14. 母の声を聞いて
「折角ですから、校内を案内しましょう。」
そう爽やかエルフは言った。
「教室しかありませんが…」
キョトンとする俺達。
「グラウンドと魔術施設等は埼玉の所沢に有りまして…」
成程。土地ないもんねー。
「二階からが教室になります。」
そう言ってエルフさんはエレベーターのボタンを押した。
案内板は…
□□□
8F幼稚園
7F小学校
6F中等部
5F高等部
4F専門学校
3F共有施設
2F共有施設
1Fフロント
BF1SHG本部
BF2SHG本部
□□□
「上から順に見ていきましょう。」
押されるボタンは6F。
フワー
浮遊感があるよね、エレベーターって。
"6F, door is open."
無駄に英語なエレベーター。
「ここが中等部のフロアです。アリスさんはここの1学年ですね。」
「あのー、クラスって一クラスですか?」
「流石に何クラスも異世界から来ているなんてことはないですよ…多分」
おい!確証ないのかよ!爽やかエルフ!
その後は、高等部を見て、専門学校区域を見て、各種施設 (視聴覚、保健、実験、音楽、美術室、食堂等)を見た。
なんだ、普通のビル型私立学校だね。
「食堂はワンコインで食べられるので、保護者の方々からも好評ですね~」
エルフ。意外と饒舌だった。
一階に戻ると、
「アルフレッド様ー」
と、ケモミミお姉さんがルンルンと駆けつけた。
「魔信話、空きましたか。ありがとう。ルクシナ。」
そう、爽やかエルフが言う。
「~ふふーん、アルフレッド様~」
ご機嫌で去っていくケモミミお姉さん。
やっぱりマスクなのか、甘いマスクがそんなに良いのか?
「それでは、向かいましょう。」
キリッとして誘うエルフ。
抵抗感を感じた俺は悪くないと思う。
目の前にはあるのは電話だ。
断じて魔術的なやつじゃないと思う。
つ、つ、つ、…つ、カチャッ
ピピピ…ピピ。
トルトル…トル
トルガチャ
「はい!フリーデルです。」
「…お母さん…?」
「つ!そんな、そんな、もしかして…」
「アリスだよ。」
「……本当に、アリス、なの?」
瞳から流れるのは涙。
やべぇー、見てられない。
どうしよう。
あれっ、目から汗が…
「ティッシュならありますよ?」
そう、箱を差し出してくるエルフ。
キザすぎてウザいねこいつ。
「あっそうなの?」
「~から連絡があって…」
「今、地球の、聖ゲルトルード学園に居て…」
「えっ?どこだっけ?…どうやって生活してるの?」
「保護してくれた人が居て…そこでお世話に…」
保護したことになってるwww
「そう、まあ、元気でやりなさい。」
「うん!」
ガチャ…ツーツーツー
うん?
早くない。
ねぇ、早くない?
いいの?こんなに早くて?
「ありがとうございました。」
「いえ、どうも。」
未だ赤みの残るアリスちゃん。
「あんなもんで良かったの?」
そう尋ねた俺に、
「エルフツクールから知らされてはいたそうです。」
「えっ?」
「お宅の娘さんを取引しましたって…」
「…」
「寧ろ、こちらの方が安全そうだから此方でお世話になりなさいと…すいません…」
お兄さん、異世界の闇を見た気がしました。
この日、アリスちゃんは聖ゲルトルード中学校に入学することが決まった。
翌週の月曜日から登校。
そして、俺のボーナスは完全に消えた。
おかしい…。
下記<オンラインノベルを科学する>シリーズよろしくお願いします。
「異世界で改革を"させられている"主人公たちに関して~構造的に見ていく」
https://ncode.syosetu.com/n1207fp/
「留まるところを知らない承認の病~異世界に行った主人公たち」
https://ncode.syosetu.com/n2834fp/