ニンバス視点
何となく書いた。
我は、この世界でただ一人で朽ちる運命だと分かっていた。それが、神獣として生まれた我の運命なのだから。だが、それを否定するかのように、そいつは現れた。
最初は、世間知らずの奴が、この住処を壊しているのかと思った。そして、其奴に念話を送った。しかし、中々反応しない。我慢ならず、大声で呼びかけたら、驚きながら反応した。
最初は罰でも与えようと我の元まで呼び出した。
そして来たのが、スライムだった。
最初は、我の目を疑ったが、鑑定してみてわかった。こいつは、《転生者》と言うことに。何の因果か、この世界にスライムとして転生したようだ。
500年生きてきて、ここまで面白い事は無かった。
何より、このスライムに興味を持った。
そうだ、この者を育てよう。そして、受け皿として完成した時には、この者に我の魔石を喰らって貰おう。
我は人間が嫌いだ。だが、この者は嫌いにはならない。それどころか、惹かれる。何にかはわからないが不思議と惹かれるのだ。
人間が醜い争いをして死んで行くのはどうでも良い。だが、この森の魔物を殺すのは、許せない。ならば、この者を鍛えて我の力の受け皿にし、この森を守って貰おう。
少なくとも最初は、そう考えていた。
しかし、このスライムと暮らしている内に、さらに惹かれた。まるで、我がこの者を待っていたかのように。今までに感じたことのない感覚だ。だが、悪くは無い。自分にも、心があったのかと思うくらいに心が温かい。ずっとこのスライムと居たい。気がつけば、そう思えるまでにこのスライムに惹かれて居た。
だが、周りの環境がいくら変わったからと言って運命まで変わらなかった。
自分の体は自分で分かる。もうすぐ我は死ぬ。
何故だろうか、今までは感じなかったのに、今になって死にたく無いと思っている。
やはり、このスライムは自分にとって危険だったのか?いや、違うな。このスライムに出逢えたからこそ、この感情を抱けたのだ。
何処の誰だかは知らぬが、感謝しよう。このスライムを、我に合わせてくれた事に。
そして、憎もう。我にこのような感情を、死ぬと言う恐怖を与えた事に。
そして、嫉妬しよう。このスライム……レイの未来を見られる世界を。
そして、祈ろう。レイの未来を。
我はもうすぐ、この世界から消える。だからこそ、この時を楽しもう。そして、この感情を抱いたまま死のう。
このスライムに、看取られながら。




