13. 爽やかな受付のエルフさん
リゴリゴリンゴーン
建物に入ると、変わったメロディーが流れた。
「あっ!ゲルトグラードの聖ゲルトリア教会の鐘の音ですね!これは!」
さいですか…
その時だった。
パチパチパチ…
拍手の音。
そこには、爽やかな、人の良さそうな男がいた。
金髪の髪。
ピシッとしたスーツ。
どことなく光輝くオーラ。
俺はちょっと好きになれないが…。
そして、彼もエルフらしい耳を持っていた。
「ようこそ、ゲルトルード学園へ。」
彼は俺達の方に近づいてきて、
「そちらのお嬢さんが入学希望の方ですね?」
と訪ねてきた。
「はい…」
連れられてきたのは、総合窓口と書かれた個室。
俺、このブースに既視感を覚えた。
そうだ、金融機関だ!
金融機関で、「お金のことでお困りのことありませんか?」とか、「投信やりませんか?」とか、聞かれて通されるブース。
いつの間にか買うことになっていた債権。
たまに「お付き合いください」と頭を下げられることも…。
いや、今回は違う。
アリスちゃんに関して、わからないことだらけだからな…。
差し出されるのはカラフルなパンフレット。
□□□
学校法人ハンター学園 The Member of SHG
聖ゲルトルード学園 入学の手引
~"今日から始める、聖ゲルトルードの教育"~
□□□
と題されていた。
見えるのは定着・勤勉・自立の理念。
普通だね。
「それでは、えー、まず。当学園に関して説明する形でよろしいですか?」
「はい。お願いします。」
アリスちゃん、元気になりましたね…。
「当学園は、異世界、特にゲルトルード王国から来た児童生徒が通っております。…」
「…当学園は文部科学省の認定を満たした学校です。教育基本法第6条記載の法律に定める学校になっております。」
「…そのため、当校の卒業は則ち一般の義務教育課程の修了や、高等学校の課程を修了したことになります。」
「…ですので、高等部を卒業すれば日本での大学受験資格を持つことになります。また、ゲルトルードバカロレア認定校であることから、ゲルトルード王国での王立魔術院への入学資格、推薦状が交付されます。」
うん?
「ちょっと待て!その、なんとかバカロレアってなに?」
「こちらの世界に来てしまった子女が、仮に向こうの世界に渡った時に、勉強をしてきてますよ、という証明を与えるという意味です。」
「向こう版の大学受験資格みたいなものか?」
「あぁ、その認識で大丈夫ですね。」
彼は続けた。
「魔信通信で本国に確認をとって設けた制度なんで、勝手に作ったものではないんですよ。」
「あっそうなんですか」
その時だった。
「魔信通信あるんですか?」
アリスちゃんは差し迫った顔をしていた。
「ええ。ありますよ。空間転移はまだ難しいのですが…」
「あの、お借りできませんか?実家に連絡したくて…」
「ええ、構いませんよ。ただ、今のところ使っているみたいなので、細かい話が終わってからでも良いですか?積もる話があるのですよね?」
「はい…」
「14:00までには開けるようお願いしておきますから。」
そう、エルフさんは言って、バックヤードに伝えに行った。
ふと、横を見ると、ちょっとだけ頬が赤いアリスちゃん。
あれ? お兄さんの勘違いかな?
駄目だよ!
ああいう、甘いマスクの奴に限ってあくどいんだから。
お兄さん、アリスちゃんが攫われたのは必然だと思うんですよ…。
いいね!と思ったら評価・ブックマークしていただければと思います。
そうすると筆者のMotivationが更にUpします。