一章 ⑦俺氏勇者にされる(後編㊁)
長い廊下をしばらく進んでいくと
謁見の間のようなところに出た
扉から真ん中の玉座まで赤い絨毯が伸びており、絨毯の側には兵士たちが
ひかえていた
玉座には王様が鎮座しており、重々しい雰囲気を醸し出している
「シノミヤ=ケンイチよ、よく来た」
「いや、『よく来た』じゃねーよ!?
ここにしか来れないようにしたのお前らだろーが!」
「無礼者っ…!国王になんて口を!」
そりゃこんな口もききたくなるだろう
ご丁寧にここにたどり着くまでの全ての扉に、結界らしきものが張られていたのだから
「まぁ、そんなことはどうでもよい」
国王は側にいた兵士をたしなめると再び俺と向かい合った
「シノミヤ=ケンイチよ、其方を、我がラグネシア皇国の初代勇者とする」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
今こいつなんてった!?
勇者!?あの訳も分からず魔王を倒して後はお払い箱の勇者!?
「おい!ちょっと待てや!勇者なんかごめんだぞ!?」
「それではこれから任命の儀を始める」
「話聞けやぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
俺の叫びも虚しく着々と儀式が進んでいった
「それでは勇者ケンイチに『聖剣 エクスカリバー』を授けて儀式を終了する」
ありきたりすぎてパチモンくせぇ……
いや、そんなことを気にしている場合ではない!これを受け取ってしまったら全てが終わる!
早く抜け出さなくては……!
後ろに向かって全力でダッシュしようとすると、突然全身から力が抜けた
(なっ……!またかよ!?)
しかも今度は喋れないオマケ付きだ
その場に倒れてしまいそうになるが
どこからか黒子のような奴らが現れて
強制的に体を動かして、国王から剣を受け取らせた
「これにて任命の儀を終了する」
終わった……何もかも……
「彼から腕輪を取ってあげなさい」
そういうと、先ほどのメイド二人が俺の腕から腕輪を外して奥の方へと下がっていった
「ふっざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
体が動くようになった俺は王様に殴りかかるべく、玉座に向かって突撃し…
「さぁ、皆の者!初代勇者任命のパレードを行おうぞ!」
ドドドドドドドドドッ………!
…ようとして、こんな人数どこにいたのかというほどの民衆に押し流されて
俺の体は王宮から遠ざかっていった
……そして現在に至る
王都初の勇者任命のせいか周りは飲めや歌えの大騒ぎである
逃げようにも人が多すぎて、逃げる途中に誰かに大けがを負わせてしまうだろう
どうにかして逃げられないものだろうか?
ギュルルルルルル……
……今は腹ごしらえをしよう
よく考えたら王都に来てからまだ何も口にしていなかった
俺は直ちにエネルギーを補給すべく
街の中心に置かれている食事に向かって歩き出した