一番聞きたい事は最後に聞け
最後まで読んで頂けたら幸いです。
周囲の景色は池のある日本庭園で水面に映る月が映っていてとてもきれいな景色だったが俺には景色を楽しむ余裕がなかった。理由は簡単でこの景色にまるで見覚えがなくどうやってここに来たのかさえまるで覚えていなかったためだ。そもそも何時からここにいたのかさえ分からないし、寝ていた訳でもなくいきなりここに立っていると言う訳のわからない状況だ。
「立ったまま寝てたのか?」
「寝てたと言うか、呆然自筆って感じだったね」
「‼︎」
誰もいないと思っていたためびっくりしたが、声のした方を向くと黒い和服の少女が立っている。
「久しぶり。元気にしてって、元気にしてないからここに居るんだよね」
久しぶり?少なからず目の前の少女に見覚えはない。と言うかよくよく考えると俺、全然記憶無いんだがまさか記憶喪失か。この少女は俺の事知ってるみたいだから聞いたら何か分かるか。でもどうやって聞くのが正しいんだ、下手に聞くと単にこの少女の事を忘れているのを無理矢理ごまかそうとしているみたいになる気がするんだが、やって見るしかないか。
「あー、その、俺、記憶喪失みたいなんだけど、俺の名前とか教えてくれない?」
「??真面目に言っているみたいだね、ちょっとこっちに来てね」
少し首を傾げられたが、上手くいった様なので少女に近ずく。
「ちょっとじっとしててね」
「!?」
(なぜ、俺の頭を抱えるんだ、なんかいい匂いが、頬に柔らかいものが、これは事案じゃない、まて、落ち着け、落ち着くんだ。きっとこれには意味がある。俺が忘れた何かがあるに違いない。だから俺は平然としていれば問題ない。そうだろう。そうだな。そうにちがいない。)
「うん。分かった。」
(何が分かったんだ?だがやはり平然としていれば問題なかった様だな)
「零君は誰かに記憶を消されているみたいだね」
当然の様に彼女は言い放つ。
「記憶を消すなんてそんな事できるのか?」
「難しいけど不可能という事はないし、特に零君は殺されたからその時になら比較的簡単に出来るね」
まるで分からないので一つずつ聞いていく。
「待って」
「うん」
「俺が零君だよな」
「そうだね木崎 零が零君のフルネームだね」
「『零君は殺された』って言ってなかったか」
「うん。零君は忘れているだろうけど殺されているね」
「俺、生きてるんだが」
「死んでるよ、ここは私、氷花の世界で零君は魂だからそう感じるだけだね」
「???」
少女はそうだったという様な顔をすると。
「記憶がないんだからそれだけ言っても分からないよね。順を追って説明するね、まず私の銘は氷花いわゆる付喪神で日本刀の付喪神だね、呼び方は氷花って呼び捨てで呼んでね。で、さっきも言ったけどここは私の世界、まあ神様ワールドって所だね。ここまでは大丈夫」
「日本刀の付喪神って事は神様なんでs」
「敬語はやめてね」
「分かったよ。じゃあ大丈夫」
「この状況で聞きたい事が言葉使いだけと言うのは相変わらず冷静だね、変わっていなくて嬉しいよ」
「そう言われれば冷静かもな、まあ頭がついて行ってないだけかもしれないが」
「余り脇道に逸れている時間もないから次の説明に行くね。次になぜ私の世界に零君がいるというとね、零君が生きている時に私と知り合って私と契約をしたからだね。だから私の世界に入る事が出来るわけだね」
「待って、契約って具体的にどう言うものなんだ」
「『私は零君が死んだ時に零君を異世界で復活させてチートをあげる、零君は異世界で私を思いっきり使う。』だね」
「俺が言うのもなんだが俺にメリットばかりで、氷花にメリットがぜんぜんない様に思えるだが」
「そんなことないよ、良い人に思いっきり使ってもらうのが『物』としての喜びだからね、現代日本は日本刀には平和すぎるし、しょっぱい腕前の人には使われたくないしね、メリットしかないよ。むしろ零君こそ日本刀である私を思いっきり使う様な生き方しか出来なくなるデメリットがあるのに良かったの?」
「俺の考えとしては人を積極的に切りたいとは思わないが、異世界で魔物との戦いは面白そうだと思うぞ」
「本当に変わってないね」
「そうなのか?覚えてないから分からないが。そういえば、さっき殺されたって確信を持ってたみたいだったがなんでなんだ」
「それは単純に記憶を消した時に残った痕跡から分かっただけだね。他に質問がないなら異世界に行こう」
「今思ったんだが異世界には魔物いるのか?」
「もちろんいるから心配ないよ、ちゃんと剣と魔法のファンタジー世界だから安心して」
「じゃあ、後で分からない事があったらその時聞くよ、でも最後に一つ聞いて良い」
「良いよ」
「その言葉の最後がやたら〜だね。とか〜ね。で終わるのは口癖か?」
「そうだね。だけど、それが最後に聞く事?」
「いやせっかくかわいいんだからもっとかわいい話し方の方が良いと思っただけだ」
と言うと真っ赤になって、そっぽを向いて
「そう言う所は変わった方が良かったね」
などと言われてしまった。
「まあ良いや、気を取り直して。いざ異世界!」
改善点、要望があったらお知らせください。