ママの指輪とウソ探し
「たっくん、ママの指輪見なかった?」
ママは困った顔で、たっくんに聞きました。
「どこにいったのかしら。」
ママは大慌てで部屋中を探しましたが、見つかりませんでした。
「ママちょっとおばあちゃんのおうちにいってくるから、たっくんお留守番しててね。」
そういうと、ママは隣に住むおばあちゃんのおうちに出かけていきました。
たっくんはママがなくしてしまった指輪を探してあげることにしました。
「ママはいつも、大事なものはあのタンスの上に置くんだ。」
たっくんはそばにあった椅子を持ってきて、その上に登りました。
そして、背伸びをしてタンスの上をのぞきこみました。
すると、ママが大事に飾っている大きなお皿の向こうに、キラッと光るものがありました。
たっくんは、いっしょうけんめい手を伸ばしましたが届きませんでした。
「もうちょっとだ」と思った瞬間、「グラグラ」とママの大事な大きなお皿が、タンスの上から落っこちてしまいました。
「パリーン。」
ママの大事にしてる大きなお皿が、畳の上で割れてしまいました。
「あぁ、どうしよう。」
たっくんは、急いで割れたお皿を拾いあげました。
「アイタッ!」
慌てたたっくんは、割れたお皿で人差し指を切ってしまいました。
たっくんは、とっさにそばに置いてあったTシャツで、その指をふきました。
「あぁ、たいへんだぁ。このTシャツはママが大事にしてるTシャツだぁ。」
たっくんは指の痛さも忘れて、急いで台所にかけていきました。
カランを上げると「チクッ」と人差し指が痛みましたが、それどころではありませんでした。
たっくんは、ママの大事なTシャツをゴシゴシと 洗いました。
「チャリーン。」
ママのTシャツの胸ポケットから、百円玉が転がり落ちました。
百円玉はコロコロと転がり、排水溝に落ちていきました。
「あぁ、たいへんだぁ。」
たっくんは急いで排水溝のフタを持ち上げて、中をのぞきこみました。
「よかったぁ。」
百円玉は、奥までは転がり落ちていなかったようです。
たっくんは手を伸ばして百円玉を拾いあげました。
するとびっくり。
それはなんと、ママがなくしたはずの指輪だったのです。
そして、たっくんがタンスの前に戻ったとき、ママが帰ってきました。
たっくんは、割れたお皿をみると「エーンエーン」と泣きだしました。
「あら、どうしたのたっくん?」
「うん、ぼく、タンスの、上で、ママの、指輪を、見つけ、たんだ。」
たっくんは、ママに指輪を見せていいました。
「まぁうれしい、たっくんありがとう。」
ママは、にっこり笑っていいました。
「でもね、指輪を取るときに、タンスの上のこのお皿を落っことしちゃったんだ。」
割れたお皿さらを指差し、たっくんはいいました。
「あらら、大変じゃないの。たっくん、指から血がでてる。」
ママはたっくんの人差し指を見ていいました。
そして、台所に救急箱を取りにいきました。
「あれ、どうしてこんなところに濡れたTシャツがあるの?」
そこには、たっくんが血をふいたママのTシャツが ありました。
「たっくん、このTシャツはどうしたの?」
ママは、たっくんに聞きました。
「うんん、ボク知らないよ。」
ママは、もう一度Tシャツを見ました。
すると、まだ少しTシャツには血の跡が残っていました。
「たっくん怒らないから、本当のこといってごらん。」
「ごめんなさい、本当は、指輪は、タンスの上には なかったの。」
たっくんは、もう一度泣きだしそうになっていいました。
「タンスの上を探していたら、このお皿が落ちちゃって、割れたお皿で指を切っちゃったんだ。」
ママはたっくんの指に、ばんそうこうを貼ってあげました。
「そのTシャツで指をふいちゃったんで、台所で洗ったんだ、ごめんなさい。」
たっくんは、もう一度謝りました。
「そうしたら、排水溝でママの指輪を見つけたんだ。」
いい終えると、たっくんは大きな声で泣きだしました。
「ここにあったのね。」
ママは、排水溝をのぞいていいました。
「あら、こんなところに百円玉。」
そうです、たっくんが落とした百円玉です。
「たっくん、ママの指輪を見つけてくれたごほうびに、この百円玉でチョコレート買ってあげるね。」
ママは、にっこり笑っていいました。
「うんん、ボクいらない。」
たっくんはもう一度大きな声で泣きだしました。