28. 七月に入り、真夏の暑い日々を過ごして
七月に入ると、関東ではエアコンを四六時中つけていないと生きていけない。
そんな気がするのは俺だけではないはずだ。
我が家も例に漏れず、エアコンをつけ、西日の煩わしさから逃れるため、カーテンを閉め。
「暑いな」
という言葉が、口について出てきてしまうのだ。
「お外、暑いですよね。」
アリスちゃんも俺のベッドにゴロゴロとして、足をパタパタさせている。
試験の終わった後の土曜日ともなれば…。
「ゴローンです。ゴローン。ゴローン。…」
楽しそうにだらけていた。
アリスちゃんを尻目に冷凍庫からアイスを取り出す。
モチモチの皮の中にアイスが入っている。
ベリベリと包装を開け。
プラスチックのピックでさして。
アーンと一口食べようとしたときのこと。
目の前に瞳があった。
真摯な瞳の見つめる先はただ一つ。
真っ白な大福だ。
「美味しそうですね?」
言い終わると同時に、ゴクリと聞こえ。
アリスちゃんの細い首筋が波打つのが見られた。
「食べる?」
大人だからね。
尋ねて。
ピックに刺さった大福アイスを差し向けて。
アリスちゃんはコクコクとすると。
大福アイスを半分程食べて。
モグモグとしていた。
食べている時のアリスちゃんは幸せそうで何よりだ。
「美味しい?」
「…アイスの外側の皮の部分がいい味だしてますね。二つ合わさって独特な演奏を奏でていますよ?」
食レポを始めた内の子。
こういう時は真面目な顔をする。
「アイスって素敵ですね?」
そう言ったアリスちゃんの顔はどこか恥ずかしそうで。
俺から食べかけのアイスを取ると食べてしまい。
「アイスをどうぞ」
と言ったアリスちゃんは、
「アーン」
もう一つのアイスを俺に差し出し。
「アーンですよ?ケン君?」
戸惑っていると。
ちょっとプクッとした頬の彼女。
仕方なく半分食べて。
残ったアイスを見つめる彼女は食べかけをも食べてしまった。
なんということだ!
その後、恐る恐る、
「アリスちゃん?」
と声をかければ、
「こういうのって、間接、キス、っていうんですよね…」
と呟いていて、自分の世界にトリップしている彼女。
実を言うと。
気付いていないわけでは無いんだ。
気付いているよと伝えていいのかわからない。
ただ、気付いてしまって、その後のことが分からないんだ。
今の関係は壊したくないから。
アリスちゃんの恥ずかしそうにしていっている様を見て。
俺は何となく。
アイスと、愛す、っておんなじ音だなと思い。
「愛すって素敵ですね」だったのかな?と。
どうしても思ってしまうのだった。
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