元完璧超人、レベルを上げる
気がつけば、二日が過ぎていました。
いや本当、すみませんでした。
(ニンバス様、さっきのオーガは?)
『こやつは、暴食に侵されたオーガじゃ。オーガの王であるオーガキングが、暴食の種を開花させたのじゃろう。』
(じゃあ、暴食の魔王はオーガキングに?)
『いや、それは違う。オーガキングは恐らく、まだ暴食の魔王には至って居らん。じゃが、危険な状況なのじゃ。暴食の種子をオーガにばら撒けば、この森で勝てる者は居なくなる。そうなると、生態系が崩れるじゃろう。』
(じゃあ、今すぐ行かないといけないのですか?)
『ふむ、今はまだ幸いにも、侵食レベルが低い。恐らく、お主がこの洞窟を出るまでは持つじゃろう。早めに手を打つのも悪くは無いんじゃが、お主が無事で帰って来れる保証は無い。』
確かにそうだ。誰だか強くなったからと言って、まだこの世界に生まれたばかりだ。知らない事が多過ぎる。そんな中で、異常事態を解決しろなんて、無理ゲーにも程がある。ならいっそのこと、今出来ることを考えて実行した方が、確率は確実に上がる。
『お主にはこれから、レベル上げをして貰うぞ。』
(レベル上げ?)
『うむ。魔力のある者が倒された時に、世界に還元される分を除いたものが、レベルを上げるための経験値となる。当然、相手が強ければ強い程、得られる経験値は上がる。それ以外の経験値の取得方法は、経験値と言うのだ、当然新たなる経験によっても得られる。その場合、経験した事によって、世界に還元された魔力より、経験値として取得出来るのじゃ。』
(ん?でも、どうしてそのような機構が出来たのですか?)
『そこはまだ分かっておらんのじゃ。今言われている説と言えば、神による創造説じゃな。真相は分かっておらんが。』
(ふむふむ、つまるところ、敵を倒せって事ですか?)
『うむ、そうじゃ。理解が早くて助かるぞ。よし、では行くぞ!』
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
あれから三週間が経った。
ニンバスの『門』から出てくる魔物をただひたすらに殺し続けた。こんな時に、身体的に疲れない事と眠らなくて良い事に便利さを感じるのと同時に、何処か虚しさも感じる。その度に感情を押し殺し、ただひたすら、前の敵に集中した。
いつのまにか『絶食』は『暴食の罪』に変わり、魔王へと近づいて行っている事が分かった。
それでも俺は、この時が続くと思っていた。
だが、ニンバスだけには分かっていた。いや、レイにも分かっていたのかも知れない。しかし、その事を認めたくなかったのだ。
ニンバスは既に魔法を使うのが難しいほど、死期に近づいていたのだ。
もうすぐ、この章も完結し、新たなる章へと近づいています。




