日本語は正しく使いましょう
零視点
母さんのゆったりした話し方によるドヤ顔推理は大方正解だったがそこまで分かってるなら本気で急いで欲しかった。
「♬〜♪〜♪〜〜。ねえねえ、これでどうかしら?時間停止の歌術」
「ありがとう、それでこの場を収めるのに協力してくれるんだよな?」
「それはそうなんだけど〜。ねえ、なんかさっきから反応が変じゃないかしら〜」
ここで記憶喪失に着いて語ってる余裕はないよな、
「まあ、色々有ったんだがそれはこの件が解決してからゆっくり話すよ」
「う〜ん、分かったわ、お母さん零くんが悪いことしてないって信じてるからね!」
なんだか勘違いされてる気がするがそこに突っ込んでる時間的余裕はないか?まあ、急ぐに越したことはないだろ。
「それで、具体的にはどうするんだ?」
「そうね〜、私が凛ちゃんを足止めするから、零くんはアヤメちゃんの方をなんとかしてくれる?アヤメちゃんをなんとかしたら零くんはこっちに来て凛ちゃんを宥めて上げて」
えーっと、どうにかなるかな?て言うか凛の母さんでもあるんだから母さんが宥めて欲しい所ではあるが、無理か?なんと言うか凛とは決定的にタイプが合わなそうだもんな。うん、凛を母さんに宥めてもらうのは諦めよう。
「分かった、やって見る」
「頼んだわよ〜、それじゃあ。♬〜〜♪〜♪〜♪〜〜。時間停止解除、凛ちゃんと私を隔離空間へ」
「さてと、2人は行ったか。それじゃあ葉炎、始めようか」
「フン、その怪我で勝てると思ってるなら大間違いじゃぞ」
いやー、勝てる勝てない以前にやるしかないんだよね、困ったことに。さて
《氷花、大丈夫か?相手は実の姉なんだろ、無理なら素手で頑張ってみるぞ》
「ぜ、零君、そんな心配はしないで思いっきり使ってくれて平気ね。そんなことより零君は自分の体を大事にするね」
そうだな……おっと飛び込んできたか、怪我してるしここは無理せず後退して躱して行く、最低限の回避動作で躱したためロングソードによる振り下ろしが鼻先を掠め、地面を砕く。飛んでくる破片がかなり面倒だ。
「いつまで避けられか見ものじゃの」
葉炎はそう言ってロングソードを軸にして回りながら蹴ってくるのをしゃがんで躱しながら、葉炎に揺さぶりをかけて行く。
「そうは言っても時間がたつほど俺の怪我が治っていくんだから、俺は時間を稼がせてもらうぞ。そっちの方こそ左腕は大丈夫か?」
回った勢いを利用して少し距離を取った所に葉炎が着地してから
「お互い、怪我が治る前に怪我が増えないと良いのう」
などと皮肉を言ってくる辺り葉炎にはなにか策があるのだろう。対して俺は不味いな一応回避に専念して時間を稼いで、その間に怪我を治して万全の状態に成るのが俺の考えだが、問題はそっから先がないことだ。いや、これまでの葉炎の動きを鑑みれば今の動きが鈍った状態でも勝ち目は十分にある、問題はメンタル面だな、何せ相手は俺の従姉妹で、氷花の姉だ。やり難いとしか言いようがない。やはり、最善策は葉炎を持ってる左腕を切り飛ばして、後でジャミさんに治療してもらうのが1番か?
葉炎視点
うーむ、不味いのじゃ。最初から正面から戦って勝てる相手とは思ってなかったのじゃ、じゃがここまで零が化け物だとは想定外なのじゃ、さっきから攻撃は全て避けられて居るのじゃ、それに
「戦闘中に考えごととは余裕じゃな」
事実として余裕なんじゃろうな、この感じでは【操炎】も大した効果がなさそうじゃ、じゃがだとすれば余計に気になるのは『零は一体なにを考えて居るのか』じゃ。もしくはそれが分かれば勝機があるかも知れないのじゃ………もしかして、この体の心配か?もしそうだとすればこれで分かるのじゃ。
「こうなれば捨て身じゃ」
おっ、今零の表情がピクッと動いたぞ。ならば文字通り外せば自分の足を切る様な一撃を放つのじゃ。
「あーあ、どうしてこうなるかな」
確定じゃな、零はこの体に傷を付けたくないようじゃ。案の定大振りの攻撃をわざわざ止めよったのじゃ。
「のう、取引をせぬか?」
「恐喝だろ、日本語は正しく使わないと誤解を招くぞ」
「恐喝とは人聞きが悪いのじゃ、正しく誤解じゃな」
まあ、意味的には恐喝が正しいんじゃろうな。
「じゃあそのありがた〜い取引の内容は」
「妾を取るのじゃ、妾は良い体を手に入れる。お主はこの娘を助けられる。どうじゃ、悪くない取引じゃろう」
ああ、今の妹の顔が見れないのが残念で仕方ないのじゃ。
零視点
成る程、詰んだな。この取引に乗れば俺が操られる、仮に取引を蹴ったとしても葉炎はアヤメの体を人質にして来るだろう、それもさっきよりも露骨かつ致命的に利用して来るはずだ。そう言えば『テロリストには多少人質を犠牲にしても屈してはいけない』とか言うのもあったな、人質の有効性を示してはいけないんだっけ、まさか身をもって痛感する羽目になるとはね。
「零君」
《なんだ?》
「私を信じてくれるね」
《当然だろ。自分の剣を信じない剣士なんて居ないだろうよ》
「じゃあ、なにも言わずに取引を受けて欲しいね」
よし、そうと決まれば即実行だな、とは言え策はバレないようにしないとな。
「乗るしかないか、て言うかやっぱり恐喝じゃないか」
そう言って俺は葉炎の方に手を上げて歩いて行く。
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