第三章 俺が好きなのは――…… -4-
雪が降る。
今年の初雪だ。今までにないほどに冷えた空気に身を投げるように、誰もいない教室で窓を開け放ち、その雪をじっと眺めていた。
聖鷹祭はとっくに始まっていた。祭に浸る気分でもない俺は、鈍い色をした空をただ見上げていた。
綺麗なのに、くすんでいる。
そんな矛盾した空が、不思議と今は何よりも自然に思えた。
「――答えは出たか?」
そんな俺の背を叩く声があった。――声で分かる。蒼生だ。
「……お前、生徒会長だろ。ここで油売ってていいのかよ」
「俺が楽しむために生徒会をやっているんだぞ? 祭に俺の仕事を入れるようなヘマをするわけないだろう」
そう言いながら、蒼生は俺の顔の横に串に刺さったリング状のフライドポテトを差し出した。
「昼飯、食ってないだろう?」
「今は気分じゃない」
「そうか」
あっさりと引いた蒼生はそのポテトをそのまま自分の口に運んでいた。
とっくに午後を回っている。聖鷹祭はクリスマスイブのパーティで、文化祭とは違いかなり夜にさしかかるまで開かれているが、それでも次第に祭の終焉が見えた頃だ。
約束の時間は、もう近い。
――屋上へ向かえば、高嶺が待っている。
――体育館へ行けば、遊奈が待っている。
答えは、出ている。
だから後は、俺が覚悟を決めるだけだ。
「――……よし」
小さく呟いて、俺は立ち上がる。
こんな自分に好きだと真正面から告げてくれた二人の想いを前に、逃げるなんて真似は許されない。だから覚悟なんて、本当はとっくに決まっていた。
きっと救いなんてない。今からはきっと間違いしかない道を進む。それでも、俺にはそれくらいしか出来ないから。
自己満足だと蔑まれようと、それでも、俺にはそんな道しか分からないから。
「……行くのか」
「あぁ。――悪かったな、色々と迷惑かけた」
「まったくだ。あんな贅沢な悩みを聞かされる日が来るとは思わなかった」
そうやって笑う友人に背を向けて、俺はひらひらと手を振った。
そして、俺は――…………




