10. ルカさんはやっぱり…
エルフィンローズ。
昨日ぶりのお店だ。
カランッ!
店内は静まっていて。
マスターがこちらを見ていた。
「昨日の兄ちゃんか…そうだな?」
「えぇ、…そうです。」
隣のアリスちゃんは固まっている。
人見知りなのかな?
「まずは、…そうだな。嬢ちゃんがエルフなんだな?」
静まる空気。
「いや、なに、心配するな。…そうだな、ルカ!こっちに来てくれ!」
奥に向かって、マスターは声をかけていた。
「はーい!」
出てきたルカさん。
いつも通りのエルフ耳。
「あら?昨日の人じゃない?それに…」
いぶかし気な視線をこちらに向けるルカさん。
「…何かしら、懐かしい魔力を感じるわ…」
そして、こちらも同じく、怪訝な眼差しのアリスちゃん。
「同族の予感がする…」
そして、視線があったルカさんとアリスちゃん。
「「もしかして、エルフなの?」」
とハモっておられました。
…ルカさん、エルフだったんですね。
マスターはコーヒーを淹れてくれた。
向かい合う俺たち。
「それで、どうしたの、そのエルフの女の子は?」
「いやー、通販で買ってしまいまして…エルフツクールなんですが…」
そう答えた俺に、ルカさんもマスターも。
やっぱりなという顔をしていた。
「私もね…」
そう続けるマスター。
「…3年前のことだったよ。高級フィギュアを購入したと思っていたらルカが届いたわけだ。」
フムフム。
「あの時はビックリしたわ」
と言うルカさん。
「だって、気が付いたら、マスターが私の体を舐 (ワー、ワー聞こえないなー!!)」
マスター…残念な人だったんですね?
なんでも、マスターも今の僕と同じような経験をして、ルカさんと出会ったらしい。
エルフツクール。そしてカリウドグループ。
そこから購入したんだとか。
当時、マスターはここで出店準備をしていたらしく。
秋葉原という土地をならば、ルカさんもお店で働けるんじゃないか?と思ったらしい。
ルカさんが義務教育年齢よりも高かったため、手続きだけして、現在まで一緒にいるとのこと。
確かに。秋葉原なら何でもありだ。
それよりも、今の生活はどうなんだ?
「どうやって生活してるんですか?」
と聞けば、秋葉原だけなら、もうエルフ耳でも、大丈夫よとのこと。
UDXの警察官とも笑って話せる間柄らしいです。
マジで?
秋葉原最高だね。
「それで、…どうすればいいのか? という相談よね?」
「そうなんです。アリスちゃんは12歳だとは聞きましたが…住民登録とか…学校とか…どうすればいいのか…?」
そう訪ねた俺にマスターが言った。
「それなら、知り合いがいるから、というか、機関があるんでな。」
マスターは言った。
「実は此方にも異世界の方が送られてくるから、対策はされてるみたいなのよ。」
と、ルカさん。
「ゲルトルード王国出身の子で、学校に行ってる子もいるのよ?」
本当ですか?
いや、安心。ん?安心なのか?
「…因みに帰る方法は…」
途端に固まる空気。
あっ!これ聞いちゃダメなやつだったー。
「…今は生活していくことを考えるべきよ。」
そう、ルカさんに窘められた。
あー、すいません。何時も余計な口だけ回るんです、俺。
そして、やっぱり。
無いんですね。帰る方法は。
アリスちゃんは泣いてなかったけれど…どこか見てられない感じだった。
ちょっとこれは、不味かったな。
「この世界は、魔力はないし、空間移動の技術がないから、私たちの世界からは一方通行みたいなのよね。今のところ…」
ルカさんはため息を吐いていた。
2019/6/29 下記文章を11話に移行しました。よろしくお願いします。
住民登録など諸々のことは聖ゲルトルード学園という、末広町の方にある学校で、いろいろ教えてくれるはず、とのこと。
そう言われた。
俺達はエルフィンローズを後にした。
こうして、今日、土曜日はまだまだ続く。