兄妹喧嘩は程々に
投稿開始1周年記念なのでいつもとちょっと雰囲気を変えて三人称視点で書いてあります。
いつもの倍以上あるので読むときはそれなりに気合を入れて読むことをお勧めします。
9月13日 昼
三人称視点
田舎にある大き目の家と言った見た目の家から零とまだ黒髪に黒い目をした凛が言い争う声が響いていた。
「日にちを勘違いしてて凛の誕生日をすっぽかしかけたのは悪いと思うけど3時間もグチグチ言うことはないだろ!」
「忘れといてその言い草はひどいんだよ」
「いや忘れてはいないって」
「結果的に変わってないんだよ」
日付を間違えていた結果として誕生日をすっぽかした零に対して凛が怒っているようだ。しかも、3時間に及ぶ文句の結果零の方も大概機嫌が悪くなって来ている。
このままでは喧嘩になるのも時間の問題だろう。
「まあまあ、二人とも落ち着こうぜ。つーか2人が喧嘩とかシャレにならないからな!俺は死因が兄妹喧嘩に巻き込まれて死亡なんて御免だからな」
2人を止めたいようだが自分の願望がダダ漏れな上2人は気にも留めていないので効果のほどはお察しだ。
「いやいや、誕生日自体は忘れてないからな、プレゼントも準備してあるしコロッケもあるぞ。まだ材料だけど」
「それでもあの『えっ今日だっけ?』ってセリフと私の受けたショックはなくならないんだよ」
「それについてはもう数えきれないくらい謝ったろ」
零の理論は理解できないでもないが謝罪と言うのは相手が許してくれなければ意味のないものだ。
「まだ4桁行ったぐらいしかしか誤ってもらってないんだよ、5桁はお願いしたいんだよ」
そうは言っても10秒に1回ぐらいのペースで3時間も謝っても一向に機嫌の良くなる気配がなければ気が立ってくるのもまた仕方のないことだろう。
「十分だろ」
「十分の一だよ」
「微妙にかぶせて来るなよ」
基本的に仲が良いお陰でギリギリのラインで実力行行使までは行かないようだ。
「えー、それがダメなら今日一日私を椅子にするとかが良いと思うんだよ」
「どの辺りが良いんだよ!と言うかその性癖は辞めろって昔から言ってるだろ」
「お兄ちゃんがこんな体にしたんだよ」
そう言う凛には幼げな容姿もあって誰かに聞かれたら『お巡りさんこいつです』と言わるだろう社会的な破壊力があった。
「人聞きの悪いことを言うなよ。と言うかそれってもしかしてあれか、訓練の時のことか?」
「そうだよ」
「お前最初のころから結構悶えてよな」
「キノセイダヨ」
凛の発言は誰が聞いても嘘だろうと分かるような酷いものだった。
凛がそんな白々しいことを言い出したタイミングで転機が訪れた。
因みにその転機に一番に気付いたシランは
『どうすりゃ良いんだ』→『どうしようもないだろ』→『ああでも放置できねえ』→最初に戻る
を繰り返していた。
「ん?これで終わってくれるか?」
「零君、凛ちゃん、こんにちはね。それでこれはどう言うことね?」
そこに来たのは氷花だった。
「ああこんにちは、取りあえず……シラン説明しといてくれ」
「こんにちはだよ。氷花ちゃんをもてなすのは取りあえずシランに任せるんだよ」
「任せとけ」
シランはニヤリと笑ったが言い争うのに夢中な零と凛の方を向いていて氷花の方からは見えなかっため誰も気づくことはなかった。
『これはチャンスだ、俺じゃあ零さんや凛に無視されるが氷花なら無視されないはずだ』
シランはそんなことを内心で考えてから次にどうやって氷花に説明するべきか考える。
『ありのままでも良いかも知れないがそれで万が一にも零さんに付かれでもしたら折角の凛の誕生日が嫌な日になっちまう、それは何としてもさけてぇ。
かと言って凛の方に付かれても面倒だ、零さんの性格的に拗ねるってことはないだろうが気分は良くないはずだ。
今後のことも考えれば上手く氷花が2人の間を取り持つ、それが理想だ』
「まあ、見ての通り凛と零さんが珍しく派手にもめてる訳だが……この原因って言うのは零さんの不注意と凛の不注意が重なった結果でな、出来たら氷花に上手いこと仲裁して欲しいんだ」
シランは『これならどっちも悪くないように聞こえるだろ』などと心の中でドヤ顔をしてる。
「うーん、そう言うことなら完全燃焼させれば良いね」
「えっ?」
完全燃焼?響きとしてはやりきることなど悪い意味を持つ日本語ではない、科学的に言うなら十分に酸素が供給された状況での燃焼になるがこれは関係ないだろう。
ただ現状においては物凄く不安になる表現だ、最もそれに気づいてるのはシランしかいないのだが。
「2人ともそんな言い争うだけだとイライラが募るだけね。こういう時は実力勝負でどっちが正しいかはっきりさせるね」
「はいアウトー!」
シランは思わず天を仰ぎ見ているが、他のメンバーは好感触だ。
最ももしここに未来の氷花が居たら自分に対して『心臓に悪いことをするんじゃないね』とドロップキックをかましただろう。
「じゃあやるか、妹の全力も知っておきたいしな。それにたまには思いっきり暴れるのも悪くないよな」
そう言いながらいつの間にか普段着から氷花の作った着流しに着替えていた零は氷花を腰に差す。
「私もお兄ちゃんの全力には興味があるんだよ、と言う訳で空間作っておくんだよ」
そう言って凛は特殊空間に入って行く。
「行くか、そうだシランは「大丈夫です!」そうか」
そう言ってから零が凛の作った空間に入った。
1人残されたシランは心の底から安心した顔をしていた。
一方特殊空間内部では零が入った瞬間に先制攻撃として凛は【熱血球】を撃った。
【熱血球】は血液魔法で爆発したりはしない野球ボール程の赤く発行する玉を放つ魔法で、総評としては弾速は早いものの誘導性はなく熱量は高く貫通性には優れるが命中性には乏しいため止めなどに使われる魔法だ。
凛の放った【熱血球】その熱量は太陽に匹敵するもので貫通性はすさまじく一発で軽く地殻を撃ち抜けるぐらいの威力がある。
しかし零はそれを殴り返す、気功や魔力による強化があるとは言え化け物と言われるのも全くもって納得としか言いようがない。
「うわ~、素手で弾ける様な魔法じゃないはずだよ」
「強化してるから素手と言っていいのか分からないけどな。それよりもいきなり奇襲はないだろ」
「だってよくよく考えたら相性が悪いんだよ、だからこのぐらい良いと思うんだよ。【禁術発動】」
その瞬間まずの零の顔は(#^ω^)ピキピキと言ったところだろうか、ソフトに言ってブチ切れていた。
「殺しはしないから、覚悟しておけよ。【禁術発動】」
「ゴクッ、グベッ」
凛が零の『覚悟しておけよ』で妄想が捗りかけた瞬間に零の蹴りが凛の腹に突き刺さり、凛が吹き飛ぶ。
「っ!【血風】」
本来は風で距離を取る魔法だが凛の撃つそれは強力すぎてもはや衝撃はとなっているが、放つほうが規格外なら受ける相手も規格外なので結局普通の効果になると言う結果を生む。
「【弾幕式熱血球】」
弾幕式と言うだけあって無数の【熱血球】が飛んでいく、先ほどよりも【禁術発動】お陰で速力、熱量、貫通力が飛躍的に向上していて、凶悪な魔法となっている。
しかし、零はすべての魔法を躱しているので時間稼ぎくらいにしかなっていない。
「【空間穴】」
しかし、その稼いだ時間で凛の魔法を発動するのに必要な時間はカバーできた様で強力なブラックホールを放つ魔法を零に撃つ。
「魔法を信頼しすぎると痛い目を見るぞ」
そう言うと同時に零は刀を振りブラックホールごと凛を切り飛ばす、零の斬撃を腰に諸に受けて凛は上半身と下半身に切り分けられる。
「普通に考えて200メートル先まで一振りで切り裂くお兄ちゃんが例外なだけだよ【転移】」
普通に考えれば上半身だけで元気に文句を言う余裕がある凛も大概であるのだが凛はそれに気付いていない。
凛は捨て台詞を残して地球だったら銀河系から飛び出るぐらい遠くまで逃げて下半身と服を再生する。
それだけ上空に逃げたとは言ってもこの世界は凛が作った特殊空間なのでいくら地面から離れようとも宇宙にはならない。
「【弾幕式熱血球】フフフ、さっきの一撃は良かったんだよ。だけど私はそんなのを食らうとついもっと欲しくなっちゃうんだよ」
零は転移のせいで一瞬凛を見失っていたが【熱血球】が来たのでそっちの方を探すとかなり遠くに凛を見つけたので【操氷】で足場を作ってそれを蹴り飛ばすことで上に飛んで行く。
「あれは、でかいな」
しばらくすると向かって方に太陽みたいなものが出来て急成長して行く。
「あれだけゆっくりなら大きくとも横から躱せそうだけど……まだまだ大きくなりそうだしなんか仕掛けがあっても面倒だ、切るか」
考えを改めた零はこれまで高速で上に向かっていたのを辞めて逆に地面に戻る。
「いくらお兄ちゃんでもこれを使えば結構痛い筈だよ」
零が受けることに徹しようと地面に戻ったのを見て凛は【弾幕式熱血球】を止めて今発動しようとしている魔法に集中する。
「大技は結構だが兄として負けるわけには行かんな」
そう言うと地面に付いた零は抜刀の構えで集中力を高める。
しばらく互いに集中に入ったため静かになるがその静寂は長くは続かなかった、凛の発動する魔法の高熱と集中する零の発する冷気によって周囲に突風が生じ始めたからだ、とは言え集中している二人は関係ないと言わんばかりに動じず力を高めていく。
「これが当たったら痛いんだよ【赤星落とし】」
【赤星落とし】は凛のオリジナルの魔法で。和名では赤星であるアンタレスを模した巨大な魔力塊をぶつけると言うもので、基本的には【熱血球】を魔改造したものと言って良い。
その大きさは太陽の約700倍で、地上から見上げるともはや球には見えず天蓋の様にしか見えない。
「…………………」
「さあ、押しつぶしてあげるんだよ」
零はまるで落ちて来ている攻撃に気付いていないかのように抜刀術の構えから変わらない。
「【氷燕一閃】」
真上に切りつけるために背面飛びの様な動きをしてから一振りで巨大な凛の魔法を真っ二つに切り裂く。それによって零の左右に【赤星落とし】が着弾する。
一見すれば零が勝ったように見える一面だがその実情は違った。
「魔法を切れるからってそれを過信してると痛い目を見るんだよ」
何故なら、魔法と言うのはイメージと魔力で出来ている。分かりやすく例えて言えばイメージと言う塗り絵の上に魔力と言う色を乗せるようなものだ。
そして零はその魔力とイメージを切ってるのだ、さっきの例えを使うなら、絵を構成している全てを切っているだからその絵は当然ダメになる、魔法で言えば霧散するはずなのだ、にもかかわらず魔法で作られた星は健在なのだ。
「【超新星爆発】」
二つに分かたれた星が大爆発を起こす、その破壊力と破壊範囲はすさまじく、零も避けることが出来ず中心で食らう。
「いや~ここまで爆風が来るんだよ、我ながらちょっとやりすぎた気がしないでもないんだよ。まあでもこれはただ破壊力があるだけだしお兄ちゃんを殺しちゃうことはないんだよ」
「いや~、それでも臨死体験ぐらいは出来そうだったよ。凛もどうだっ!」
そう言っていつの間にか後ろに回っていた零は凛をかかと落としで叩き落す。
なぜ爆発に巻き込まれた零がこうして元気に凛の後ろに立っているのかと言うと、爆発に巻き込まれた零は爆風に上手く乗って威力を殺しながら凛の後ろに回ったからだった。
そうは言ってもノーダメージとは行かず怪我もしたのだが、【再生】があるので今は多少煤けたぐらいに回復している。
「全く、兄としての威厳が丸つぶれだ」
ここまで出来てもつぶれるのなら、凡人の兄の威厳は微粒子レベルで探してもあるかないかになるだろう。
さて、ここまで来れば頭のいい読者なら察したかも知れないし、覚えてるかも知れないがこの2人は互いにバカみたいに再生力と生命力があるためいつまで経っても決着は付かないのだ。
そもそも二人ともこれだけやっておきながら殺意はないのだから化け物っぷりが良く分かると言うものだ。
それでも、無理に普通な所を探すとすれば兄妹喧嘩と言うのが不毛なものだと言うことぐらいだろうか。
それからの戦闘をダイジェスト風に軽く流すと、
凛が空間魔法で迷路を作るも零はそんなも無視してきり進む、凛は零が切り進んで来るだろうことを予想してトラップを設定しておいたので、それで零にダメージを与えられるかと思ったがトラップも切られて、凛も切られた。
凛がまた【赤星落とし】をしようとするも、妨害され失敗。ただし不完全な赤星を暴発させて自爆ダメージを食らいながらも零にダメージを与えることに成功。
そんなこんなでようやく2人とも決着が付かないことに気付いて引き分けになった、因みに2人の感想は。
「まあ。凛の機嫌が良くなったし、訓練としても良かったから俺としては満足かな」
「お兄ちゃんに良いのをいっぱい貰えたし満足だよ、コロッケも美味しかったし」
とのことであった。
最後まで読んで頂きありがとうございます。




