シャイニング公爵家令嬢、リリスさま入場!!」」



 国王の言葉を遮り、ロベルトの後に入場したのは今話になっているシャイニング公爵家の令嬢リリスだ。ただリリスの姿に貴族達はキョトンとしていた。

 無理も無い。

 今のリリスの姿は偽装魔法で普通の女の子の様に見せられており、今の姿はリリスの本当の姿で現れたのでまるで精霊姫と言われても可笑しくはない。

 エスコートとしているのは無論、真の姿をしたシャイニング公爵・・・・・いや、精霊王だった。


「やぁ国王に王妃。いつ以来だっけ?あぁ・・愛しいリリスの婚約発表以来かなぁ〜」


 周りの貴族達は誰?と思い、国王と王妃は体を震わす。先に口から言葉が出たのは何方か。二人は慌てて精霊王の元に走り寄り、事もあろうか膝をついて許しをこう。


「申し訳御座いません申し訳御座いませんっ愚息の所為で貴方さまの気分を害される様な行いがあろうとは!本当に本当に申し訳御座いませんでしたっ!」


「あぁ許してリリス。キチンと教育した筈なのに!」


「ち、父上?母上?・・・何故公爵家の者に頭を下げて」



「黙れ!!この方は、この方は精霊王であられるぞ」



 今まで以上の騒めきと驚き。

 精霊王のいる所には必ず幸福と繁栄が約束されると、教会の言い伝えでは言われているが。現にこの王国では近年の戦争や飢饉、流行り病などの類は起こっていない。むしろ豊作や平和が続いているには精霊王や四大元素や二幻想のエレメント長達が居たからだ。


「僕らはこの国を見捨てるから。今までより少し質素になるかもしれないけど、最低限の魔法は使えるかもよ?」

 まぁ、精霊達が残っていればの話なんだけどね。



「おおお待ち下さい!息子は廃嫡し市井に落としますのでっ、何卒何卒寛大なご配慮を!」


「わ、我がムストル家も娘とは縁を切りますのでっ」



「「父上?!/お父さまっ!!」」


 廃嫡とか縁切りで済まそうだなんてそうは問屋が卸さない。父親がリリスの方に視線を向けるが、首を横に振り意思表示を示す。

 残念だけどそれは出来ない。

 国王と王妃は何かを訴えようとしたが、リリス達は光の粒子で消えてしまった。もう二度と、この国には戻らないと言う意味で。
















 数年後。とある王国が世界の地図から消えた。

 派閥争いでなのか戦争でなのか、はたまたクーデターなのか・・・それは分からないが一つ言えることがある。

【あの国は精霊達に嫌われている】

・リリス

この小説の主人公。父親に掛けてもらった偽装魔法で普通の女の子を演じていたが、婚約破棄で本来の自分に戻る。

後々、イケメン魔王とか隣国の皇太子にアプローチされる羽目になるとは。


・ロベルト

とある国の第二王子。第一王子は戦死したので次期国王なのだが、顔はまぁまぁ良いのに女ったらしで節操が無い。

記憶には無いが小さい頃、本来のリリスに会った事があり初恋の相手。


・アネット

浮気相手の子爵令嬢。王家というブランドに惹かれた野心がある子。

実は、他の世界から転生してきた困ったちゃん。


・精霊王

妻であるティテ(ティテアート)と娘のリリスを溺愛。国が危なくなる?そんなの知った事では無い、二人が傷つくと僕本気出すけど。

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