ぷろろーぐ
【いじめ】
これは、どの年代であれ一度は経験し、目撃したり、耳に入ったりする言葉。
いくら〘いじめをなくそう!〙と言ったり行動したりしても、なくならない。
いじめに加担した側が、謝っても許せれる程浅くない傷を心に負い、身体を自ら傷つけ逃げる若者がいるのも事実。
また子供同士からではなく、教師からいじめを受ける者もいれば、親や親戚、近所の住民からなんらかの形でいじめを受ける者もいるのも事実。
「いじめられる方に非がある」だの「もう少し強くなれ」や「頑張って学校に来い」と言う言葉は、いじめを受けてる側にとって苦痛の言葉。
されてる側の傷みなんて、同じ傷を受けてないとわからないのに、さもその傷みを知ってそうに言葉を掛ける。
この物語が、実際に【維持】を受けた子達の言葉やされた事を組み込んであります。
桜の蕾から少しずつ花が開く頃、僕たち家族はお父さんの転勤で、ここ宇部市に越してきた。
バタンッと大きな音を立て、
「「「「ありがとうございましたっ!!!!」」」」と凄く元気な挨拶をして引越し業者の人達が、戻っていった。
「いよいよ、だな」
「えぇ···」
「······。」
『この転勤が、最後になるから! 家を買う!』と去年の夏に辞令を貰ったお父さんは、お母さんの実家である宇部市に家を建てた。
相変わらず、うちのお父さんとお母さんは、仲が良くいまも後ろに僕がいるのを完全に忘れて仲良く手を繋いでいた。
「よしっ! 写真撮るぞ!」
「また?」とうんざりする僕と呆れつつも喜んでいるお母さん。
ピピピピピッ···カシャッ···と小さなカメラは、門の前で仲良く笑う僕達家族を収めていった。
「苦労かけるけどな···」
「はいはい。ほら、圭吾も呆れてるから」とお母さんは、僕をエサに言い我先にと家の中へ入る。
「お父さん!」と僕が言うと、慌てて小さな階段を昇りコケた···
この日は、引越し初日でもあったけど、家族で隣近所に挨拶に行き、夜になって町内の自治会長さんへ挨拶に行った帰りに···
わんっ!
ゴミ収集場所に捨ててあったダンボール箱の中で暴れていた小さな仔犬を拾った。
「酷い事する人もいるもんねぇ···」お母さんは、ダンボール箱についていたガムテープを見ながら言った。
この仔犬が入っていたダンボール箱は、空気穴もなく、上下ガチガチにガムテープで塞がれていたから···
「ほんとだな···。小さな命を消そうとするなんて」
「うん。そうだ、マロだ! な!」
床の上で一生懸命に牛乳を顔で飲んでいる仔犬の名前を考えていた僕は、目の上がちょこんと白っぽくなっている顔を見て、名前を付けた。
「マロ? どうして?」お母さんは、笑って僕に聞いて、顔の事を話した。
「涼子。あんま無理するなよ?」お父さんは、ソファに座ったお母さんを見て言う。
「大丈夫よ。もう安定機に入ったんだし···。それに、今日から小さいけどヒーローが二人も増えたからね」
「そうだな。圭吾もある程度はわかってきただろ?」とマロから目を離さない僕に言った。
「うん。ちゃんと勉強したよ? 学校の先生にも聞いたし、おばさんにも聞いた。秋なんでしょ? 僕の妹が産まれるの」
そうお母さんのお腹の中には、僕の妹がいる。妊娠5ヶ月になった。その妹の部屋もちゃんとあって、お婆ちゃん達がいつ来てもいいように客間もある。
「そうよ。暑くもなく寒くもないし、過ごしやすい季節···」
わんっ!
マロが、牛乳に満足したのかタオルで顔を拭き終わったら、お母さんの足元に寄って寝ようとした。
「判るのかなー?」
「動物は、安心出来る相手がわかるんだろ? でも、お前が寝るのはこーこ!」とまたダンボール箱に戻されたマロだったけど、箱の中には小さな毛布が敷かれていて、すぐに丸くなってしまった。
「明日、マログッズ買いに行かないとな」お父さんは、スマホで何かを検索していたのか、画面を僕に見せてきた。
「そうね。圭吾の学校にも行かないと···」
新しい生活ではあるが、必要な制服とかは従兄弟が前に着ていたお下がり(だったの? 新品)をおばさんから貰ったりした。
「よろしくな。マロ」
ぐっすりと眠りこんだマロ箱を起こさないように僕の部屋へと連れていった。
「必要な物は、もう出してあるから、まだ他のはいいや」僕の性格は、ある意味お父さんに似ている。面倒くさい事はすぐに後回しにする性格。
「疲れたから、寝よう」
部屋の電気を消し、直ぐにベッドに潜ると眠りの妖精が襲い始めた···